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硝煙の魔法  作者: 物黒織架
第二章 救いたいと願うなら
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第二章 第六幕

この度はお詫びしなければならないことがあります。

作者の勝手な都合ではありますが、設定を変更させていただきたく思います。

変更するのは西織夕香の魔法、タイムリープについてです。

作者が考えなしに魔法の設定をしたために、どうしても西織無双になってしまう事が懸念されます。

よって以下の様に設定を変更させていただきます。

時空復路(タイムリープ)

自分の人生をリセットすることができる。または、セーブポイントを予め設定し、その時間から魔法を発動させ続けることで任意にそのセーブポイントに戻ることができる。ただし意識が途切れるなどして魔法発動が中断されるとセーブポイントがリセットされる。また、バタフライ効果(初期条件の僅かな違いにより、結果が大きく変わる現象の事)により、未来は変質する。


こんな作者ですが、見捨てず、温かく見守っていただければ幸いです。

一台のワンボックスカーに乗ってアーサー達は移動していた。

向かう先は北、『アースガルズ』の本部に向かうところだ。

無論真っ正面から突撃するような愚は犯さない。

手の中で軽くナイフを弄びながらアーサーは一通り北欧神話について知識を確認する。

北欧神話は主にノルウェー、デンマーク、スウェーデン、そしてここアイスランドで信仰されていた神々の神話だ。

大まかに登場人物は神、巨人、人間の三つに分けられる。

そしてギリシャ神話等と違い、神も死ぬ、というのが最大の特徴だ。

神話においては世界の全てに愛されていた神、バルドルの死をきっかけにラグナロクと呼ばれる終末戦争が勃発し、神も巨人も英霊として参加する人間も、全てが(ことごと)く死にまくる。

『アースガルズ』の主要メンバーの幾人かはそのラグナロクで活躍する神や巨人を襲名しているらしい。

アーサーとの相性は最悪、と言うほどではないものの旗色が悪い相手は二人ほどいる。

それに一人で戦おうとしていたのだから、随分と無謀だったな、と昨夜の自分を思い出して思わずアーサーは苦笑した。

「アーサー、気を引き締めなさい。あんたが受けた仕事だし、何より相手は北欧最大の魔術結社なんだから」

昨日はしぶしぶ了承したのに、いざ仕事となると顔つきが変わる。

海島はプロだ。無論、アーサーも。

「大丈夫です。後方の索敵警戒は怠っていません」

と、そこで車の前方に人影が現れた。

ヒッチハイカーか、とニコラスが考えた瞬間、


ドォアッ!!!という音と共にボックスカーが千切れ飛ぶ。


人影が投擲したなにかがボックスカーの正面を叩き潰し、そのまま車を突き破って左右に車を分断する。

燃料が漏れ、それに火花がぶつかった。

ゴッ!!と音というより衝撃波を撒き散らして車体が勢いよく炎上する。

車体から飛び出して難を逃れたアーサー達は近くでそれを見て、その威力に戦慄する。

「十時の方向だ!全員構えろ!」

アーサーが叫ぶのと同時に再びなにかがこちらに投擲される。

「私がやる!」

海島がボールを受け止めるような姿勢で構え、投擲物を掴みとる。

恐らく『掴む』という動作を魔法で『強調』したのだろう。

相も変わらず無茶苦茶な魔法だが、海島が掴んだ投擲物を見てアーサーの顔色が変わる。

それは一つのハンマーだった。

おそらくは世界で一番有名な。


北欧神話最強の雷神、トールが振るうハンマー。

雷を操る(····)雷鎚ミョルミルだ。


「ボ」

ス、とアーサーが言い終える前にミョルニルから紫電が迸る。

ドン!と殴られたような音を立てて海島の体が吹っ飛んだ。

役目を果たしたハンマーはスゥ、と消えて持ち主のもとに戻る。

「クッ…ッハ」

呻く海島を横目で見て軽い負傷であることを確認すると、アーサーは素早く指示を出す。

「敵は俺が対処する!ニコラスは防壁を張れ!ジークは俺についてこい!」

「分かった!」

「は、はいっ!」

すぐさまニコラスは地面の土を分子レベルで再構築し、防壁を作り上げる。

防壁の外に出たアーサーとジークは人影の下へ駆け出そうとして、


「おおらぁっ!燃え尽きろぉ!」


横合いから灼熱の焔を纏った剣が降り下ろされた。

「クッ!?」「なっ!?」

アーサーは避けたが、ジークは右腕を焼き切られる。

一瞬で燃え尽きた傷口のせいで痛みを感じることすらなく、ジークは剣の爆風で吹き飛ばされた。

地面を転がったジークは右腕(··)をついて素早く立ち上がる。

鋼体英傑(ジークフリート)

その魔法は背中の一点以外の全ての外傷を一瞬で治癒し、また皮膚を鋼のごとく硬化させることができる。

ジークは素早くその手に『ノートゥング』を生成すると、焔の剣を持つ男に突っ込む。

轟、と渦巻いた焔が剣に収束する。

ためた焔を一気に放出して、ジークを背中の弱点ごと焼き尽くすつもりだ。

しかし、焔が剣に集中し、逆に体のほとんどが晒されたそこに、アーサーは機関砲を叩き込む。

咄嗟に構えた剣が焔を吹き出し所有者を覆うのと、

焔の奥にジークが剣を突き込むのは同時だった。

(やった!?)

と、ジークが思った瞬間、


「いけませんね」


あの男の声が聞こえた。

焔が晴れ、『ノートゥング』の切っ先が二振りの宙に浮いた剣に受け止められているのを見る。

「あ…」

「おはようジーク、よい天気ですね。最後に会ったのは君が結社から逃げた時ですよね?一人の教師として君のことは気にかけていましたよ」

目の前の男は豊穣神フレイの名を襲名した男。

そしてジークと姉を『教育』していた男だ。

「こんなところで立ち話もなんですから、『アースガルズ』に戻りましょうか。さぁ、ジーク」

優しげな笑みで手を伸ばしてくる『教育係』への恐怖で体が固まり、


ギイィンッ、と空中の双剣が銃弾を弾く。


「ほぅ、銃弾すら弾くか」

観察するような目で双剣を見つめるアーサーの周りに刀身を切り詰めた(ソードオフ)ライフルが展開されている。

そのやり取りで体の自由を取り戻したジークが慌てて飛びすさる。

そしてその時、ニコラスの作った防壁が内側から破られた。

「アーサー!私に一発食らわせてくれやがった奴まだ殺してないわよね!?」

海島が好戦的に目を光らせながら、ニコラスと西織を伴って外に出てくる。

こうして『梟』と『アースガルズ』は相対した。

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