EP 17
四種の牙、深淵を抱く戦術
宿のベッドに深く沈み込みながら、リュウは天井を見上げていた。
革ポーチの奥底には、厳重に封印された『深淵の雫』。
その重みを感じながら、リュウは脳内で自身の戦力を再構築していた。
(今の俺には、大きく分けて四つの「牙」がある)
一つ目は、『双剣』。
愛刀『疾風』と無銘の短剣による、近接戦闘スタイル。
スキル補正により、達人級の剣技と回避能力を発揮する。
これは対人・対小型モンスターにおけるメインウェポンだ。
二つ目は、『操糸短剣』。
『疾風』に結びつけた『魔蜘蛛の糸』を利用した、中距離・トリッキー枠。
投擲からの回収、敵の拘束、あるいは立体機動。
使い手の発想次第で無限の可能性を秘めた、リュウ独自の戦闘スタイル。
三つ目は、『投石』。
投石器による、超長距離・物理打撃。
威力は高いが連射が効かない。
先制攻撃を取るための初手、あるいは硬い部位を破壊するための「大砲」としての運用が主になる。
そして四つ目。
リュウはポーチをそっと撫でた。
『毒』。
『深淵の雫』を筆頭とした、状態異常攻撃。
防御力無視の継続ダメージ、あるいは即死級の猛毒。
格上の強敵、物理無効の敵に対する、絶対的な「切り札」。
(近距離、中距離、遠距離、そして搦め手。……悪くない)
それぞれの武器が、互いの穴を埋め合っている。
状況に合わせて最適な武器を選択し、瞬時に切り替える。
それこそが、スキル『武器使い』の真骨頂であり、リュウが目指す「最強」への道筋だ。
「よし……」
リュウは体を起こし、窓の外に広がる星空を見上げた。
ゴブリンキングは倒した。
だが、この世界にはまだ、ドラゴンのような「理不尽」が跋扈している。
それらに抗うためには、綺麗な戦い方だけでは足りない。
(毒も、罠も、全て使いこなしてやる。……生き残るために)
リュウの瞳に、冷たく静かな決意の光が宿る。
四種の牙を研ぎ澄まし、深淵の毒を懐に。
準備は整った。
次はどんな依頼が、どんな強敵が待っているのか。
不安はない。あるのは、自身の戦術を試したいという、ゲーマー特有の武者震いだけだった。




