第二章 第五幕
PV1000ユニーク200突破しました!
歓喜のあまり奇声をあげて転がり回ったりしてしまいました。
こんな作者ですが、何卒よろしくお願いします。
ついでといってはなんですが、ジークフリートの容姿説明を忘れていたことに気が付きました。需要があるかは分かりませんが、一応説明しておきます。
ジークフリート
金髪碧眼の少年。14歳。やや子供っぽい一面あり。まだあどけない雰囲気の顔立ち。
夜。
就寝しようと自室に入ったところでアーサーは先に人の部屋に入っていた闖入者に話しかけた。
「何の用だ、西織」
「少し聞きたいことがありまして」
ベッドに腰かけてこちらを見つめながら西織は言う。
「『梟』って結構あっさり他の結社との闘いを受け入れますよね?普通いくら強くとも殺し合いを積極的にしようとは思わないと思うんですが」
「あぁ、その事か。うちは結社のポリシーが過激だからな」
「ポリシー?」
「魔術結社にはそれぞれの目的、つまりは信念がある。そもそも魔術師ってのが各々自分なりの信念を持って生きているやつらだしな」
魔法はその魔術師の信念を反映して発現する。
裏を返せば魔法を使える、ということは信念を持っているということだ。
「魔術結社は似たポリシーを持った魔術師の互助協会みたいなものだ。基本的に互いの思惑を邪魔することは許されず、だからこそ魔術結社は接触すれば大抵争う」
「それで、『梟』のポリシーは何なんですか?」
「『悪党であれ』、だ」
「悪党…?」
「一人を犠牲に万人を救うことは誰にでもできる。だが、万人を犠牲に一人を救うことは悪党にしかできない。たとえ悪と、身勝手と、自己満足と罵られたとしても、それでも救いたい一を貫く本物の大悪党であれ。それがうちのポリシーだ」
「成る程、海島さんらしいですね」
苦笑して西織は言う。
その笑みは華やかであどけなく、そしてどこまでもーーーーーーーーーーーー作り物だ。
「まだ、生きる意味は見つからないか」
「ええ、もう全く」
にこやかに、
あくまで笑って西織は言う。
「どんな風に生きてもやっぱり変わりませんよ。まぁ、そんな簡単に治るものじゃないのは分かってますけどね」
西織夕香はこの世のすべてに絶望している。
絶望しながら、それでも生きることをアーサーは彼女に強いた。
何かを言うべきだと思う。
しかし、何を言えばいいのだろう?
所詮アーサーは他人なのに。
「生きていればきっといつか…何て言葉があるがそんなのは嘘だ。幸せも、勝利も、栄光も、その為に対価を支払わなければあり得ない。だからお前は、今のまま頑張れ。成果が出るかは分からなくとも、その努力だけはお前を裏切らない」
結局アーサーは気休めしか言えなかった。
「気休めですね」
西織もそれを気休めと断じた。
それでも、
「ああ、だが気休めの一つや二つも言わなきゃ生きるのなんて辛すぎる。お前は普通より辛いんだろうから、もっと気休めを言った方がいいと思うぞ」
その言葉に西織は少しうつむき、そしてアーサーに問うた。
「アーサーさん。貴方はどうして生きようとするんですか?人を救い、死を退けて、どうしてそこまで生き続けるんですか?」
「そういう風に、生かされたからな」
アーサーは、
どこか虚無的な笑みを浮かべて続ける。
「死ぬなって言われたから、人を救って生きろと言われたから、そこに価値を見出だせなくても、俺は人を救って、その先にある死にいつかたどり着く。それならきっと、許してくれると思うから」
「不躾ですが、詳しく教えてもらえますか?」
「この戦いが終わったらな」
「…死亡フラグですよ、それ」
「望むところだ」
肩をすくめて、おどけるようにアーサーは言う。
「そろそろ寝とけ。お前は明日から指揮係なんだからな」
アーサーはそう言って西織を部屋の外に押し出す。
(こうなった理由、か)
一人になった部屋の中で、アーサーは一人呟く。
本当に、どうしてこうなってしまったのだろう。
魔術などという得たいの知れない力に身を染め、数多の敵を殺してきた。
アーサーに罪悪感は無い。そういう風に育てられた。
血みどろの自分を思いながら、姉の言葉を思い出す。
『ねぇ、想像してみて?私達はどこにでもいるような平凡な姉弟で、ただ静かに銃も死体もない町で過ごすの』
少し過去の苦い思い出に浸り、アーサーはそっと呟いた。
「そんなの、もう考えることもできないよ。姉さん…」
チャリ、と首もとのドックタグが音をたてた。
◇◇◇
ジークフリート、アーサー達にはあの後ジークと愛称で呼ばれることになった少年は、分け与えられたベッドに横になっていた。
ここから車で二日ほどの場所に『アースガルズ』の基地がある。
そこに姉と自分は姉が7歳、自分が5歳の時から監禁され、『教育』を施された。
臆病な自分は『恐れを知らぬ者』と評されるジークフリートの継承者として成功するとは思っていなかった。
しかしいざ、魔法が顕現したとき思ったのだ。
これなら、
これなら、姉をつれて逃げられるかもしれない。
現実は非情だった。
『教育係』の男の魔法が発動した途端、姉と自分は文字通り切り離された。
激痛にうずくまる彼を見下ろして『教育係』は滔々(とうとう)と語った。
己の魔法のコピー元は北欧神話において無敗を誇ったこと。
ジークフリートはもう用済みだということ。
姉を利用して、『アースガルズ』の理想が叶うこと。
逃げられたのは魔法によって不死の恩恵があったからだ。
(でも、もう違う)
協力してくれる人がいる。
彼らの強さはミストルティンを圧倒したというだけで十分わかる。
勝てる、はずだ。
それは子供にありがちな、ただの根拠の無い確信だったが、それでも彼はアーサー達を信じていた。
或いは、それは子供特有のヒーロー願望にも似たものだったかもしれない。
それでも、ジークフリートの名を継ぐ少年は、拳を握り締めて目を閉じた。
今、文章は2000文字程度で書いていますが、字数を多くして更新ペースを落とすか、このままでいくか悩んでいます。
よろしければ意見などいただけると嬉しいです。