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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第三章『北西空域を制圧せよ』

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空を飛ぶという現実

「司令官!
 大丈夫ですか!?」

「大丈夫ぅ? みたいな?」

 ぴくりとも動けぬ俺に、白梟と姫雨燕が駆け寄ってきた。

 うえぇ~気持ち悪い。

 死ぬほど吐いたぁ~

「もう、だらしがないわねぇ」
といいつつ山雲雀がユニットスーツから俺を出してくれる。

 先ほどのスーツ越しとは違い、実際の体温が感じられる状況で抱きしめられているのだが……。



 エロいことを考えている余裕がない。
 むしろ、揺れると気持ち悪いから触らないで……。



 しかし、付けていた酸素マスク、凄いな。

 嘔吐(おうと)しても大丈夫な設計とは聞いていたけど、あそこまで吐き続けても大丈夫だったとは。

 ……整備する付喪神ちゃんがかわいそうではあるが。

 俺は床に転がされる。

 そのそばにひざを突いた白梟がハンカチで俺の口元を拭いてくれた。

 姫雨燕もその隣で心配そうに見下ろしている。

 山雲雀は――付喪神ちゃんに整備をお願いしている。

 あ、戻ってきた。

「情けないわねぇ、五分も飛んでないわよ?」

「……何の訓練も……してないんだ……しかたが……無いだろう……」

 うげぇ~気持ち悪い。

「……あと……むっちゃ、揺れ……きもい」

 警戒していたGはスーツのお陰か思ったほどではない。

 ただ、翼をはためかす度にガクンガクンと揺れるのだ。

 あれが気持ち悪かった。

「まあ、もう少し上空まで行けばグライダーみたいに飛ぶことも可能だったけど……。
 その前に無理無理、言い始めたんじゃない」

 グライダーのようにかぁ~

 それこそが、普通に思い描く優雅な飛行なんだが、実際はそれが出来るぐらい上空に上がり、風を得ないと駄目なんだよなぁ。

 看護士――っていうより、一昔前の看護婦さんの格好をした付喪神ちゃんが駆け寄ってきて、なにやら栄養ドリンクとかで使いそうなサイズの瓶を差し出してきた。

 飲めと言うのか?

 しかし、飛娘用のじゃないのかな?

 なんて懸念は、瓶の『人間、飛娘兼用』というラベルで払拭された。

 なら大丈夫か?

 キャップを外し、一口飲んでみるとそのまんま栄養ドリンクと同じ、苦みのある味がした。

 飲みやすくはないが、気分の悪さは改善し始めた気がする。

「司令官――」白梟が柔らかく微笑みながら声をかけてきた。
「揺れがお辛いなら、わたしが山雲雀と代わりましょうか?」

「白梟が?」

「司令官は羽ばたく際の揺れで気分を悪くされているのだと思いますが?」

「まあ……そうだ」

 白梟は続ける。

「であれば、小鳥級より羽ばたく回数が少なくても上空まで飛べる中鳥級の方が苦しくなくて済むのでは?」

 確かにその通りだ。

 漫画の金満司令官が山雲雀か、その姉の雲雀にしか運んで貰っていなかったから、何となく小鳥級じゃないと駄目なのかと思っていたが……。

 白梟でも別に良いか。

 まあ、撤退を前提にすればバリバリの主力機艦である白梟に荷物運びなどさせられないけどね。

「……よし!
 一時間ほど休憩したらお願いしてみようかな?」

「はい!」

 白梟は嬉しそうに頷いた。



 ――一時間後――



「司令官!
 司令官!
 申し訳ありませぇぇぇん!」

 ……?

 耳元で女の子(誰か)が泣き叫んでいる。

 ああ……白梟か……。

「……あなた、大丈夫?」

 山雲雀の声も上から聞こえる。

 見慣れてはいないまでも、知ってる天井が目の前に現れた。

 ふむ、どうやら医務室のベッドに寝かされているようだ。

「山雲雀、なあ山雲雀……。
 俺は確かに行ったんだ。
 行ったんだよ……。
 ”スピードの向こう側”って奴に」

「どうせあなたの事だから、漫画のネタか何かなんでしょうが、言ってあげる。
 あなたが行ったのは正確には、”スピードの向こう”とやらではなく、”音速の向こう”よ」

 ド素人がマッハ越えかよ……。

 しかも、カタパルトから離陸して即記憶が途切れているから、超加速だったんだろうな……。

「本当に、本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」

「……まあ、中鳥級は超加速が売りなのよね。
 こうなることを予測できなかった、わたしも悪かったわ」

 頭をペコペコ下げる白梟を横目に山雲雀が頭を掻く。

 いや、山雲雀も悪くないし、まして、白梟も悪くない。

 金満司令官が漫画内で、”一番のお気に入り”である白梟に運んで貰わなかった意味をきちんと考えなかった俺が悪い。

 俺は白梟をなだめ落ち着かせた後、つくづく思った。

「やっぱり、小鳥型が無難、ってことだな」

と呟く俺の眼前に、短髪鉢巻き少女の顔が突然現れた。

「だったら、次は真鴨で試してみる?」

「話、聞いてる!?
 なんで、中鳥級(お前)でオッケーだと思ったの?
 っていうか、白梟でこのざまなのに、お前なんかがやったら、”あの世の向こう側”に行ってしまうわ!」

「え~っ!
 酷いなぁ~」

 中鳥級真鴨型一番機、真鴨……。

 俺がここにくる時点の話だが、白梟とは違い一回しか改造が出来ず”司令官レベルの高い(たっくん)基地”ではあまり出番が無かった飛娘だった。

 とはいえ改造を抜きにすれば、中鳥級内のポテンシャルでは最強クラスにあたる。

 なので、途上中の基地である現在の金満基地では、白梟に次ぐ実力者である。

 そして、金満基地物語(漫画)での彼女はというと、トリッキーな近接攻撃を好む飛娘として紹介されていた。

 主要キャラではないので登場自体は少ないということもある。

 ただ、それにしても彼女が砲撃やらミサイル攻撃やらを行っている描写がいっさい無かったので、特殊な飛娘であるのは間違いない。

 跳び蹴りやら膝蹴り、酷い物になると祟り神にキン肉ドライバーをかますシーンがあったりする。

 金満司令官の『おい真鴨! 弾薬をいっさい消費してないとか、どんな戦い方をしてるんだ!』というのが象徴的シーンである。



 こんな奴に身を任せたら、間違いなく死ぬ。
 仮に死ななくてもお断りだ!



「で?
 二度ほど飛んでみて何か分かった?」

 山雲雀が余り期待してなさそうな感じで訊ねてきたので、俺は予想通りの答えを返した。

「いや、さっぱりだ。
 てか今、俺の頭に浮かぶことといえば、地上にいるだけで幸せ――そんな感想だけだ」

 そんな俺たちのやりとりに、ようやく落ち着いてきた白梟が訊ねてきた。

「司令官は何かを調べるために飛んだのですか?」

「え?
 ああ、言ってなかったっけ?
 飛娘の戦い方について、何かの参考になったらと思ってな」

「そんな……。
 ちゃんとした理由があったのですね……」

「は?
 じゃあ、どんな理由と思っていたんだ?」

「単に女の子との飛行遊泳を楽しみたいのかと」

「白梟の中で、俺ってそんなキャラなの!?」

 ちょっとはあったけどさぁ~
 でも、パワードスーツ(あの格好)で、しかも女の子なんて後ろにいるからろくに見えない状態でそりゃないだろう。

 ……あ、運んでくれる子と別にもう一人飛んで貰えれば出来るか?

「あなた、余計なことを――」

「考えてません!
 っていうか、もう空を飛ぶのはこりごりです!」

 俺が体を起こそうとすると、山雲雀がそれを制し、ベッドの脇にあるボタンを押した。

 介護用のベッドらしく、腰のあたりから上半身を起き上がるようにベッドが持ち上がった。

 あれ?

 声が聞こえないと思ったら、姫雨燕(ヒメアマ)がいないな。

 ……ああ、そういえばこの時間は出撃してるのか。



 山雲雀と白梟がいない出撃も最近は行うようになっていた。



 自立心を持たせるためである。

 もちろん、出撃するのは基地近辺の低レベルな祟り神相手のみだ。

 初戦のような身の丈に合わない敵に遭遇した場合はすぐに退却するようにも言い聞かせてある。

 ……不安だがいつまでも独り立ちが出来ないようでは仕方がない。

 姫雨燕も漫画では時々、真鴨ばりの無茶な戦い方をしていたから心配だが、最悪、旗機艦の雲雀がいることだし、まあ大丈夫かな。



 ……無茶な戦い方、か。



「そういえば真鴨、敵に跳び蹴りするのって相当無茶な攻撃だけど、あれって本当にダメージを与えられてる訳?」

 何気ない問いのつもりだったが、訊かれた真鴨はポカンとした顔になった。

 ん? 変なことを言ったかな?

「……いや、司令官。
 空中戦で跳び蹴りとかあり得ないんだけど……」

「はぁ?
 でも……」

 俺はそこまで言って、口をつぐむ。

 あれ? どういうことだ?
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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