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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第二章『基地近辺空域攻略作戦での苦境』

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再始動の決意

 山雲雀の冷めた声が聞こえてくる。

「……で、いつまで続くの?
 この茶番?」

「あ、はい。
 ごめんなさい」

 俺は改めて皆を見渡した。

 川蝉は山雲雀が捕まえておいてくれたので側にいる。

 ニコニコ顔ながら、なにやら不満なのか、山雲雀をチラチラと見ているが、とりあえず今はいいだろう。

「最後にもう一つ謝らなくてはならないことがある。
 今思うと、ここでの指揮には”らしさ”が無かった気がする。
 らしさが無い――というか、よそよそしさがあった気がする」

 皆が不思議そうにこちらを見てくる。

 皆――金満基地の皆だ。

 ”たっくん”基地のではない。

「何というか、心の底で遠慮してしまっていたというか、(らく)してもらおうとしたのが(あだ)になった――というか……」

「え、楽?」西岩燕が困惑しながら訊ねてくる。

 それに俺は大きく頷いた。

「大体、敵の拠点を予測できるからと言って、最短距離へのルートを知っているからと言って、その通りに出撃する”必要”なんて無かったんだよなぁ」

 ”たっくん”基地はすべての空域の、すべてのマスを一度は通っている。

 様々なパターンを試行錯誤しつつ、空域のすべてを把握する。

 それが、たっくん司令官であり、それを実行するのがたっくんの機艦隊だ。

 それがなんだ、今の金満基地は……。

 まとめサイトに頼り切り、どの空域も最短ルートしか踏まれていない――後続低ランカーのごときではないか。

 俺が司令官でこの有様じゃ、先行高ランカー(たっくん)基地の皆に顔向け出来ない。

 それこそ、石を投げられる所行(しょぎょう)だ。

「山雲雀、うちの基地全体で、最近一日の出撃回数は何回ぐらいだ?」

「七回前後よ」

 現在、一空域四面のボス攻略で一回の出撃に三十分~一時間かかっている。

 なら、大体こんなもんか。

「基地近辺への出撃だ。
 明日から二十五回をノルマとする」

「「「二十五回!?」」」

 雲雀と琉球燕と西岩燕が叫んだ。

 真鴨はケラケラ面白そうに笑っている。

 姫雨燕は口をOの形にしたまま、目を丸くしている。

 ヨーロッパヒンズイは冷めた目のまま、こちらを見ている。

 山雲雀は、ポットに向かおうとする川蝉を後ろからぎゅっと抱きしめ捕らえつつ、苦笑いをしている。

 白梟は我が意を得たと言わんばかりに、目をギラギラさせている。

「空域内すべてに出撃し、敵が出たら徹底して潰す。
 基本、空域にいる敵はボスの随伴と同じ種類だ。つまり、ボス戦前の練習にもなる。
 緊急救護カプセルの使用の許可もするので、明日からガンガン行くぞ!」

 そして、俺は琉球燕に親指を立てた。

「琉球燕、損傷率なんて気にするな。
 そんなもの、百回、二百回、千回、万回、出撃すれば勝手に下がっていく。
 っていうか、仮に率が変わらなくても、どうでも良くなる!」

「意味分からない!」

「俺のたっくん基地(知ってる基地)では一日五十回なんてザラだぜ?」

「どんだけ、ブラックよ!」

 まあ、ゲームでの話だが。

「うちの基地でも五十回を目指しましょう!」

「誰か、白梟さんを止めてぇぇぇ!」

「いいねぇ~楽しそう!」

「真鴨さんが賛同した!?」

 ああ、真鴨も超体育会系だったな。

 金満基地物語でも、白梟と仲が良いって設定だったはず。

 まあ、それはともかく……。

「良いか皆、極論を言えば、負け数なんてどうでもいいんだ。
 皆がちゃんと戻ってこれさえすれば、何百回撤退しても俺は一切文句を言わない」

 そうだ、どれだけ燃料を消費しても問題ない。

 ここは金満基地なのだから。

「それについて馬鹿にする奴も出てくるかも知れないが、局部にこだわり大局を知らぬ、と鼻で笑ってやれ」

 俺は息を吸い、声質を強めて続ける。

「我らはたった一つの勝利のために、千の撤退、万の撤退をする非効率基地だ!
 端から見たら、意味のない出撃を繰り返すただの馬鹿に見えるかも知れない。
 だがなあ、我らが勝利と目すのはただの一勝にあらず!
 この祟り神との戦いを終わらせるための確かな一歩――それこそが、我らの一勝だ!」

 俺は”たっくん司令官”だが、ここは”たっくん基地”ではない。

 俺は”金満司令官”ではないが、ここは金満基地だ。

 つまり、”たっくん司令官”が指揮する、金満基地なのだ。

 そんな当たり前のことを、俺はきちんと自覚していなかった。

 昔の軍師が言う”己を知る”ことが出来ていなかったのだ。

 だから、まずはその組み合わせについて正しく把握しようと思っている。

 本物の金満司令官がなんて言うかは分からないが、たっくん司令官と金満基地は相性が良いと思う。

 空域の把握には燃料が必要で、ここは、それを気にする必要のない基地だからだ。

 改めて皆を見渡す。

 さすがの川蝉もこちらをじっと見ている。

 何を考えているかは、正直読めないが……。

 中鳥級の二人は体育会系だからやる気満々、ただ、小鳥級はどうだろうか?

 仮に付いていけないとか嫌になったとか、そういう子がいても、俺は良いと思っている。

 前に出るだけが戦いではない。

 後方支援やうちにはあまり必要ないが輸送任務など、やることは色々ある。

 もし、飛娘が嫌になったのなら、機羽解体でも良い。

 もちろん、その後のケアーは全力でさせてもらう。

 戦うために生まれ”させられた”彼女たちにだって、それぐらい選ぶ自由があっても良いと、俺は思う。

 たっくん基地の子達が聞いたら、『わたし達にはそんなもの無かった!』って怒り出すかも知れないが……。

「よって、明日からガンガン出撃する!
 以上、解散!」

 全員が起立をして敬礼する。

 とりあえずは、やる前から脱落している者はいない。やけっぱちな子はいるけれど。



 ……まあ、なんやかんやと脅しはしたが、そこまで酷使するつもりはない。



 五十回はともかく、二十五回ならメンタル回復を駆使すればそこまで疲労は溜まらないだろう。

 それに、ボスマスへの出撃マラソンではないので、場所によっては十分ほどで着くし、敵も毎度強いわけではない。

 何だったら機羽を三つほど作り、第一第二機艦隊と交互に出撃するって方法もある。

 機羽のドロップもあるだろうし、飛娘が増えればそこまでブラックって事もないだろう。

「ねえ白梟、五十回だとボスに出撃する回数は余り取れないんじゃない?
 ボス十、通常四十、ぐらいかな?」

 ……あれ?

 真鴨さん、いつのまに五十回で決定したのかな?

 あ、あのね?

 五十回と言っても、少なくとも第四機艦隊ぐらいはいた頃からの話だからね。

「う~ん、せめてボス十五はやっておきたいんだけど……。
 あ、司令官、ご安心ください。
 訓練は”通常通り”行いますので」

 え? 白梟さん?

 通常通り?

 出撃分、減らすイメージだったんだけど?

 あれれぇ~っ

 小鳥級の何人かから、『おい、これどうすんの?』っていう視線が届く。

 いや、その……。

「あ~白梟さん、あのね――」

「はい、何でしょうか司令官……」

「!?
 あ、いえ、すいません……。
 万事、お任せします!
 では、わたくしはこれで!」

 俺は逃げた。

 恥も外聞もなく、逃げた。

 だって、怖いんだもの!

 笑顔なのに目が……目が完全にイッてるんだもん!

 完全に”鬼が裸足で逃げ出す”の白梟さんだもん!

「「「おい待てコラ!」」」

 そんな俺を小鳥級の女の子が、見事に捕獲し――押しつぶした。

 一瞬、息が詰まって死ぬかと思ったが――女の子達の柔らかい体を全身で受けて、ちょっと嬉しかった。
中鳥級真鴨型一番機艦、真鴨……。
司令官『トリッキーな動きを好む体育会系飛娘』
真鴨『ハハハッ! まあ、そんなとこだよね!』
司令官『前へ前へ出るタイプ。司令官としてはやや心配だ』
真鴨『旗機艦になったら、ちゃんと周りの事も考えるって!』
司令官『服装は普通にジャージ――露出が少ないことから、恋愛には奥手とか噂になったり……』
真鴨『……いや、そもそもスカートで飛び回る方がおかしくない?』
司令官『まあ……それをいっちゃ~……な』
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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