6 出発
「俺も一緒に行く。プーランクを出よう」
アレンはそういってくれた。
「…本当に?」
本当に、いいのだろうか?
アレンがずっと守ってきた場所なのに。
「ああ。軍を辞めるよ」
アレンは笑顔でそういった。
けれど、その笑顔はどこか寂しそうに見えた。
アレンの大切な何かを壊してしまったようで、怖くなる。
「ミアが無事なら、それでいい」
誰に言い聞かせるでもなく、呟くようにいう。
「アレンは…、それで、いいの?」
「ずっと一緒だって約束しただろう?」
アレンが指輪をみせる。それは、長い指にしっかりと馴染んでいた。
そうだった。
首の後ろの個人認識チップはとってしまったけれど、こっちのドッグタグはちゃんと私の指にもはまっている。
「うん。ずっと、一緒」
私達は、いったん、お別れをした。
私はロウさんと一緒に、プーランクを出ることになっている。
どうしてもアレンに会いたいと私がごねたので、ロウさんは手荷物として、「アンドロイド」の私をプーランクへ連れてきてくれた。この後は、永世中立惑星ロペまで連れて行ってくれる。この貸は出世払いということでしっかり請求するからね、とロウさんはいった。この先、私が出世することはないけれど。
アレンは軍を正式に辞めてから、ロペで合流することになっている。シンからもらった航宙チケットをわたしておいた。
アレンが一緒となると、ビッグマザーには乗れない可能性もある。
アレンは生粋のプーランク軍人なのだ。
しかも、今はビッグマザー計画の一員だ。
そんな怪しい人間を乗せるだろうか?
もし、ダメならアレンと二人で生きていこうと思う。
どこか、民間の軍隊に所属するとか、運び屋をやるとか、なんとでもなる。
私はプーランク国籍はもちろん、難民としての名前すら失ってしまった。
でも、名前の登録の無い難民などゴマンといる。
しばらくはアレンの持ち物のアンドロイドとして生きればいい。
そして、戦争の混乱に乗じて、また難民登録をすればいい。