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硝煙の魔法  作者: 物黒織架
第四章 殺し合いを、しましょう
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第四章 最終幕

「アーサーさん。またそれを見てるんですか」

「ん、あぁ、ジークか」

施設内の自室で、隻腕になったアーサーは海島の遺言状を読んでいた。

左腕は原型を定めないほどに崩壊していて、ニコラスの魔法を持ってしても修復できなかった。検査によると、細胞レベルで崩壊が起こっていたらしい。

カサリ、と古風な封筒が音をたてる。

「ボスが俺たちに残してくれたものだ。無駄にするわけにはいかないだろ」

「もう全部暗記してるくせに、二代目梟首領なんですから、仕事もしてくださいよ」

あのあと、駆けつけたニコラスたちに介抱され、アーサーは一命をとりとめた。

すでに死んでいた海島の遺体は、海島の遺言状に書いてあった通り、遺灰にして海に撒くこととなった。

その後新しい梟のボスには、アーサーが選ばれることとなった。

アーサーは反対したが、西織が無回答を貫いた以外は、皆が賛成し、押しきられる形になった。

「分かってる。今行くさ」

机に丁寧に遺言状をしまい、アーサーは部屋を出ていく。

海島の遺言状にはこう書いてあった。



私の部下たちへ

何て書くと、今のあんたたちはこれを破り捨てるかもしれないわね。

これが人に読まれているということは、私が西織を殺すことに失敗して、誰かが生き残ったということだから。

私が負けるとなると、戦ったのはアーサーかしら?相討ちの可能性も高いと思うけど。

とにかく書くわ。

私が未来から来て、西織を殺そうとする原因について。

あまりに未来について書きすぎると、大きく未来が変動して、より悪い方向に変化する恐れがあるから、ハッキリとしたことは書けない。

少なくとも、今まで私が試してきた中で、いい方向に変わったことは一度もなかった。

覚えておきなさい。『私と西織だけが生き残った』これがほぼ最良の未来なのよ。

それほどに私たちの未来は絶望的なの。

言えるのは三つ。

一つ。Irisionを破壊すること。

あれに使われた技術が未来の変革の原因。時間稼ぎにしかならないでしょうけど、そのままにしておくよりはましだわ。

二つ。相対した敵は何がなんでも百パーセント確実に殺しなさい。

場合によっては他人を裏切ることも構わないわ。たとえその結果、大きな危機を生むことになっても、それだけはしなさい。

三つ。『全知無能(アカシックレコード)』と話すときには気を付けなさい。

必ずあいつは接触してくる。どんな形かは分からないけど、それだけは確実。あいつは私たちの敵では無いけれど、けっして味方でもない。

そして肝に命じなさい。あんたたちでは『全知無能(アカシックレコード)』には天地がひっくり返っても勝つことは絶対不可能よ。

あれは次元が違う。私はあいつと出会うまで魔術師は異常な存在だと思ってた。でも違った。あれに比べれば魔術師なんて人間に毛が生えた程度の存在でしかない。

あいつは最早神の領域に達してる。全てはあいつの手のひらの上で転がされる駒でしかない。

もう一度言うわ。絶対に『全知無能(アカシックレコード)』には勝てない。

でもあれはすべてを知っている。もしかしたらこの世界では、助かる道を示してくれるかもしれない。

けれど最悪の道を示してくる事もあるかもしれない。くれぐれも気を付けなさい。

これで遺言は終わり。あんたたちが生き残れるのを祈ってる。天国には行けなさそうだから、地獄からだけどね。

愛してるわ。私の部下全員を。

PS.私の死体は残っているなら灰にして海に撒いて頂戴。



死者の言葉は重い。

それを胸に、アーサー達は未来に向けて進んでいく。


第四章 完

総括に今回は設定はありません。

それでもよければどうぞ。

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