4 セクサロイド
いきなり腕をまくられ、針がささった、と思ったら注射だった。
同時に口に薬をつっこまれ、ベッドが起こされた。
何事か、とみると、少女がいた。
目の覚めるような美少女。
白い髪に、グリーンの目、白磁のような肌。
セクサロイド・・・?
美少女は無言で、次々と仕事を済ませてゆく。
私はモノのように扱われ、でも手早く体温脈拍を測られ、血液検査を受け、注射をうけた。
今までセクサロイドに似ている、とからかわれてきたけれど、本物はとんでもなく綺麗だ。
私とは似ても似つかない。
美少女は無表情に私を見た。
「シンは忙しい。私があなたの面倒をみる。私はN209。あなたは」
声にも表情が無い。
「私はミア。ミア・アランフェス。」
「ミア。私の事はN209と呼べばいい。面倒なら、エヌ、と」
「エヌ?」
私は眉をしかめた。
N209では製品番号のようだ。
「名前はマスターがつけることになっている。マスターが代わるたびに、名前は初期化される。でも、私は最初につけられたこの名前が好き」
N209は淡々という。
「ミアは戦闘機乗りなのか?」
私は苦笑する。
「うん。戦闘機乗りのくせに、宇宙が怖い。もう、飛べないかもしれない」
そういうと、N209 は頷いた。
「私も同じだ。セクサロイドのくせに、セックスが怖い。私のこの恐怖が人間の感情と同じかどうかわからないけれど。大丈夫だ。ヒトはみんな怖がりだ」
N209の澄んだグリーンの瞳が光に透け、光彩の隅にロット番号が浮かんでいた。私の機械の目と少し似ている。
私がN209の頬に手を伸ばすとN209 は微かに微笑んだ。いや、微笑んだようにみえただけかもしれない。
「苦しければ、枕元のパネルの赤に触れて私を呼べ。お腹がすいたら、青。」
N209は淡々というと、部屋を出て行った。