EP 21
戦火の跡、覚醒する武器の王
オーク討伐を終え、ミルラの村に戻った頃には、空は白み始めていた。
「おお、リュウ様、セーラ様……!」
村人たちが駆け寄ってくる。
その顔には疲労の色が濃いが、瞳には希望の光が宿っていた。
ゴブリン、そしてオークの脅威は去ったのだ。
「本当に……ありがとうございます!」
「あんたたちは、村の恩人だ!」
泥だらけの手で握手を求められ、老婆には拝まれる。
リュウは照れくさそうに頬をかいた。
「礼ならギルドに言ってくれ。俺たちは仕事をしただけだ」
そう嘯くが、胸の奥が温かい。
悪夢にうなされ、石ころ一つで怯えていた自分が、誰かの英雄になれた。
その事実は、金貨以上の報酬だった。
◇
アルクスへの帰路。
宿に戻ったリュウは、泥のようにベッドへ倒れ込んだ。
全身の筋肉が悲鳴を上げているが、心地よい疲労感だ。
「さて……精算といくか」
リュウはステータス画面を開いた。
オークリーダー討伐の経験値が入っているはずだ。
【ステータス】
名前:リュウ
レベル:10 → 11
職業:武器使い → ウェポンズマスター (NEW!)
「……は?」
リュウは我が目を疑った。
職業欄が書き換わっている。
『武器使い』から、『ウェポンズマスター』へ。
「ウェポンズマスター……? なんだこれ、上位職か?」
響きだけで強そうだ。
だが、具体的な効果が分からない。
「セーラ! ちょっと来てくれ!」
隣室に声をかけると、セーラが慌てて飛び込んできた。
「リュウ様!? 敵襲ですか!?」
「いや違う。ステータスを見たら、職業が『ウェポンズマスター』になってたんだ。これ、知ってるか?」
その名を聞いた瞬間、セーラは目を見開き、口元を押さえた。
「うぇ……ウェポンズマスターですってぇぇぇ!?」
普段の淑やかさが吹き飛ぶほどの絶叫。
「そ、それは伝説の職業ですわ! 古の英雄やお伽噺に出てくる、武器の王……! まさか実在するなんて!」
セーラは興奮気味にまくし立てた。
「ウェポンズマスターは、あらゆる武器を神域のレベルで扱えるだけでなく……固有能力として『亜空間収納』を持つと言われています!」
「あくうかん……しゅうのう?」
「はい! 自身の魔力で作った異空間に、無限に武器を収納し、いつでも自由に出し入れできる能力です!」
リュウの心臓が跳ねた。
ゲーマー用語で言うところの『インベントリ』、あるいは『アイテムボックス』。
しかも武器限定とはいえ、容量無限&出し入れ自由。
「それって……最強じゃねーか」
想像する。
何もない空間から、状況に合わせた最適な武器を瞬時に取り出す。
剣、槍、斧、弓。
重量制限も、持ち運びの手間もない。
一人で武器庫を持ち歩くようなものだ。
「試してみよう」
リュウは念じた。
すると、手元の短剣がフッと消え、脳内の「空間」に収納された感覚があった。
出し入れは思考のみで一瞬。
「すげぇ……。これなら、どんな戦況でも対応できる!」
槍も、投石器も、そして『深淵の雫』も。
全てをこの亜空間に収めれば、リュウの手は常にフリーだ。
敵の虚を突き、何もない空間から必殺の武器を召喚する。
「リュウ様……貴方は一体、どこまで強くなるのですか?」
セーラが畏敬と熱っぽい視線を向けてくる。
「さあな。でも、これだけは言える」
リュウは虚空から『疾風』を取り出し、ニヤリと笑った。
「ドラゴンの鱗だろうが何だろうが、ブチ抜く準備は整ったってことさ」
覚醒した『ウェポンズマスター』。
その力は、リュウを「一介の冒険者」から「生ける伝説」へと押し上げる翼となる。
異世界アースティアの常識を覆す、武器の王の快進撃がここから始まる。




