EP 23
無限の剣製、アルクスの戦慄
正午の闘技場。
観客席には、噂を聞きつけた冒険者たちが鈴なりになっていた。
対峙するのは、アルクス最強の一角『閃光』のパーティー。
リーダーの剣士、重装の盾使い、剛力の斧使い、凄腕の弓使い、そして老練な魔術師。
隙のない、完成されたA級パーティーだ。
「悪いな、若いの。マスターの命令とはいえ、手加減はできねぇ」
リーダーの剣士が、長剣を抜き放つ。
その切っ先から放たれる殺気は、肌を刺すほどに鋭い。
ゴブリンやオークとは次元が違う。これが「人対人」の最高峰だ。
リュウは深く息を吸い込んだ。
恐怖はない。あるのは、自身の新たな力を試せる歓喜だけ。
「セーラ、強化を頼む」
「はい! 『聖なる加護よ、我が剣に宿れ(ブレス)』!」
セーラの魔法がリュウを包む。
身体が軽い。感覚が研ぎ澄まされる。
「行くぞ!」
リュウが地面を蹴ると同時に、敵の魔術師が杖を振るった。
「甘い! 『火球』!」
放たれる爆炎。直撃コース。
観客が悲鳴を上げる。
だが、リュウは止まらない。
(イメージしろ。炎を防ぐ、鉄の城壁を!)
リュウが虚空に手を伸ばした瞬間、空間が陽炎のように歪んだ。
ズドォォォォン!!
爆炎が何かに弾かれ、霧散する。
煙の中から現れたのは、リュウが持つ巨大な『塔盾』だった。
「なっ……!? 盾だと!?」
魔術師が驚愕する間に、リュウは盾を捨て、次なる武器を喚ぶ。
(次は、遠距離!)
シュパッ!
出現したのは『黒檀の長弓』。
引き絞り、放つ。
矢は正確に魔術師の杖を弾き飛ばした。
「バカな……剣士じゃなかったのか!?」
敵の弓使いが応射するが、リュウはすでに其処にはいない。
疾風のごとく肉薄し、今度は手元に『長槍』を出現させる。
「リーチが違う!」
ブンッ!
槍の石突きで弓使いを薙ぎ払い、反転して斧使いの懐へ。
長槍を消し、瞬時に『二刀流』へスイッチ。
キンキンキンッ!
斧の柄を駆け上がり、喉元へ刃を突きつける。
寸止め。斧使いが白旗を上げる。
「くそっ、何なんだテメェは!?」
リーダーの剣士が吼える。
剣、盾、弓、槍。
見るたびに武器が変わる。間合いが変わる。戦術が変わる。
対峙する側からすれば、これほど悪夢のような相手はいない。
「俺は『ウェポンズマスター』。……武器の王だ」
リュウは両手を広げた。
その背後の空間が、波紋のように無数に展開する。
ズズズズズ……。
現れたのは、剣、槍、斧、槌。
数十、いや百を超える武器の切っ先が、A級パーティーに向けられた。
「「「ひっ……!?」」」
観客席が静まり返る。
それは神話の再現。一人で軍隊に匹敵する、圧倒的な暴力の具現化。
「チェックメイトだ」
リュウが指を鳴らすと、全ての武器が切っ先を下げた。
戦意喪失。
完全なる勝利。
「……勝負あり!」
バルガスの宣言が響き渡る。
一拍置いて、闘技場が割れんばかりの歓声に包まれた。
「すげぇぇぇぇ! なんだあいつ!」
「魔法か!? いや、あれがウェポンズマスター……!」
セーラが涙ぐんで駆け寄ってくる。
リュウは浮かぶ武器たちを亜空間へ戻し、静かに息を吐いた。
「どうやら、合格みたいだな」
最強の称号『A級冒険者』。
そして伝説のジョブ『ウェポンズマスター』。
二つの翼を手に入れたリュウの名は、この日、アルクスの伝説となった。




