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《Tale Gift Online》  作者: 半年
仮想世界 ―Tale World―
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はじめての世界

 「おー、この番組リアルタイムで見るの初めてだー」

 ようやく荷ほどきが終わったので、テレビを付けて一息つく。

 割と好きな学園モノのアニメ。地元では5日遅れだったのでリアルタイムで見ると新鮮だ。

 時刻は午前二時。

 思ったより時間がかかってしまった。

 普段ならもう寝ている時間。

 しかし、眠くならない。

 これから始まる新生活に興奮しているのだろうか。

 確かに、高校生にして一人暮らしとなると興奮せずにはいられないだろう。

 遊びたい盛りに障害となる親の存在が無い。自分だけの家。

 アニメやラノベではよくある環境。それを手に入れることができたのだ。

 それを手にする条件は隣県の有名校への入学だった。

 それはもう死ぬ物狂いで勉強した。

 アニメとゲームに使っていた時間をこれまでの半分にした。気が狂いそうだった。

 そのおかげで成績は伸び、無事に合格することができたのだ。

 まぁ、反動で春休みは遊びっぱなしだったけど。

 「でも、これからはちゃんと進級できるようにがんばらないとなぁ……」

 合格できたとはいえギリギリだった。気を抜くことはできない。

 ぶっちゃけてしまうと勉強は好きではない。すごくダルい。

 「今のうちに遊べるだけ遊んでおこうっと」

 わたしは、ダンボールの中からもう一つのご褒美を取りだした。

 


 もう一つのご褒美。

 その名は《ADダイバー》、VR(バーチャルリアリティ)ゲーム機だ。

 これまでのVRゲームはゲームセンターの筐体が一般的だった。

 ワンプレイ1000円と高額だが、稼働してから一度も誰もプレイしてないところは見たことが無い。

 自分がゲームの中に入りアバターとなってプレイする。それは誰もが夢見たことだろう。

 そして、その家庭版がADダイバーだ。

 大手電子機器メーカーのアンソニー社から発売されたADダイバーは、ヘッドギア型にまでダウンサイジングされ、価格も一般的なゲームハードと変わらないほどに抑えられた。

 まぁ、それでも中学生の小遣いではとても買える値はなかったけど。

 実を言うと、独り暮らしの環境を手に入れたことより、VRゲームで遊べることの方が三倍ほど嬉しい。

 そして、わたしがこのADダイバーで初めて遊ぶVRゲーム。

 ADダイバーがAD(アナザー・ディメンジョン)ダイバーと名付けられた所以(ゆえん)

 ADダイバーの性能をフルに使用するMMORPG。

 ADダイバーが作られたのはこのゲームのためと言っても過言ではない。

 《Tale Gift(テイルギフト) online(オンライン)》、発売当初から不動の一位を誇るタイトルだ。

 据え置き機とヘッドギアをコードで繋ぎ、電源をオンにする。

 「よし!今日はとことん遊ぶぞ!」 

 今日は春休み終了二日前。

 それに独り暮らしなので文句を言う人間はいない。

 ベッドに横たわり、ヘッドギアを数秒見つめ、装着する。

 「ダイバー・イン!!」

 それが異世界(アナザー・ディメンジョン)へ行くための魔法の言葉(ボイスコマンド)

 


 目の前が光に包まれ、一瞬感じる浮遊感。

 そして、仮想の重力が身を捉える。

 上下が反転する感覚にバランスを崩しそうにそうになるが、何とか体勢を整える。

 周りを見ると、とてもポリゴンの塊とは思えないほど精巧な木々。

 ――え、木?ここって森の中!?

 確か、初めてプレイするプレイヤーは《はじまりの村》に来るはずなのだが……。

 メニューからプレイヤー情報を開くと、プレイヤー名と各種ステータス、そして現在位置。

 「《混沌の樹海》か、いかにもって感じ……」

 何かしらのバグでここに飛ばされたのだろうか。

 「結構かっこかわいいアバターじゃん」

 ステータス画面に表示されたアバターの姿を見てつぶやいた。

 TGO(テイルギフト・オンライン)では、アバターはランダムに構成される。

 わたしのアバターの容姿は、TGOのようなVRMMOを題材にしたアニメのヒロインとよく似ていた。

 美しい黒髪のスラっとした姿のアバターは、平均身長を大きく下回るリアルの自分とは大違いだ。

 これほどのアバターはなかなか手に入らない。

 課金することでアバターの再構成を行えるが、それでも納得のいくモノが手に入る確率は非常に低い。

 それほどまでレアな美少女アバターだったのだが、身に着けているのは初期のインナーだ。

 ミニスカートにニーソなライトアーマーが良く似合うだろうに……。せめて初期装備の防具があればリペイントで少しは気飾れたのに………。

 初期装備と初期スキルは村長のチュートリアルを聞くことで手に入る。

 だが、はじまりの村ではなく、いきなり混沌の樹海に来てしまったために手に入れることができなかった。

 つまり、今は丸腰だ。

 モンスターに襲われたら確実に即死する。

 このゲームには、『体力ゲージがゼロになればセーブ地点に戻る』という都合のいいシステムはない。

 体力がゼロになると、幽霊状態になって復帰するまで表示されるカウントを眺めているしかない。

 「まぁ、ここで突っ立っていてもしょうがないか」

 どうせ丸腰だ、何も失うモノがない。

 わたしはどこへ向かうでもなく、とりあえず歩き出した。


 

 

 

 

 

 

 


 

あまり知識はありませんが、とにかくVRMMOモノを書いてみたかったのです!

『拾った剣で世界を救え!』と並行してぼちぼち書いていこうと思います。

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