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7 安心な場所

薄いシーツを通して少佐の腕の感触が伝わってくる。

少佐の腕の中は、絶対的な安心感があった。

少し落ち着いて、少佐を見あげてみる。

優しい目。


アレン少佐は絶対に私を傷つけることはしない。


暗い怖い広すぎる宇宙を忘れさせてくれる。

嫌な奴等を遠ざけてくれる。


怖かった、ようやくそう思えた。


危険の最中、怖いと認識してしまえば、恐怖を恐怖として認識してしまえば、動けなくなってしまう。

だから、なるべく恐怖は恐怖と感じないようにしてきた。

危機として受け止め、分析し、できる限り回避する。


でも。

アレン少佐の腕の中にいれば怖いと思ってもいい。

ここは、安全だから。


怖かった。


思わずつぶやくと、アレン少佐はもう一度強く抱きしめてくれた。


心臓の力強い鼓動を聞くとすごく安心する。

ここに、ずっといたい。


目を閉じて少佐の胸に顔をうずめてみる。



「ミアはもう戦闘機には乗らないといっていたから、連れ帰らなかったんだ。なぜ、こんな危険なことをしている? また戦闘機に乗ると知っていれば、無理やりにでも連れて帰っていた。「ビッグマザー」の連中に戦闘機に乗せられたのか?」


少佐は少し怒った声でいった。


「少佐?」


まだ、状況がよく呑み込めない。

ここはどこで、なぜ少佐がここにいてくれるのか。


「今は少佐じゃない。役職名なんて変わる。名前でよんでくれ」

少佐は私を抱きしめたまま、いう。


「・・・アレン・シーモア。サー? ミスター?」


どう呼べばいいかわからず、困惑して少佐を見あげると、少佐は静かに私を見下ろしていた。静かで優しい眼差し。紅茶をいれてくれたときと同じ眼差し。


「アレンでいい。アレンと呼べ」


少佐は、アレンはそういって私の髪を梳くようになでる。


「アレン・・・」


私がつぶやくと、少佐、じゃなくてアレンは、小さくうなずいた。


それから、アレンは順を追って、説明してくれた。

ビッグマザーを襲った海賊DDDはプーランクの荷を奪って逃げている最中で、プーランクの精鋭部隊に追われていたこと。私はDDDの船に突っ込んだまま、戦闘機についていた緊急ボタンにより、冷凍ガスで保存され、魔の海域を漂流していたこと。DDDを追っていた精鋭部隊でアレンの親友でもあるハラウェイ達の軍に回収されたこと。私の身分はまだプーランクの「アース」所属の傭兵のままであったこと。傭兵としてハラウェイ達と協力し、DDDの荷を奪回したという取扱いになっていること。


驚くことばかりだ。

DDDが「ビッグマザー」を乗っ取ろうとしたわけがわかった。

プーランクの精鋭部隊に追われていたのだ。

私が押した赤いボタンは特攻用の爆破ボタンではなかったらしい。人体を冷凍ガスで眠らせて保護し、SOS信号を出して仲間に連絡するためのものだったのだ。私の乗っていた戦闘機はもともとプーランクの戦闘機だ。プーランク機からのSOS信号を拾って、DDDを追っていたハラウェイに拾われたのだ。


アレンは私を抱きしめたまま、いった。


たぶん、ミアはプーランクの国籍を取得できる。

俺が身元引受人になるから、一緒に暮らそう。





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