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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第三章『北西空域を制圧せよ』

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飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニットスーツ

「……何?
 これ?」

「……飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニットスーツ」

「……」

「飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニットスーツ」

「……」

「……おい、山雲雀。
 ジト目で語るな。
 せめて言葉にしろ!」

「言葉を失ってるから、目で語ったんじゃない」

「そもそも、俺が作らしたんじゃないから!
 金満司令官(本物)の指示だから!」

 飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニット――なんて言ってはいるが、ようは飛娘に後ろから抱えて飛んで貰うための防護服だ。

 宇宙服ってよりSFとかに出てくるパワードスーツみたいな雰囲気だが、一度試着したので分かるがこれはあくまで防護服――攻撃補助の機能などは無い。

 これを作った業者の人は、上空千メートルから落ちても”多分”死なないとか抜かしてたけど、もちろん試す気は無い。

 ”多分”って何だよ!

「……なあ、山雲雀。
 よく考えたらさぁ、別に俺、飛ぶ必要無くないか?
 飛娘の動きを確認するんであれば……。
 別に一緒に飛ばなくても、カメラとか持って飛んで貰えば良くないか?」

「まあ、その通りだけど……ね」

「あぁ~っ、司令官!
 滑り棒の下で飛娘を待ちかまえる夢を、ついに叶える気になった? みたいな?」

 姫雨燕が手を振りながらこちらに向かって駆けてくる。

 その後ろに白梟が、あきれたように目を細めているのが見えた。

「ば、馬鹿!
 デカい声でそんなことを言うな!
 皆が警戒しだしたら困るだろう!」

「あ~ごめんなさぁ~い、みたいなぁ~」

 山雲雀までジト目で見てくる。

「馬鹿はあなたよ。
 今後、滑り棒の下、半径五十メートル進入禁止ね!」

「ちょ!
 良いじゃないか、どのみちスパッツを履いてるんだし!」

「だったら、覗く必要ないんだし、それなら近寄る必要もないじゃない?」

「それでもほら、色々感じるものが、さぁ~」

「大丈夫よ、山雲雀。
 なんやかんや言っても、司令官にはそんな度胸はありません」

「白梟さん!?」

「ねぇ~ねぇ~それよりこれ何? みたいな?」

 姫雨燕が飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニットスーツに興味を持ち始めたので、説明をしてあげる。

「わざわざ、飛娘が運ばないでも、司令官はヘリとか飛行機で飛んだ方が楽じゃないかなぁ~? みたいな?」

 ごもっともな話だ。

 しかし、白梟は別の用途を上げた。

「でもこれ、司令官の緊急避難には使用できそうですね」

 ああ、それ漫画でも触れていたなぁ。

 空を飛行する祟り神に狙われる事を考えたら、ヘリやら飛行機よりも遙かに小回りが効く飛娘の方が安全だって。

「それもそうね」と山雲雀が納得したように、うんうん頷いた。
「ちょっとあなた、試してみてよ」

「はあ……。
 まあ良いけど、運ぶ役はお前だからな」

「別にわたしじゃなくても良いと思うけど、まあいいわ。
 善は急げよ、ほらほら着て」

「分かった分かった。
 まずはインナーを着てくるから、ちょっと待てて」

 俺はユニットスーツの腕の部分にかけられていたインナーを掴むと、更衣室に向かって歩く――が、山雲雀に腕を掴まれた。

「いちいち更衣室に行く必要なんてないじゃない?
 男用なんて遠いんだから、ここで着替えなさい」

「はぁ?
 馬鹿かお前。
 そんなの……恥ずかしいだろう?」

「……姫雨燕(ヒメアマ)、そいつの服をはぐわよ」

「了解~みたいな?」

「ちょ!
 おいやめろ、おい!」

「うるさいわよ!
 男なんだから、がたがた言わずに脱げ!」

「ぎゃぁぁぁ!
 やめろ!
 変態! 変態! 変態!」

 しかし、腕力に勝る飛娘に敵うわけもなく、あっという間にパンツ一丁にされてしまった……。



「……無いわぁ~
 女子として以前に、人としてないわぁ~」

「人って言うか、飛娘だし」

「だから何!?
 そもそも、飛娘だったら、なお駄目だろう!?」

 俺司令官だぞ!?

 何なんだ!

 しかし、ここまで脱がされたんなら、更衣室に行く意味なんて無い。

 とりあえず、ユニットスーツのインナーを着ることにした。

「司令官の仰る通りです!
 上官の服を()ぐなんて、飛娘としても女の子としても失格です!」

とか”今更”言ってる白梟さん――先ほどは、顔を真っ赤にしながらキャーキャー叫んでるだけで、助ける素振りをいっさい見せなかったよね?

 あなたも同罪ですよ?

 インナーを着終えると、ユニットスーツの中に足を入れた。すると、自動的に装着していく。

「ほぉ~みたいな?」

 その様子を皆が興味深そうに見てくる。まあ、俺も始めての時は感動したものだ。

 なんか、完全装備すると攻殻機動隊のバトーさんとも戦えそうな気がしてくるんだよなぁ、このスーツは。

 それに、攻撃補助が無いとはいえ、防御力増し増しで動きは慣れれば、首が固定される事以外は普段とさほど変わらないぐらいにはなるらしい。

 だから、やろうと思えば実際、戦闘でも使える。

 まあ、飛娘()がいるから、俺が前にでる事なんて必要無いんだけどな。

「こっちの準備はオッケーよ。
 ちゃちゃっと行きましょう」

 振り向くと、山雲雀が機羽を装備して立っていた。

 初めて近くで見るが、半透明の翼は思ったよりも大きい。

 前に出せば、山雲雀の上半身ならすべて隠れるぐらいはあるだろうか、時に軽くはためかせるそれは実際の鳥のものと同じに見えた。

 なんかちょっと、いつもの山雲雀とは違う――クラスの女の子が部活とかで手慣れた感じで道具の手入れをしている姿――そんな別の顔を見てしまったような心地になった。

 いや、そんなことを言ってる場合じゃないか。

 俺は色々説明を受けたが何がどういう原理なのか分からなかった、とにかく口を開かなくても通信でしゃべることが出来る特殊なマウスピースをくわえる。

 そして、背中に倒れていた頭部ユニットを前に起きあがらせる。

 頭を覆うと首も完全に固定された。

 これで頸椎(けいつい)などはしっかりと守られる代わりに、首を上下に動かせなくなる。

 左右にはスムーズとは言い難いながらも動かすことは可能だけどな。

 そこまで装着すると、自動的に口が酸素マスクに覆われる。

 安全のためのものだが、とたんに不安になるのは何故なのだろうか?

 酸素はきちんと出ていることは、右腕につけられたパネルで確認は出来るのだが、それでも何となく苦しい。

 あれだな。

 スキューバーダイビングとかで、ふつうに呼吸をすれば大丈夫のはずが、精神的な圧迫感から息が出来なくなるらしいが、それと一緒だな。

『あ~っ! あ~っ!
 聞こえてる?
 このチャネルで合ってる?』

『聞こえてる!
 っていうか山雲雀、少し呼吸が苦しいから、飛ぶのは慣れてからにしようと思うんだが――』

『そう……。
 じゃあ、行くわよ』

『ちょ!?
 聞いてる!?』

『飛んじゃえば、大丈夫よ』

 ちなみに、現在酸素マスクしている俺は、先ほどのマウスピースで山雲雀と話している。

 だから、通信機を付けていない白梟には俺たちの会話は聞こえていない。

 逆に俺は、外の音を聞きにくいながらも一応聞くことは出来る。

「山雲雀、司令官、なんだか苦しそうじゃない?」

 白梟が心配そうに山雲雀に訊ねる。

 流石、白梟!

 なんやかんや言って、司令官の味方!

「気にしない気にしない!
 今更になって、飛ぶのが怖くなったみたいなの」

『違うって!
 息が苦しいんだって!
 ひょっとしたら、機械の調子が――』

「ああ、そうなの?
 司令官、大丈夫ですよ!
 小鳥型の女の子たちだって飛べるんですから、司令官だって飛べるはずです」

『おい待てや、白梟!
 逆上がりが出来ない弟を勇気づける姉みたいな顔で、むちゃくちゃ言うな!
 元々飛べる飛娘と絶対飛べない人間とは話が違うんだぞ!』

『うるさいわよ!
 白梟には聞こえてないって!』
「じゃあ、ビビりの司令官がうっとうしいから、さっさと行ってくるわ」

『おいぃぃぃ!』

 しかし、山雲雀はユニットスーツごとを軽々と持ち上げ、カタパルトの所まで移動する。

 飛娘に対して、()はなんて無力なんだ。

『山雲雀、マジで苦しいんだって!
 ねえ、ねえ、今日のおやつ、俺の分あげるから言うこと聞いて!』

『子供じゃないんだからおやつでは釣られないわよ。
 せめて、ヴィ○ンのバッグぐらいじゃないと』

『ギャルなJKかよ!?
 しかも、ヴィ○ンってこの世界にもあるのか!?』

 あっちでもこっちでも縁のなさそうなブランドのくせに!

『それだけ喋られれば平気よ!
 最悪、失神しても逆に呼吸は正常に戻るし』

『本当かよ!?』

『多分』

『だから、命に関わることを”多分”で済ますのやめろや!』

『いいから!
 出発時が一番衝撃が強いだろうから気をつけて!』

『うぉい!』

 そんなことを言い合っているうちに、だんだん苦しいのが収まってきた。

 まあ、やっぱり精神的なものだったからだろう。

 本当はもうちょっと時間が欲しかったが、覚悟を決めた。

 俺はカタパルトの上に足を乗せる。

 普段飛娘が使っているそれに、機械越しながら自分の足を乗せる日が来るとは夢にも思わなかった。

 前方は確か300メートルほど距離があり、加速しながらジャンプして、そこからは機羽で高度を上げていく――ていう流れとのことだ。

『合図するからジャンプして。
 別に高く飛ぶ必要はないから。
 数センチ浮くだけでカタパルトの固定がはずれるから、そこからはわたしが持ち上げていくから安心して』

 そんな指示をしつつ、山雲雀は俺の背中に自分の体を押しつける。

 もちろん、ユニットスーツがあるので、彼女の体温は感じられないけど、それでも後ろから抱きしめられている様でドキドキする。

 器具が固定される音が聞こえる。

 飛んでいる時は山雲雀と俺は完全にドッキングされる。

 そうか。

 これじゃあ、落ちる時は二人同時って事になるな。

 なんかあった時は俺を切り離す機能とか無いのかな?

 あっても、山雲雀なら使いそうにないが。

『飛んでいる時はバランスを崩すと立て直すのが大変だから、両手足は極力閉じていて。
 あと、指示は必ず聞くこと』

『分かった』

「よし、行くわよ。
 山雲雀、発進する!」

 山雲雀がいつものように声を上げると、とたん、景色が凄い勢いで後ろに流れ始めた!



 はははは早えぇぇぇ!



 スーツのお陰でバランスは崩さないが、リアルにちびりそうなんですがぁぁぁ!

『今よ!』

 ジャンプ――というより、足を体に引っ込めたって感じではあったが、体は急激に持ち上がる。



 そして、目の前に現れたのは、真っ青な空だ。



 嫁機艦との空中遊泳――多くの司令官が夢想して、実現の希望”すら”も抱かなかった事だ。

 まさかそれを体験出来るとは、この世界に来るまで想像すら出来なかった。

 ……だが、夢の中では何度か並んで空を飛んだことはある。

 ”たっくん”基地の山雲雀とだ。

 俺が嬉しそうに笑うと、”たっくん”基地の山雲雀も少し困ったように笑ってくれた。

 あの時は本当に楽しかっ――おうぇぇぇぇぇぇ!
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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