表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《Tale Gift Online》  作者: 半年
仮想世界 ―Tale World―
4/43

ナツミとツヅミ

 「タァッ!!」

 ズバッ!ズバッ!ズバァァン!!

 「凄いな、もう三連撃技も習得できるなんて」

 「まぁね!」

 ナツミの指導が始まってから半月ほどが経った。

 ナツミのセンスは凄まじく、この調子で行けば今月中に片手剣スキルはマスターできそうだ。

 「なぁナツミ、片手剣の他に習得しておきたいスキルはあるのか?」

 「うーん……、弓スキルがほしいんだけど」

 「それはちょっと難しいと思うな。ナツミは剣士ビルドだし」

 「やっぱりね……。はぁ…前衛も後衛もできるオールラウンダーになりたかったんだけどなぁ」

 「いや、難しいだけで無理だとは言ってないぞ」

 「じゃぁなんとかなるの?」

 「ああ、そういう戦い方をするやつにピッタリな武器があるしな」

 そう言って俺はその武器をオブジェクト化する。

 「何それ、双剣?この反りは弓?でも弦がないし……」

 『青い刃に金の装飾が美しい、弓なりに反った双剣』を見て首をかしげるナツミ。

 「どっちも正解。これは剣でもあるし、弓でもあるんだ」

 「なるほど、だからオールラウンダーにピッタリな武器ってことか」

 「《複合武器》といって、一つの装備で複数のスキルを扱うことが出来るんだ。まぁ、それを装備するためには対応するスキルを全て習得しないといけないんだけどね」

 「じゃぁ、片手剣の派生スキルと弓スキルをマスターすればいいんだね」

 「いや、こいつを使うにはもう一つスキルが必要なんだ」

 俺は双剣を両手で持ち、真っ二つに折った。



 「え!あ……もしかして……」

 ナツミは一瞬驚いたが、すぐに俺がやろうとしていることを察してくれたようだ。

 俺は両手に持った剣を右肩に担ぐように構える。すると両手の剣が光を帯び始めた。

 「はぁっ!!」

 発動したスキルが二つの閃光を放ち宙を斬る。

 「二刀流スキル?」

 「そういうこと」

 「二刀流も片手剣の派生スキルなんだよね?習得条件は?」

 「それが問題なんだよ……。二刀流は他のスキルと違って特殊なんだ」

 「特殊って?レアなクエストをクリアしないといけないとか?」

 「そういうのじゃないんだ。必要なのはプレイヤースキル、本人の持つ力なんだ。確か、二刀流を習得するために必要なのは高い反射速度だったかな」

 「反射?それってADダイバーの信号を脳が受け取って処理するまでの速さのこと?」

 「まぁ詳しいことはわからないけど、多分そういうことだと思う」

 「それってどうすればいいの?」

 「長時間の連続プレイ経験があれば身につくらしいけど、個人差があるからなぁ……」

 「はぁ…この世界に魔法があれば剣士と弓兵とかあまり気にしなくてよかったのに」

 テイルギフト・オンラインはファンタジーな世界観でありながら魔法が無い。

 代わりに《テイルスキル》と呼ばれるスキルが戦闘系から生産系など多種多様に用意されている。

 魔法が無いといっても存在しないわけではなく、マジックアイテムや特殊効果を発動するスキルは存在する。

 「まぁ気にしてもしょうがないかぁ。とりあえず、これからは弓スキルを鍛えてくってことで」

 「そうだな、気長にやろうぜ」

 「夏休みまでに最前線で戦えるようになりたいけどね!」

 「そうだ、その意気だ!」

 


 ◆◆◆



 「ツーヅミちゃんっ!」

 「おわぁっ!?いきなり抱きつくなっ!」

 「ごめんごめん。だってツヅミちゃんが可愛くて」

 「今日もツヅミちゃんはかわいいよねー」

 「こら!頭を撫でるなぁ!」

 始業式から早二ヶ月。クラス内での関係も大体出来あがってくる頃だ。

 遠方から来たわたしがちゃんと馴染めるか不安だったが、こうやってじゃれついてくる友達も出来てすぐに不安は解消されたのだった。

 だからといってこの愛玩動物扱いはどうかと思うのだけど……。

 まぁ、自分の容姿については十分理解してる。

 平均身長を大きく下回る143センチ、丸顔、クリっとした目、薄い胸部装甲………。

 どう見ても小学生です、本当にありがとうございました。

 くぅ……、TGOの中なら友人達とも変わらない年相応の体系なのに……。いや、むしろ彼女達より発育が良いくらいだよ!

 仮想と現実の身体のギャップに違和感を感じるというのは良くあることらしい。

 現実世界の『中大(なかだい) (つづみ)』と仮想世界の《ナツミ》ではそのギャップが大きすぎてため息も出ない。

 それだけTGOにハマっているということだろう。

 「おーいお前ら、いくら中大が『小さくて可愛い』からって授業前ギリギリまで撫でまわしているなよ」

 そういえば、教師からもこんな扱いだった……。

 


 「たぁっ!!」

 ズドォォン!!

 わたしが放ったスパイクは、相手コートの前衛の真後ろに炸裂した。

 「また勝った!」

 周りから歓声が上がる。

 「ほんとツヅミはすごいなぁ……私ちょっと休憩」

 「鼓姫が相手なんて反則だよぉ。メンバー変えよう」

 「こんな小さな身体のどこにそんな力があるんだろうね」

 「手足を一生懸命に伸ばしてがんばるツヅミちゃんも可愛いよね」

 「そうだねー」

 ――結局、そこに行きつくのね……。

 わたしは昔から運動神経が良く、体育の時間では大抵活躍できた。

 ある一つのスポーツを除いては、不得意な競技はほとんどない。

 バレーボールでも全力で跳べばネットを越えられる。

 中学時代はほとんどの運動部に誘われていたのだが、趣味に費やす時間が少なくなることが嫌で断ってしまっていた。

 高校生になっても部活動に所属していない。

 クラスのほとんどはもう部活に入っており、放課後はそれぞれの活動に(はげ)んでいる。

 気になる部活があるのだが、今は授業以外の時間はTGOに使いたいので入部はしていない。

 放課後はその部活に顔を出してみるのもいいかもしれない。

 ユウリは最前線の攻略に参加するので、今日の指導はお休みだ。

 ユウリと一緒にプレイするのが当たり前になっているので、一人でレベル上げをするのはあまり楽しくない気がする。

 ――わたしも早く最前線で戦えるようになりたいなぁ……。

 キ―ンコーン

 放課後の予定を立てていると、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

 

 

 

 

今回の話でナツミのリアルネームが明らかになりました。

これからは現実サイドの話も入っていきます。

デスゲーム化までの序章はあと半分くらいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ