9 友達?
「小鳥ちゃん、お友達だよ~」
シンの声が聞こえ、毛の塊が現れた。
オレンジ色の長めの毛。そのオレンジの毛の塊は手足が生えていて、シンにしがみついている。
その毛玉が振り返った。
「ぎゃっ」
威嚇なのか親愛の情なのか謎の音を漏らしながら毛玉がシンから手を離した。
可愛い・・・のかな。
おさるさん・・・・・・?
「オラウータンだよ。小鳥ちゃん」
オラウータンは謎の言葉で話しながら近づいてくる。
あうう。どうすればいいの?
「ぎゃっ」
オラウータンはのしり、と抱きついてきた。歯をむき出したり、しまったり忙しい。
お、重いんですけど・・・。
「びゃはびゃは」
オラウータンは笑い声ともなんとも形容のつかない音を発している。
喜んでるのかな? と、思ったのもつかの間、むぎっと髪をつかまれた。
「イタタ! ちょっと、ハゲる! 離して!!」
「ぎょぶ~」
オラウータンは私の髪をつかんだまま、手をはなしてくれない。
「っちょっと! 離しなさいってば! 痛いよ、このっおバカ!!」
「びゃはびゃは」
「きーっ! この赤毛ザルがっ!」
オラウータンの毛をつかんで引き離そうとするが、オラウータンも離さない。
「おお。白ザルと赤ザルが喧嘩か。壮観だなぁ」
いつの間にか『アンタの方が大将』が見学に来ている。
「ちょっと大将! 見てないではがしてよ、コイツ。ハゲちゃうよー!」
SOSを出しても大将は大喜びしているだけで助けてくれない。
オラウータンの反撃が止まった。
どうやら抱きつく場所が今一つ安定せずに髪を掴んでいただけらしい。
「びゃはびゃは」
オラウータンはなんだか嬉しそうだ。
う・・・ちょっとだけ可愛い?
「びゃ?」
オラウータンにつられてなんとなく笑ってしまう。
「小鳥ちゃん、やっと笑ったね」
シンに言われて、そういえば最近笑った記憶が無い事に気が付く。
「こんなに意気投合するなんて、紹介したかいがあったよ!」
シン・・・これ、意気投合っていうんですか?
オラウータンは私に抱きついたまま眠ってしまった。
「ほらね。小鳥ちゃんとオラウータンはなかよしなんだよ」
シンは満足そうにそういった。
新しいお友達の寝顔をしばらくみていた。
とっても平和。でも、重い。