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5 はちみつれもん
ぼおっとする。頭が痛い。
フラフラ歩いて何となく救護室をのぞく。
シンがテキパキと働いていた。
何してるかよくわかんないけど。
シンがこっちに気が付いて手をふったので、戸を開けて入る。
「シン、頭痛い」
私がいうと、シンは私の顔をじっとみて、いっぱい泣いたんだね、といった。
「頭痛いなら、お薬をあげるよ。座って」
シンはそういうと、ビンをもってきた。
ビンの中には黄金色の液体と輪切りになった蜜柑が入っていた。
「ハチミツレモンっていうんだよ。口を開けて」
シンは、はちみつれもんを、そっとすくって、一枚口に入れてくれた。
「はちみつれもん?」
「そう。ハチミツレモン。レモンはこの前ウー太がポイしたやつを失敬したんだ」
じわって、冷たくて、甘酸っぱい味が口に広がる。
「おいしい」
もう一枚はちみつれもんをくれるといいのになあ、と思ってビンを見て、シンを見あげると、シンはおかしそうな顔をした。
「気に入った?」
シンは私の目をのぞきこむと、優しく笑った。