表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/76

序章

 

 その村は昔、突如現れた一匹の鬼によって壊滅的な打撃を受けた。

 夜毎に現れるその鬼は、村人を喰い殺し、女を攫っていく。

 やがて鬼は一人の退魔師によって封じられるが、鬼を封じたとされる祠と鬼の伝説は、今なお、村人の間で恐れられていた。


         ◆◇◆◇◆


 ある時、その村で一人の女が子を産んだ。その子供は産まれてからただの一度も声を上げなかった。

 その子供を見た女は、震える声音で呟く。


「……なんてこと……」


 女は、子供が声を上げなかった事よりも、その子供の髪と眼の色を見て顔を両手で覆った。

 その子供の髪の色は白。

 そして眼は、まるで血のような紅い色をしていた。


「……まさか……あの鬼の子が産まれるなんて……」


 女は絶望していた。

 自分には鬼の血が流れていたのだ。かつて、この村を恐怖と絶望の淵に突き落とした――あの鬼の血が。

 女は、この時まで自分の体に鬼の血が流れている事を知らなかった。

 鬼の血を引く者は、産まれた子供が女児であった場合、見た目は普通の人間と何ら変わりは無いが、男児の場合、必ず鬼の証である白い髪と紅い眼を持って産まれたという。

 そして、鬼の血を引く者は母も子も処刑される。


 女は夜中、子供を布でくるんで抱き上げると、一人で山へ向かった。

 身も凍る様な寒い冬の夜。

 しんしんと雪が降る中、女はその子供を山へ捨てた。


 子を捨て、村へ戻った女を待っていたのは、武器を構えた村人だった。

 鬼の血を引く者だと知られた女は村人に殺された。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ