炎帝の終末
「みんな頼むぞ!次で決めるッ!」
ユウリ、ナツミ、グランディオが先行し、その後ろにガイが続く。
「ウォォォオオッ!!」
炎帝の咆哮が城内を揺らし、周りの紅蓮がさらに広がる。
「はぁっ!」
ユウリが眼前の炎を薙ぎ払い、ナツミとグランディオがスキルを発動させて飛び込んだ。同時に炎帝が大剣を振り下ろし、二人と衝突した。
「くっ!……重い!……」
炎帝の大剣を受け止めた二人だったが、レイドボス相手にたった二人で持ちこたえられるわけがない。素早さ重視のキャラクタービルドのナツミは片膝をついて、今にも押し潰されそうになっている。このままでは二人とも剣ごと叩き斬られてしまう。
「くぉぉおおっ!!」
その時、そこに飛び込んだユウリが気合とともに、スキル発動の光をまとった長剣を大剣の腹に叩き付けた。
横から叩かれ、ずれて支えを失った大剣はその勢いを全て床に叩き込むしかなかった。炎帝の大剣はナツミとグランディオのすぐ隣に突き刺さった。大剣は完全に静止、炎帝は攻撃手段を一つ失ったのだ。
ナツミ、ユウリ、グランディオはスキル使用後の硬直時間のために動けない。
――次は、俺の番だ!
「おらぁっ!」
ガイが炎帝に目掛けて長剣を投げつけた。投げられた長剣は炎帝の足下で一瞬動きを止め、また動き出したときは回転しながら上へ昇っていく。光の円盤となった剣は丸ノコのように炎帝の巨躯を抉っていく。
そしてガイは、動きを止めた大剣を足場に駆け上がり、跳躍。それもスキルモーション、ガイは一気に炎帝の頭上に達した。同時に長剣も昇り切っていた。
数秒ぶりに再会した主と剣。ガイは長剣の柄を握り、炎帝の脳天に振り下ろした。全身をライトエフェクトに包んだガイは一閃の落雷となって炎帝を両断していく。
《ヘヴンズフォール》、現時点でガイが使用可能な終末剣スキルの中で最大の攻撃力を持つ。まさに必殺技だ。
――端から端まで両断してやる!今度こそ、これで終わりだ!!
そう確信した。その時だった!
「なにっ!?」
剣が身体の半ばまで達したところで止まったのだ。
炎帝の両手がガイをがっしりと掴んでいた。
「このっ……あと、少しなのに!!」
このまま止められ続けるとスキルが停止してしまう。そうなればスキルの補正を失い、炎帝に握りつぶされる。
ガイはスキルを保とうと踠くが、踠けば踠くほどスキルの光は弱まっていく。
焦ったところでどうにもならない。頭では解っているが、集中力は落ちる一方だ。自分の残りHPはどのくらいか、このまま潰されたら死ぬんだろうな――と、スキルを保持すること以外に思考が飛んでしまっている。
だが、集中が緩んでいたおかげでガイは気付くことができた。炎帝の腕から銀色の糸のようなものが伸びていることに。
それに気付いたガイは、全神経をスキル保持に集中させた。
「ガイを放しやがれぇっ!」
突然現れたユウリが炎帝の腕に剣を突き刺した。
あの銀色の糸はユウリのワイヤーショットのワイヤーだったのだ。
炎帝が大剣を棄て、両手が自由になった瞬間。ユウリはワイヤーガンを装備し、炎帝がガイを掴んだその時、引き金を引いた。そして一気に上昇したユウリは、炎帝の腕を高い貫通性を持つスキル《フルブレイド・ピアース》で貫いたのだ。
剣が突き刺さり、炎帝が掴む力を緩めた瞬間、止まっていたガイの長剣が再び炎帝を両断し始めた。
完全にスキル発動の輝きを取り戻したガイが炎帝を両断していく。
そして、ついに脳天から足下まで両断し終え、スキルの輝きが失われた瞬間。炎帝はダメージエフェクトを鮮血のごとく撒き散らして、その身を無数のポリゴンの欠片に爆散させた。