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1 撃沈。

シンの視点です

「シン、元気ないね」

「シーッ!! シンはな、失恋して落ち込んでいるんだ! 今はそっとしておいてやれ。温かく見守ってやろう!」


ばかでかい大将の声がする。

そして、暑苦しい視線。

見守らなくていいから、どこかへいってほしい。

僕は救護室にある事務机につっぷしたまま、撃沈していた。


小鳥ちゃんが結婚してしまった。

アレン・シーモアと。

プーランクのニュース報道でそれを知った。


小鳥ちゃんは勇ましかった。

海賊船DDDに単機で突っ込んでいった。

慌てて大将とルークが小鳥ちゃんを回収にいったけれど、一足早くプーランクの精鋭部隊に回収されてしまった。そして、それから間もない内にアレン・シーモアとの結婚報道があった。


小鳥ちゃんは、プーランクのニュースやドキュメント番組で取り上げられるほどの有名人になってしまっていた。クールなエリート軍人アレン・シーモアと小鳥ちゃんはプーランクでは今、最もホットなカップルらしい。

小鳥ちゃんは傭兵「ベビードール」の愛称で紹介されていた。

正規軍精鋭部隊と組み、大物海賊DDD討伐に成功(なぜか、そういうことになっていた)。

セクサロイド「ベビードール」そっくりの容姿。

神業とよばれる戦闘機乗りの腕前。

プーランク帰化を認められた小鳥ちゃんを、エリート軍人アレン・シーモアが奪うように連れ去り、結婚してしまった、とゴシップ誌には紹介されていた。



小鳥ちゃんが無事だったのはもちろん嬉しい。

小鳥ちゃんが幸せになるのも嬉しい。

でも、僕は悲しい。


蕩けるような小鳥ちゃんの笑顔が眩しい。

アレン・シーモアに腰を抱かれて微笑んでいる小鳥ちゃんは、明らかに綺麗になっていた。

惚れ直してしまう。

いや、惚れ直してどうする。人妻に。



撃沈している僕を見かねたのか、カーラ艦長がとどめを刺しにきた。


「こういうのはだな、めぐりあわせというか、運命というのかな。シンだっていい男だとは思うぞ。思いやりはあるし、頭いいし、仕事が早くて手も抜かない。ただなあ、色恋に関しちゃ、手ぇだすの遅いし、詰めが甘すぎるんだよなあ。まぁ、元気出せ?」


カーラ艦長は、ぽむ、と僕の肩をたたいた。

・・・どう元気だせと?


「しかし、最近プーランクもきな臭くなってきたな。新興国の帝都国が領空侵犯を繰り返している。そのうち戦争になるぞ。ビッグマザーに火の粉がかからなければいいが」


いつの間にか艦内の設備調整の総括をしているジーンさんもきている。

ジーンさんはプーランクからの亡命組だ。

昔、プーランクの軍にいたことがあるらしい。

「ビッグマザー」はプーランクからの亡命組が多い。

レントン博士はプーランク軍の兵器関連の研究をさせられていたし、モーガン博士は、軍を批判する内容の文を書き、裁判にかけられていた。レントン博士の助手とその家族も乗っている。

かくいう僕も、プーランクの医科大学に留学した後、製薬会社に移り、戦闘薬の研究をしていた。

一度でも軍の機密に触れてしまうと、勝手に辞めるのは難しくなる。

そうなると、嫌でも軍の意向に従うか、亡命するか、あるいは消されるか。


プーランクとは、みな、手を切った。

けれど、嫌な不穏な空気が「ビッグマザー」を包んでいた。

なにより、プーランクに帰化してしまった小鳥ちゃんが心配だった。


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