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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第二章『基地近辺空域攻略作戦での苦境』

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責任の所在

「じゃあ、本題に行くぞ!」

 俺はよっこらせと立ち上がり、飛娘の皆を見渡した。

 俺の雰囲気を察してか、少し緊張している様にも見える。

 ……変わらん子もいるけど。

 これ川蝉さん、紅茶のお代わりが必要な子を探してないで、人の話を聞きなさい。

「早朝の出撃からここまで、この基地に置いて三つの問題が発生した。
 ……川蝉、いいからポットを置いて、話を聞いて!
 うん、後で頂くから!
 え~この集まりは、その三つについて話していく」

 代表するように、山雲雀が相づちを打つ。

「その三つとは?」

「一つ、戦いの敗北。
 一つ、姫雨燕の琉球燕に対する糾弾。
 一つ、琉球燕の立てこもり」

 何人かが何か言おうとするが、それを制す。

「一つずつ進める。
 そうしないと、責任の所在が曖昧になるからだ」

 雲雀が少し目を見開いて呟く。

「責任……?」

「そう、責任だ。
 ここは軍だ!
 何かをした時には責任がついて回る。
 それは何故か分かるか?
 うかつな行動が基地を潰す。
 仲間を――殺すんだ!」

 俺の強い言葉に、何人かの飛娘が息を飲む。

「じゃ、じゃあ」琉球燕が怒ってるような、怯えるような、強ばった顔で訊ねる。

「朝の敗因の責任は誰になるわけ?」

「もちろん……」俺は姿勢を正し頭を下げる。

「司令官である、俺にある!」

「司令官!?
 ちょ!」

 白梟が慌てたように声を上げる。

 だが、俺は頭を下げたまま続ける。

「お前たちのメンバーを決め、出撃するタイミング、場所、進路を決めたのは俺だ!
 だから、朝の――いや、これまでのも含めて、俺の責任だ!
 すまなかった!」

 皆がざわつくのが聞こえる。

 その中で、琉球燕が叫んだ。

「ふ、ふざけないでよ!
 そりゃ、あんたはちょっと頭を下げれば、白梟さんとかに庇ってもらえるけど!
 でも、わたしなんて――」



「いい加減にしなさぁぁぁい!」



 部屋が揺れたかと思うほどの怒声が、あたりに響いた。

 俺なんて頭を下げてたこともあり、危うくバランスを崩して倒れる所だった。

 恐る恐る頭を上げると、白梟さんが怒りのためガクガク震え、琉球燕が恐怖のためガクガク震えていた。

 うわぁ~

「あなたって子はぁ……。
 だったら聞きますが、司令官の指示にいったいどんな問題があったのか、言ってみなさい!」

「え、あ、だって……」

「司令官の指示通り進み、わたし達は空域を支配している祟り神の居場所まで進むことが出来た!
 違いますか!?」

「で、でもそれは大本営の指示書通りで、あいつ――じゃなく、司令官はただ、それをわたし達に伝えただけで……それを指示というのは、なんていうか……」

 山雲雀がため息を付きながら、その中に割り込む。

「この際だから、その大本営の指示ってやつを見せて上げる」

「お、おい!
 それ旗機艦以外に見せちゃいけない――」

「何度言ったって信じないんだもの、仕方がないでしょう?」

 制す俺を山雲雀が突っぱねる。

「ほら」と渡された琉球燕の元に、山雲雀、白梟以外の飛娘が覗きに来る。

 ……。

「……これ川蝉、折角だし見ときなさい!」

 ポットの方をチラチラ見ている川蝉も俺は招き寄せた。

 この子、どんだけ紅茶を入れたいんだ。

 その間、雲雀が代表して読み上げる。

「え~っと。
 金満基地は通常機艦隊編成で基地周辺空域を制圧せよ?
 え?
 これだけ?」

「そうよ」山雲雀が素っ気なく答えた。

「祟り神の機艦級も最初だけしか調べてくれないし、そもそも、それすら正確じゃなかったって、しっかり堪能したでしょう?」

 小鳥級数隻のはずが、母鳥小型級が出てきたもんな。

 姫雨燕が不思議そうに訊ねてくる。

「なら司令官はどうして敵の位置が分かったの? みたいな?」

 山雲雀が代わりに答える。

「司令官は着任する前から祟り神の研究をしてて、多くの傾向から居場所を割り出していたのよ」

 うんまあ……微妙な言い回しだが間違ってはないな。

「仮に大本営からの指示であっても――」
 白梟が琉球燕に強い口調で訊ねた。

「万全の状態で万全の装備で万全のタイミングで、わたし達は祟り神と交戦しました。
 すべて、整えてくれたのは司令官です。
 それだけしていただいて、それでもあなたは司令官に責任を押しつけるのですか!?」

「え、あ」

「にもかかわらず、司令官はご自分の責任だとおっしゃっている。
 事実、琉球燕、あなたは司令官に敗北について一度でもお叱りを受けましたか?
 負けてばかりの我々は、司令官に断罪されましたか?
 ……この基地には資材が豊富に有り、飛娘も次から次へと作り出すことも可能です。
 だから、金満司令官は勝てないわたし達に見切りをつけることも出来るのですよ?
 でも、司令官はそのようなことおくびにも出さず、どうすれば勝てるかを夜遅くまで考えていらっしゃいます。
 琉球燕、あなたは戦いに勝つために、自ら努力をしていますか?」

「……い、いえ」

「そんな子に、司令官を非難する資格があるとおもってるのですか!?
 恥を知りなさい!」

「ご、ごめんなさい……」

 琉球燕はポロポロと涙をこぼし始めた。

 うむ。

「白梟、ありがとう。
 でもやはり、敗北の責任は俺にあると思うよ」

「司令官……」

「なぜなら、俺は司令官だからだ」

 俺は全体を見渡し、ポットに吸い寄せられていく川蝉の首根っこを掴み、話し始める。

「例えばだ。
 この世界が漫画や小説とかの物語であったなら、読者はひょっとすると俺に対してこのように思うかも知れない。
『なんだあの男は?
 女の子たちに守られてばかりなのに、何であんなに偉そうなんだ?』ってな。
 そう言われると、言い返す言葉はない。
 何故なら、仰る通りだからだ。
 俺は、お前達の様に飛ぶことが出来ない。
 さっき示したように、力だって弱い。
 山雲雀ほど、頭が冴える訳でもない。
 ただお金を持っているだけの、ありふれた人間なんだ。
 だったら、身の程をわきまえて(つつ)ましくなるか? といわれたら、俺はきっぱり否定するね」

「なんでよ」と山雲雀が面白そうに突っ込んだ。

「なんでか?
 それは俺が司令官だからだ。
 司令官は司令官なんだから、偉そうにする権利があるからだ。
 まして、部下は可愛い女の子、そりゃ偉そうにするだろう?」

「最低ぃ~みたいな?」

「最低ぃ~で結構、みたいな。
 だって権利なんだ。
 堂々と享受すればいいさ。
 でも……。
 権利にはだいたい義務も発生する」

「その義務とは?」と白梟が訊ねる。

「それはお前たちを勝たせることだ。
 そして多くのことからお前たちを守ることだ。
 ただし、先ほど言った通り、俺は世にいう『俺つえぇぇぇ!』的な特殊能力も、人間の限界を超えた肉体も、この世界にとって未知なる異世界技術も持ち合わせていない。
 凡庸なる男だ。
 お前たちを襲う敵を殴り倒す力も、お前たちを襲う攻撃から身を挺して防ぐ体も、お前たちを襲う罠を事前に察知する頭もない。
 やれることと言ったら、お前たちの為に――この戦いの主人公たちの為に――様々な物を準備してやること。
 お前たちが極力傷つかないように、頭を悩ませることぐらいだ。
 だから、白梟は庇ってくれたが、敗戦の責任はやはり俺にあるんだ。
 全員、すまなかった!」

 俺はもう一度、頭を下げる。もう、誰も何も言わない。

 俺は頭を上げると、話を続ける。

「次に進もう。
 姫雨燕、琉球燕を糾弾したことについて、これはお前が悪い」

「で、でもぉ~」

 不満そうにする姫雨燕に俺は言い聞かせる。

「隊というものは一人では成り立たない。
 今朝であれば六名で一つだ。
 その責任も、六名それぞれではない、その隊で一つだ。
 だから、怠慢とか自分勝手とかそう言う理由の場合はともかく、特定の一人が負傷したからと言って、その子に責任を押しつけるのは良くない。
 隊全員で考えなくてはならない問題だ。
 だから姫雨燕、琉球燕に謝りなさい」

「……でも、琉球燕がぁ~」

「姫雨燕」

 俺が圧力をかけるように名を呼ぶと、不満そうながらも琉球燕の方を向き、頭を下げた。

「……ごめんなさい」

「よし!
 じゃあ、最後に琉球燕だ。
 琉球燕、どんな理由があるにしても部屋に立てこもったことは許されない、下手をすると反逆行為と言われても仕方がない事、それぐらいは分かっているな?」

「……」

 琉球燕は何も言わず俯いている。

「ただ、一番目の敗戦や二番目の姫雨燕の糾弾がなければ、きっとこのようなことはやらかさなかった――そうだろう?」

「……はい」

「だから、お前に処罰を与えないことにする」

「え?」

 信じられないと言った顔で俺を見上げる琉球燕に、俺は優しく微笑む。

「それに、お前の勘違いだったとはいえ、無理矢理酷い目に遭わされるんじゃないかとか不安な思いをさせてしまったしな……。
 今、お前に必要なのは罰ではない――安心できる場所と、確かな教育だ」

「え……?
 あの、司令官……わたし……」

 涙ぐむ琉球燕に、俺は頷いて見せた。

「だからこれから一ヶ月、白梟と一緒の部屋で暮らすように」

「……はぁ?」

「白梟の側なら、どこよりも安心だ。
 それこそ何者からでも守ってくれる」

「え、それは、そうだけど……え?」

「それに、飛娘として生きる為に必要なことを、彼女なら”優しく”教えてくれるだろう」

「いや、え?
 で、でも、白梟さんからのプレッシャーで死にそうに――」

「白梟……。
 なあ、白梟……。
 君は甘いというかも知れないが……。
 どうだろうか?
 お願いできないだろうか?」

「え!? うそ!? これ、本当に?」

 俺の言葉に白梟は、困ったように眉を寄せながら微笑んだ。

「司令官、仰る通り司令官は甘いと思います……」

「え? これで甘いの!?
 死んじゃうよ、わたし!」

「でも……。
 でもです、司令官……。
 未熟なわたしは、そんな甘さも嫌いじゃない――そう、思ってしまうのです……」

「白梟……」

 俺と白梟は近くで誰かが、
「ちょ、地ご、地獄なんですけどぉ~」
とか言っているのもお構いなしに、微笑みあった。

 白梟、可愛い。

 最恐には違いないけど。
小鳥級燕型四番機艦、西岩燕……。
司令官『眼鏡で真面目(?)な女子』
西岩燕『西岩燕の調べでは、男子の四十パーセントは眼鏡女子好きと出ています』
司令官『……なんか、微妙にありそうな数値を出してきやがった』
西岩燕『そして、六十パーセントは隠れ眼鏡女子好きと出ています』
司令官『一気に胡散臭くなりやがった』
西岩燕『……因みに、西岩燕の調べでは司令官は黒のタイツ女子が好きと出てます』
司令官『はぁ!? え、はぁ!?』
司令官『おい、西岩燕! どこで調べたぁ!?』
司令官『おい、どこで調べやがった!? 逃げるな、答えろぉぉぉ!』
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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