2 絶望
私の望み通り、DDDの船の動力部分と居住空間部分との間に戦闘機はめり込んだ。
DDDの動きが止まる。
が・・・。
甘かった。
DDDの動きを止められても、これでは。
DDDの船につっこんだまま、戦闘機の機体がひっかかってびくとも動かない。
DDDの船からはバラバラと小型の脱出ポッドが飛び出した。
爆発するのを恐れ、船を捨てて逃げ出したらしい。
でも、私は動けない。
DDDの船は不穏な閃光を時々みせながら、私が与えた衝撃の方向へそのまま流されている。
どんどん、「ビッグマザー」から遠ざかっている。
まずい。船が流されている。当然操縦もできない。
漂流・・・している。
宇宙が圧倒的な重苦しさで目の前に広がった。
息が浅くなる。
頭が恐怖で白く痺れる。
視界が狭く、暗くなる。
無限の宇宙。
このまま、壊れた海賊船と一緒に宇宙を彷徨うの?
絶対無理。
それぐらいならいっそのこと爆発してほしい。
このまま、宇宙で気が狂うくらいなら。
もう終わりにしてほしい。
「ミア、戦闘機から脱出して海賊船から離れろ。爆発する危険がある。必ず助ける。早く脱出しろ」
大将の声を拾った。
意味を、理解する。
「ミア、・・・・・・・・・・」
あとはノイズだらけだ。
声すら届かないこの宇宙で。
壮大な宇宙の中で。
ちっぽけな私を見つける?
ノイズだらけで声すらまともに拾えないのに?
無理にきまっている。
それくらい、私にはわかる。
それに、脱出しようにも戦闘機は海賊船にめりこんでいる。ハッチが開かない。
「ビッグマザー」がどんどん小さくなる。
手足がしびれる。
恐怖で。
もう、無理。
シン、ルーク、大将、艦長、ウー太。おとうさんおかあさん。・・・アレン少佐。
独り ということに気がついてしまった。
寂しいなんて生易しい感情じゃない。
怖い怖い怖いたすけて。
もうゆるして。
身を刻まれるような恐怖。
恐怖の先には、狂うことしか残っていない。
ふと、赤いボタンに気が付く。
何だったっけ、これ。
たぶん緊急用のボタン。
よく、チンケなドラマかなんかで、最後に主人公が押すやつ。
緊急脱出用とかのボタン。
それを押したら何分か後に緊急脱出用のボートが発射されて、本船は爆発。
でもこれは戦闘機で、脱出用ボートなんて親切なものはついてない。
戦闘機は空飛ぶ棺桶だから。
たぶん、あれだろう。
特攻用のやつ。
自爆用のボタンだ、きっと。
丸い赤いボタン。
えい。
おした。