12 お風呂の法則
オラウータンのウー太と私は2匹1組で農場の手伝いに駆り出されている。
農場の構造は驚く程レトロだ。昔の田園風景のイメージに近く、生産性が悪そうだ。が、これは巨大な実験場も兼ねているらしい。テツさんという農学博士の貴重な研究材料がぎっしり詰まっている、ということだった。私には晩御飯の材料にしかみえない。
ウー太は高い所が平気だし、手先も器用なので意外に重宝する。でも、やっぱり少々おバカなので、微妙な戦力だ。かくいう私も戦闘機以外まるで駄目なので、2匹で0.8人前、といったところか。
今日は最悪だった。ウー太が堆肥置き場にダイブしちゃったのだ。堆肥といっても、まだ生の糞に近い状態のヤツ。そこに何を思ったのかダイブしちゃったものだから、当然糞まみれになった。仕方なく家畜の洗い場でウー太を洗ってやったけど、なかなかニオイがとれない。人間用のシャワールームでゆっくり時間をかけて洗うことにした。
シャワールームやランドリー関係が集めてある部屋、通称「おふろの間」の一番広いシャワールームを陣取り、ウー太を押し込む。自分もなんだか臭いような気がしてきたので、服を脱いで一緒に入った。モコモコに泡立てて洗ってやるとウー太は喜んだ。
シャワールームのドアの鍵をかけ忘れていた私がバカだった。興奮して浮かれまくったウー太は泡モコモコのまま、外に飛び出していった。あわててバスタオルを引っ掴むと後を追う。
「ウー太待ちなさい!この、おバカ!!」
「びゃはびゃは」
「まてぃ!」
まずい。おっかけっこで、余計にウー太のテンションがあがっている。
シンがいきなり「お風呂の間」の戸をあけて、入ってきた。
「小鳥ちゃん、ウー太の健康診断やりたいんだけどお風呂終わった? ・・・って、わぁぁ小鳥ちゃん何やってるの??」
シン? 何でここに?
「だって、このバカザルがっ、逃げ出してっ!!」
ウー太は大喜びで逃げようとする。
毛ナシザルのバカザルがもう一匹。
私だ。
泡まみれで、裸でサルと取っ組み合って、何やってるんだろう。
シンの目にはバカザルが2匹にみえるだろう。
「こ、小鳥ちゃん、ウー太は僕が捕まえるから、早く服着て!」
シンが顔を赤らめながら、でもしっかり私をみていった。
「ごめん」
シンにバスタオルを投げると、シャワールームに駆け込んだ。
急に恥ずかしくなる。
シン、ガン見してなかった?
してたよね。




