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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第二章『基地近辺空域攻略作戦での苦境』

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とある飛娘の独白

「……勝つ時はあっさり勝つものね」

「そんなものよ、山雲雀」

 秘書娘の席に座った後、なんとなく漏れた呟きを、白梟がやや苦笑しつつ拾った。

 あれだけ苦戦した大鳥級の祟り神を撃破したのはつい先ほど――あの会議から一日も立っていない、本日一回目の挑戦で、である。

 まあ、ボス(大鳥級)への挑戦は一回目だったけど、出撃自体は本日二十一回目だ。

 昨日、危うく一日五十回とかいう訳の分からない目標が立つところだったが、何とか、当面は二十五回にまでとする事になった。

 白梟は少し考えるそぶりを見せながら、訊ねて来る。

「五回は挑戦するつもりだったから、今日の訓練はどうしようかしら?
 どれぐらいなら、その分を上乗せしたことになるかしら?」

「……初日だから程々に頼むわ」

「ええ、そうね……」

 白梟は生返事をしつつ、司令室から出て行く。

 あ~あ、悲鳴を上げる琉球燕の絵が浮かんでくるわ。



 いつもの癖で、自然と司令官の机に視線が向く。

 今は……いない。

 どこぞやのメーカーが訊ねて来て、話を聞きに入っている。

 聞いたことのない会社だったから、いったい何を購入したのやら、少し不安だ。

 後で、問いつめなくては。



 ……。



 琉球燕ほどではないが、わたしも初めは司令官と二人きりになった時は不安だった。

 それは、言葉にこそしないが、多かれ少なかれ、飛娘なら誰もが一度は抱える感情だろう。

 特に初期機艦は本当に二人っきりで、相手がどんな人物なのかさっぱり分からないのだ。

 だから、今の司令官がどんな人なのか分かり始めて、心底ホッとした。

 ああ、この人なら、少なくとも無意味にわたし達を傷つけるようなことはしない、そう思った。

 もちろん、その事は司令官(あいつ)には内緒だ。

 とっくに終わった話でも、きっと変に気を使い始める。あいつはそういう人間だ。



 ……。



 司令官(あいつ)は、身体能力を理由に人は飛娘を犯せないと言った。

 多分、あの場所にいた多くの飛娘がその説明に納得しただろう。

 あれだけの力の差があれば、自分がその立場になっても抜け出せる――そう、確信したと思う。



 だけど、わたしはそうは思わない。



 その気になれば、人間は飛娘(わたし達)など容易く組み伏せてしまえるだろう。

 ありとあらゆる鎖で飛娘(わたし達)を縛り、陵辱し尽くす事だろう。

 今この瞬間も、きっとどこかの基地で行われている。

 けして低くない確率で……。

 司令官(あいつ)が想像すらつかない方法で、だ。

 この事も司令官(あいつ)には内緒だ。

 きっとあいつは、名も知らぬ飛娘(女の子)の為に苦しみ、なにもしてやれない自分を責めるだろう。

 司令官(あいつ)はそういう奴だ。

 そして、そんな司令官(あいつ)だから知られたくない。

 わたしが”そんな可能性”に簡単に思い至ってしまうことを。

 そんな事に気付いてしまう女の子だって事を。

 だから、わたしは自らの口を塞ぐ。

 司令官(あいつ)への裏切りだと知りつつも。

 ひょっとしたら、助けられるかもしれない女の子を見捨てることになっても。



 わたしは……最低だ。



 机の引き出しの中には、司令官(あいつ)ではなく”本物の”金満司令官が書いたという資料が入っている。

 司令官(あいつ)から、目を通しておくように言われ、渡されたものだ。

 一読するだけで、司令官(あいつ)が初め、あれだけ謝っていた理由が分かる。

 すべてが論理立っている。

 そして何より、頭から終わりまでに流れがあり、仮にそれに気づかなくても自然と”必要”なものが身につくように書かれている。

 今日、一回目でボス(大鳥級)を倒せたのは、けして偶然ではない。

 わたしと司令官(あいつ)がこれを読んだから、と言ってもけして言い過ぎではないだろう。



 ……。



 わたしは”本物の”金満司令官の初期機艦ではない。

 司令官(あいつ)の初期機艦だ。

 今更、本物(別人)の飛娘になるつもりはない。

 司令官(あいつ)が司令官を辞める時、わたしも飛娘を辞める。

 司令官(あいつ)が死んだら、わたしも死ぬ。

 それだけの覚悟は持っている。

 ただ、ふと思うことがある。

 最低な(こんな)わたしを妻にしたという、本物の金満司令官はわたしにどんな答えをくれたのだろうか? と。

 どんな言葉をわたしにかけてくれたのだろうか? と。

 ふと、聞いてみたくはある。
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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