2* 言葉の意味
色々考えすぎてよくわからなくなりました。
「ここ意味わかんない」というような所がありましたら、ご指摘くださいませ。
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今までの少年の『星降る夜』の過ごし方は、近所のお婆さんと一緒に、家の窓から輝く夜空を見上げるだけだった。
夜空いっぱいの流星は格別に綺麗であったが、それでも密かに祭りに憧れていた。
我侭を言わない代わりに日常の会話に友人からきいた話を混ぜていたためだろうか――もうお金を持たせても問題無い年ということもあり、今年は念願が叶い、少年はお祭りに行く許可を得た。
許可を得てから、遠足の前日であるかのように、寝不足の日が続いた。
だが遂に、待ちに待った『星降る夜』であり、少年の憧れのお祭りのある夜が来た。
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日中は窓の外を気にしながらもお婆さんのお手伝いをし、夕方にはお手伝いのお礼としてお小遣いを貰った。今は祭りの開催式が行われる予定の町の中心にある広場に向かって歩いている。
逸る心のまま走って行けたら良いのだが、広場に近付くほどひとが増えてるため、実際に走ったらぶつかる等してひとに迷惑をかけてしまいそうだ。
『走って早く着いたとしても、祭りの開催が早まるわけではない』と自分に言い聞かせるが、それでも焦れる自分を落ち着かせるために空を仰いだ。
太陽は随分と前に沈み始め、今ではもはや夕暮れというよりも夜といったほうがしっくりくる空模様だ。
薄暗い空に既にいくつもの動かない星がひっそりと輝いているのを見て、少年はぼんやりと、今年も綺麗な流れ星なんだろうなと考えた。
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今までの星降る夜に窓から見上げた夜空を思い返したり、貰ったお小遣いの使い道を考えたりしながら、広場への道を黙々と歩いた。
少年が広場に着いた時には、既に広場の中央が見えないほどのひとが集まっていた。
少年は、初参加なのだからどうせなら挨拶も見たいと思って、中央が見える場所を探して広場を彷徨い始めた。
お祭りについて今まで聞いたことから想像した通りに、ほとんどのひとが家族連れだった。
だから、父親らしき人が三~五人の中に一人はいて、そのひとたちのほとんどは子供に肩車をしている。
結局、広場の中央がよく見える場所は見つからなかった。
ひとがいる分音が吸収されてしまうのか、挨拶の大部分はよくきこえなかったが、冗談めかした一番最後の一言だけは、はっきりと耳に届いた。
「天気に恵まれ、雲一つない晴れ模様ですが――星の豪雨をお楽しみくださいませ!」
その言葉をきいて、少年の心は高揚した。
開会式が終了し、子供に急かされながら広場から移動する家族が多い中、少年は広場の端で立ち止まった。視界の端で友人の姿をちらりと見かけた気がしたためである。
混雑している中、見つかるとは思っていないが、一度辺りをぐるっと見回した。もしも見つかったら、一言交わそうかと思ったのだ。
友人の姿はもう見えなくなっていたが、代わりに、周りにいるひと全員が笑顔でいるのが分かった。
しあわせは、今自分の視界にいる全員がもっているもの。視界に入れない自分はもっていないもの。
――では、自分は何をもっている?
この時、気づいてしまった。
――ふしあわせを、もっている。
心に冷たいしずくが落ちてきたような気がした。浮き足立っていた気分が冷えていくのが分かった。
少年は、言われ続けてきた言葉の意味を理解し、その言葉の真意を悟った。
衝動的に、少年は人気の無いほうへと駆けだした。
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少年は確かに従順であった。ただ――あまりに度が過ぎていた。
少年は、無意識に嫌悪しているものに対してであっても、全く反抗せずにいた。
その証拠に、彼は十代であるにもかかわらず、一度も反抗期を迎えたことが無かった。
本来なら誰もが経験するであろうことを経験しなかった少年は、少なからず歪みを抱えていた。
130214* 早速修正…。