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《Tale Gift Online》  作者: 半年
仮想世界 ―Tale World―
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怒れる竜

 「それがホワイト・フェザードラゴン?」

 「いや、本当は見上げるほど大きいはずなんだが……」

 ケイスケの腕の中の小竜は、大きさ以外は《ホワイト・フェザードラゴン》の特徴と一致する。

 「フェザードラゴンの子供なのかな」

 「フェザードラゴンの子供がいるだなんて、聞いた事が無いぞ」

 「ということは……」

 考えられる事は一つ。

 おそらく、アップデートが行われたのだ。

 TGOは一度も大規模アップデートが行われたことがない。

 何の予告もなく、突然に小規模アップデートが行われるのはよくあることだ。

 この小竜はアップデートによって仕様が変更されたため現れたのだろう。

 「ケイスケ、新しいクエストは発生してない?」

 「いや、特に何もないぞ。それに、よく見たら他に卵もあるし、クエストは問題なく続いてるみたいだぜ」

 「そっか……」

 どこか気にかかるところがあるが、今は気にしても意味が無い。

 「それより、いつになったら親竜は来るんだろう?」

 「そうだな、こんな小さな子供を置いてどこに行ったのやら……」

 その時、わたし達に大きな影が覆い被さった。

 見上げると、頭上にいるのは―――。

 「「親!?」」

 巨竜はわたし達の目の前に雪を噴き上げて降り立った。

 「で、でけぇ…」

 目を見開いて巨竜を見るケイスケ。

 巨竜は小竜より青みが強い羽毛を(まと)っている。

 全てを吹き飛ばしてしまいそうな翼、掴んだものを一瞬で砕いてしまいそうな脚、そしてその眼光で見るものを凍らせてしまいそうな双眸(そうぼう)

 すごい……。人の手によって作られたとは思えないほどの圧倒的な存在感だ。

 この巨竜を見ているとゾクゾクする。

 ―――興奮、という意味で。



 「やっと出てきた。いくよ、ケイスケ!」

 「え?ああ、そうだったな。了解!」

 ナツミは長剣を、ケイスケはモーニングスターをかまえる。

 今回の目的はクエストの達成ではない。竜を倒して素材アイテムを入手することだ。

 竜はブレス攻撃を使う、距離を取っていては的になるだけだ。

 ナツミとケイスケは突進技で一気に近づく。

 が、二人は長い尻尾に薙ぎ払われた。

 「がはっ!」

 「ぐおっ!」

 そのまま雪の上をゴロゴロと転がって体勢を立て直す。

 おかしい、竜の動きが速すぎる!?

 エンカウントしたばかりでこのスピードは不自然だ。

 まさか、竜のステータスまで改変されたのだろうか?

 考えていると、竜がブレス攻撃を放った。

 いけない!この距離では確実に当たってしまう!

 ナツミは盾無しの片手剣、ケイスケは両手を使う武器。ガードは出来ない。

 「くっ!」

 ナツミはバックステップで直撃を(まぬが)れたが、ケイスケは逃げ遅れてしまった。

 「うわああああっ!!」

 ケイスケはブレスのデバフによって両脚が凍ってしまった。

 「ちくしょう!直撃はないと思ったのに!」

 直撃してしまえば、《ヒートリング》も無意味だ。

 ケイスケはモーニングスターで脚の氷を砕こうとするが、ヒビ一つも入らない。

 そして、《ホワイト・フェザードラゴン》はケイスケに接近して追い打ちをかけようとする。

 大きなカギ爪がケイスケを斬り裂こうとすところに、ナツミが割って入った。

 「はぁっ!!」

 剣と爪がぶつかり合ってスパークする。

 この竜、スピードだけじゃなくて、パワーも上がっている。このまま押し合いを続ければ踏みつぶされてしまう。

 スピードに大きく振っている片手剣士のナツミでは押し返すことはできない。

 「うっ…く……」

 ナツミが押しつぶされそうになったその時、竜がよろけた。

 ナツミはその一瞬を逃さず、竜の腹を斬った。

 デバフが解けたケイスケが、がら空きの竜の腹をモーニングスターで殴ったのだ。

 二人は竜の足下から抜けだし、追撃の姿勢を作る。

 「危なかった、直撃したときは焦ったけど、こいつを装備してて正解だったな」

 ケイスケは左腕に装備した腕輪を見ながら言った。

 《ヒートリング》はブレス攻撃を防ぐことはできないが、デバフ状態から回復してくれる。

 ちなみにその効果は《フレイムリング》の方が大きく、早く回復させてくれる。

 「ねぇ、変だとは思わない?」

 「確かに、この竜は異常だ」

 この竜は怒っている。

 憤怒状態になると攻撃的になるモンスターは多い。この竜も例外ではなかったようだ。

 しかし、大してダメージも与えられていないこの状況、竜が憤怒状態になるのはおかしい。

 大抵のモンスターは残りHPが半分を切ったあたりから憤怒状態になるはずなのだが……。

 「ぴぃ!」

 後ろから可愛らしい鳴き声が聞こえた。《ホワイト・フェザードラゴン》の子供だ。

 ―――こいつが原因だ!

 「グルオオオオオォッ!!」 

 巨竜は小竜を見て吠えた。

 確かに、今の状況を『人間に我が子が捕まった』と考えればその怒りに納得できる。

 だとすると―――。

 「けっこう、めんどくさいことになったみたいね」

 「ああ、こりゃぁ骨が折れるぜ……。多分、文字どおりに」

 ナツミとケイスケは武器をかまえ直すと、巨竜に向かって()け出した。

 

 



 

 

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