白の双翼
【キャラクター】
■ナツミ/中大 鼓
主人公
攻略チーム入りを目指すスーパールーキー
■ユウリ/津上 優亮
もう一人の主人公
最前線で戦う攻略チームの一員なのだが、何故かソロプレイヤー
最近はナツミの指導をしている
■ベイオネット
通称:ベイ
漆黒の馬型モンスターを駆る騎兵で両手剣使い
■メイ
ユウリの友人
雑貨屋を営む職人・商人プレイヤー
ある理由から車イスに乗ってプレイしている
■ケイスケ
同じくユウリの友人
《モーニングスター》と呼ばれるトゲ付き鉄球ハンマーを使うパワーファイター
しかし、命中率はかなり低い
「あ、ナツミちゃん!」
ナツミが振り向くと、少女と少年のアバターがいた。
少女アバターは車イスに座っており、それを少年のアバターが押している。
「ケイスケ、止めて」
「りょーかい」
よいしょっ!とケイスケはナツミの前で車イスを止めた。
「久しぶり、メイ」
「一週間ぶりだね」
メイはピンクの髪をいじりながら言葉を返した。
「へー、ちょっとはまともな装備になったじゃん」
ケイスケはナツミの装備を見て言った。
現在の装備はどれも準レア以上のアイテムだ。
ユウリがクエストを手伝ってくれるため、ナツミのアバターは急激に強化されていく。
「まぁね、わたしの実力ならこれくらい余裕だよ」
「ユウリに手助けがあるからだろ。まぁ、ナツミの実力も大したものだけどな。今年中に攻略チーム入りできるんじゃないか?」
「夏休み前にはそうなってるつもり」
ナツミは自信満々に言った。
「ナツミちゃん、ちょっといい?」
「なに?」
「ユウリを待ってるんだよね?」
「うん、まだ時間があるから、これからフィールドダンジョンに行ってレベル上げしようかなって」
「ならちょうど良かった!」
メイは両手をパンッ!と叩き、笑顔で続ける。
「欲しい素材があるんだけど、私は戦闘職じゃないから、代わりに取ってきてもらおうと思って。いつもはユウリに頼んでるんだけど、今日は攻略に行ってるから。報酬はちゃんと払うから、行ってきてくれないかな?」
「そんなことならお安い御用だよ。で、そのクエストはどこのエリアで受けられるのかな?」
「ありがとう、ナツミちゃん!えーっとね…そのクエストは―――」
メイは《春の国》の城下町で雑貨屋を開いていて、そこで自作したアイテムを売っている。
彼女のアバターは戦闘スキルを持たない純職人クラスであるため、素材集めは他のプレイヤー(主にユウリ)に依頼している。
メイが作るアクセサリー系アイテムは評判が良く、攻略チームの御用達でもある。
わたしが右腕に装備しているブレスレット型アイテム《フレイムリング》もメイが作成したものだ。
「おー、こんな腕輪一つで変わるもんだな、軽装でもあったけぇや」
ケイスケは《フレイムリング》の下位装備、《ヒートリング》を左腕に装着している。
腕輪は支援効果を得られるものがほとんどで、この《フレイムリング》と《ヒートリング》には火属性を追加する効果があり、寒冷地の阻害効果を受けずに済む。
わたし達が来たのは《冬の国》、その名の通り寒く雪に囲まれたエリアだ。
今回のクエストは、洞窟を抜けた先にある氷山に生息する《ホワイト・フェザードラゴン》の卵を巣から運ぶというものだ。
ただ、今回の目的はクエストの達成ではない。《ホワイト・フェザードラゴン》の羽毛を手に入れることだ。
氷属性のモンスターである《ホワイト・フェザードラゴン》の弱点は火属性だ。
戦闘時はこの腕輪型アイテムが切り札になるだろう。
「よし、着いたぜ」
氷山を登る前に、まずは洞窟を抜けなければならない。
もちろん、洞窟の中には《フェザーウォーリア》という二足歩行するトカゲ頭のモンスターがごろごろいる。
わたしは背から剣を抜き、ケイスケは《モーニングスター》と呼ばれるトゲ付きの鉄球ハンマーをかまえる。
「はぁっ!!」
ズバッ!
「ギエェ!!」
「おっりゃあああ!!」
ズドン!
「ギャッ!!」
二体のモンスターの断末魔と破砕音を後に洞窟を出ると、目の前には白い山がそびえ立っていた。
「わぁ…思ったよりおっきい……」
「そのセリフもう一回」
「斬られたい?」
「ごめんなさい……」
《グレートホワイト》自体は透き通った氷塊なのだが、全体が雪に覆われているため真っ白に見えるのだ。
「この山の天辺にドラゴンがいるんだよな。トカゲ地獄の次はアイスクライミングかよ」
「そんなに大変じゃないと思うけど。そこまで急な傾斜じゃないし」
「え、そうか?まぁ、なら大丈夫か」
「それじゃ、行くよ」
「へいへい」
そして、わたし達は氷山を登り始めた。
「はぁはぁ…やっと着いたぜ」
「疲労は感じないはずでしょ」
「おっと、そうだった。でも精神的には疲れると思うけどな」
「これくらいでへばってたら攻略チームには入れません!」
「こりゃぁ、ユウリも苦労するな」
「ところで、ドラゴンはどこにいるの?」
ドラゴンの巣までたどり着いたはいいが、留守だったようだ。
「さぁな、その前に卵を出しちまおうぜ」
そう言って、ケイスケは巣の中に入った。
すると、その中から間抜けな声が聞こえてきた。
「な、なんじゃこりゃぁ!?」
「どうかした?」
わたしも巣の中に飛び込んでみると、卵を抱えたケイスケがいた。
よく見ると、卵にヒビが入っている。
「あーあ、傷つけちゃったのかぁ……」
「違う!俺は何もしてねぇ…。見つけた時にはヒビが入っていたんだ」
「どういうことだろう?」
「俺が聞きてぇよ!これじゃぁ報酬は減額か……」
その時、卵のヒビが広がり、そして砕けた!
「なに!?」
「なんだ!?」
そして、砕けた卵から出てきたのは、青白い羽毛の小竜だった。
「ぴぃ!」
小竜はわたし達の顔をキョロキョロと見て、一鳴きした。