オフサイド。
オフサイド。
それはサッカーのルールの一つであり、それさえ説明できればなんか玄人感が出せるルールでもある。
そしてこの教室に、サッカーのルールを知らない男が四人いた。
「ボールは球だ」
卓球部部長 田中大輝
「ゴールキーパー以外のポジションの名前覚えてない」
美術部部長 山城悠太
「なでしこジャパンって初見だと下ネタよな」
総合格闘技部OB 村松壮
「……」
元サッカー部部長
“レッドアウト” 佐藤明人
これは、サッカーのルールを知らない男たちがオフサイドを知るまでの物語。
キーンコーンカーンコーン
「時間だ」
鐘の音と同時に田中が口を開く。
「……ついに、か」
山城がサッカーボールをケツに敷きながらため息を吐く。
「わしらの地元チーム勝ったらしいで」
村松はどうでもよさそうにスマホを眺めている。
「……」
佐藤は、悲しげにユニフォームを眺めるだけだった。
「じゃあ、今から考えるぜ」
田中がホワイトボードに向かう。
「オフサイドとは何か……」
オフサイド。
サッカーのルールの一つ。
以上。
「まず、僕から一つ良いかな?」
山城が手を挙げた。
「なんだ?」
「この”オフサイド”……恐らく、ゴールキーパーは関係ない」
「ほう……なぜ?」
そう問われた山城は当然と言わんばかりに肩をすくめて、
「ゴールキーパーの役目は球を止めることでしょ。それ以上でもそれ以下でもない。そんな奴に何かルールが課されると思う?」
と言い放つ。
「ふっ……その通りだな。流石学年一位、IQ176なだけある」
田中が山城誉める。
「僕は当たり前のこと言っただけだけどね」
田中がホワイトボードに「ゴールキーパーじゃないかも?」と書いた。
「ほかに何か意見があるやつ……」
「わしも一つええかな?」
「村松さん……」
この教室で最も異様なオーラを放つ男。
村松壮。
この高校のOB。
「わしはこの言葉から意味を考えるのがええと思うねん。オフサイド……まず、オフ。これは簡単やな。”店内全品75%オフです~”のオフ……要するに値引きって意味や。そして、サイド……これは、”もう一度”という意味。つまりオフ再度はもう一度値引きするっちゅう……」
「待ってください村松さん!店内全品75%オフするような閉店寸前の服屋に再度なんて……」
あまりに革新的な考えに田中が狼狽する。
「まぁ落ち着け。例えの話や。わしらは閉店間際の服屋やなく、サッカーにおいての”値引き”と”もう一度”の意味を考えなあかんねん」
「……俺、一つなら分かるぜ」
その時、初めて佐藤が口を開いた。
「佐藤……喋れたんだ」
山城が驚いた声を出す。
「値引き。値引きっつーのは言い方を変えれば”まける”だ。ほら、聞くだろ?”おまけで値引きしてやる”ってセリフ。つまり、”値引き”は”負ける”って意味だ。だが、”もう一度”に関しては……」
佐藤が口ごもる。
しばらくの沈黙が流れた。
「佐藤、お前サッカー部部長だろ?何かこう……なかったのか?オフ再度した経験は……」
田中の問いに、数舜置いてから佐藤が口を開く。
「四十八」
「は?」
「四十八回。俺がオフ再度で退場した回数だ」
佐藤は監督の言葉を思い出そうとする。
しかし、佐藤の記憶に残る監督は謎の赤いカードを上にあげるだけ。
「……マジかよ」
山城が冷や汗を流す。
「四十八回やっても分からなかった。オフ再度……俺には、分からなかったんだ」
佐藤がユニフォームを握りしめる。
その拳には、悔しさとやりきれなさ。そして……
怒りが、こもっていた。
しかし、この中で誰も”もう一度”の答えを出せるものはいなかった。
「クソッ。もう時間が……」
田中が焦る。
「……スマホ」
山城がスマホを取り出そうとする。
「やめろ山城ッ!!」
それを田中が止めた。
「校則で生徒はスマホの使用が禁止だろうが!!お前……退学気かよ!!」
「……良いんだ。僕はどうせ大学行っても周りとそりが合わなくて起業する。起業に学歴はいらないから……」
「山城……」
田中の目じりに涙がたまる。
「まぁそう生き急ぐなや若者」
それを見て、村松がスマホを取り出した。
「校則代百九条。生徒は校内でのスマホを禁ずる……だっけか?」
「俺は、何者だと思う?」
「村松さん、まさか……」
「OB。俺はもう生徒じゃねぇ」
村松がスマホを開いた。
(充電は残り3%……間に合え)
も う い ち ど
(クソッ!随分前のスマホだからバッテリーの持ちが……)
さ つ 小 か ー
残り、1%
AI による概要:サッカーの最新情報ですね。2026年3月1日時点での主なサッカー関連トピックをお伝えします。
「終わっ……た……」
スマホの画面に映るのは、絶望した村松の表情。
万事休すかと思われたとき。
「待たせたな」
誰かが教室の扉を開けた。
「お前は……」
「「「「渡辺!!!」」」」
渡辺。
小学生のころサッカーの外部チームに所属してたイケメン。中学から二次元にはまりチー牛と化す。本当は難しいの方のなべ。
「オフサイドっつーのは、サッカーで、例えば攻めてるときに、攻めの人が守ってる方で1番後ろの人より後ろでパスをもらうこと」
渡辺が言い放つ。
全員、固まった。
「なんでそんなルールが……?」
佐藤が聞く。
「そしたら」
「みんなゴール前でパスもらって終わりになる」
ガシャンッ!
扉が閉まった。
「……帰るか」
田中の一言で、その場は解散となる。
「ゴール前でパス貰うの禁止、か……」
佐藤が今までのサッカー人生を思い出す。
何があろうと、一生ゴール前で待ち伏せをしていた、あの日々を。
「……確かに、つまんねぇもんな」
山城の残したサッカーボールを専用の袋に入れて、蹴る佐藤。
「ゴールキーパーやるか」
そして、佐藤は退場することがなくなった。
友達の渡邊くん(本人)にオフサイドのルール聞きました。サッカー部はいる?と聞かれましたね。




