2 奪還1
捕まったときに、鎮静剤を打たれたせいだろうか。
体が怠いし、眠い。
ウトウトしていたら
「よぉ大将」
と、呼ばれた。
目をあけると、見知らぬ体格のいい角刈りの男が立っていた。
アンタに大将と言われる筋合いは無い。
男の体には無数の古い傷跡がある。
『アンタの方が大将』そんな感じの男だ。
「あんたがプーランクのデザートイーグルか」
その男はいった。
何それ。そのダサいネーミング。
「プーランクのデザートイーグルを落としたっていうんで、みんな大騒ぎだ。こんな娘っことは思わなんだがな。今回の戦いは珍しく精彩を欠いていたな。」
余程無様な戦いをしたらしい。
半分パニックになっていて覚えていない。
「恋人と朝までヤッてて、寝不足だったのよ」
私がそういうと、角刈りの男はニヤっと笑った。
「プーランクのアレン・シーモア少佐が捕虜の交換を要請してきた。みんなで噂していたんだよ。傭兵を使い捨てにするプーランクが珍しいってな。余程、機密に詳しい傭兵か、それでなければ幹部の恋人だろうと予想していたんだ。後者だったのか」
私は驚いて目を見開いた。
傭兵の捕虜の交換? そんな話は今まで一度も聞いたことが無い。
「お前の意志をききたい。ここに残るか、恋人のもとに帰るか。捕虜の交換の交渉にはのるつもりでいる。こちらにとっても大切な人員が向こうに拘束されているからね。彼を返してもらうつもりでいる。ただ、お前と彼を交換するか、お前が乗っていた戦闘機と交換するか。考えておいてほしい」
角刈りの男はそういうと、去って行った。
「戦闘機との交換にしなよ。『アース』に戻ったら、体がボロボロになって、死んじゃうよ。ここにいた方がいいよ」
この前のカルテをもっていた白衣の少年―シンが枕元に座ってそういった。
彼は、ここでお医者をしている。
でも。
私はドラッグがなければ戦えない。
シンの様子からいっても、ドラッグをもらえるとは思えない。
プーランクのデザートイーグル(ダサい名前)だろうがなんだろうが、ドラッグがなければタダの人(お荷物)だ。
私はうつむいた。
あの船にはルークもいる。
「絶対、戻っちゃダメだからね」
ぴぴぴ、とタイマーが鳴り、シンは部屋を出て行った。