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「――よく来たな勇者たちよ」

「では続いて戦闘前の口上について」


そして再び幹部たちから手が挙がる。


「デーモンよ。発言を許す」

「まずはここまで来たことを褒め称えるのはいかがでしょう?」

「なるほど。敵とは言え激戦を潜り抜けて余の元へとたどり着いたその力は称賛されるべきだな」

「敵に対しても褒める所は褒める。魔王様の格も上がりますな」

「ふむ。ならば褒美も必要か」

「形として残すことは重要ですな」

「となれば、生半可な物では魔王様の器が問われます。大魔導師殿」

「接収した伝説の武具でも下賜するべきですかな」

「しかしそれを受け取ってそのまま戦闘では勇者たちの手が塞がるのでは?」

「手が塞がっていれば戦闘どころではありませぬな」


魔王が口を開く。


「なら玉座の間の前に宝箱でも置いて荷物を整理する時間を作ってやればいい」

「おお、さすが魔王様」


幹部たちから拍手が起こる。


「その後、魔王様が『よく来たな勇者たちよ。褒めてやろう』と言えば完璧かと」

「うむ。労いと褒美をどちらも与える素晴らしい案だ。デーモンよ。褒めてやる」

「ありがたき幸せ」

「恐れながら」


手が挙がる。


「リビングデッドよ。発言を許す」

「労いの言葉をかけるだけでよろしいのでしょうか」

「どういうことだ?」

「奴らはここに至るまでの戦いで疲弊しております。不利な状況で勇者たちを打ち倒す事は魔王様のイメージに繋がるかと……」

「むむ……勇者打倒後の魔王様の治世に影響が出るのはよろしくありませんな」

「ならば労いの言葉以外に料理でも振る舞うか」

「おお、それは素晴らしい。万全の状態で勇者を倒してこそ、魔王様の世に異を唱える者は居なくなるでしょう」

「では、料理の手配を」

「うむ」

「恐れながら……」


手が挙がる。


「何だピクシー」

「玉座の間をライトアップして、楽団と歌。料理を振る舞うのですよね……?」


ピクシーの言葉にしばし皆はその状況をイメージする。


「む……?」

「これは……」

「晩餐会だな」

「晩餐会ですな」

「……料理は却下だ。ライトアップも止めて明かりを落としてスモークにしろ」

「承知しました」


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