EP 15
夕映えの相談、禁忌へのアプローチ
「木漏れ日の宿」の一室。
窓から差し込む夕陽が、リュウとセーラを茜色に染めていた。
激闘の疲労は重いが、リュウの瞳は爛々と輝いている。
「セーラ、相談があるんだ」
「はい、何でしょう?」
セーラが手元の聖書を閉じ、真剣な眼差しを向ける。
「今後の戦い方についてだ。ゴブリンキングは何とか倒せた。でも、あれ以上に硬い敵、あるいは空を飛ぶ敵が出たら、今の俺の手札じゃ詰む」
リュウは腰の『疾風』と投石器を見つめた。
物理特化の限界。
それを突破するには、新しい「切り札」が必要だ。
「だから……『毒』を使いたいと思ってる」
その単語が出た瞬間、セーラの眉がわずかに動いた。
「毒、ですか……」
「ああ。相手の防御に関係なくダメージを与える手段だ。それに、麻痺毒なら拘束もできる。邪道かもしれないが、生き残るためには必要だと思う」
リュウの言葉には、迷いではなく確固たる決意があった。
セーラは少しの間沈黙し、やがて静かに口を開いた。
「……否定はしませんわ。毒も使いようによっては、多くの命を救う力になります。ですが、扱いは非常に危険です。一歩間違えば、自分自身や味方を害することになりかねません」
「分かってる。だからこそ、独学じゃなく、ちゃんと専門家に教わりたいんだ」
「それでしたら……」
セーラは顎に手を当て、少し思案してから言った。
「冒険者ギルドに相談するのが一番ですわ。ギルドには盗賊やレンジャーといった職種の方もいます。彼らなら、毒の安全な扱い方や、入手ルートを知っているはずです」
「なるほど、餅は餅屋か」
「はい。それに、遠距離攻撃についても相談してみてはいかがでしょう? リュウ様のスキルなら、弓だけでなく『魔法の杖』なども扱えるかもしれませんわ」
「魔法の杖……!」
その響きに、リュウのゲーマー魂が疼いた。
スキル『武器使い』の効果で、杖を持てば魔法使いの真似事ができるかもしれない。
状態異常を撒く魔法戦士。
そのビルドは、今のリュウにとって理想形に近い。
「ありがとう、セーラ。頭の中が整理できたよ」
リュウは立ち上がり、窓の外を見上げた。
茜色の空に、一番星が輝き始めている。
「明日はギルドに行って、情報収集だ。毒、そして新しい武器……。俺たちのパーティーを、もっと強くするために」
「はい、リュウ様。わたくしも全力でお手伝いしますわ」
セーラが隣に並び、優しく微笑む。
毒という「禁忌」に手を染めることになっても、彼女はリュウを信じ、支えてくれる。
その信頼が、何よりも心強かった。
(見てろよ。次はもっとスマートに勝ってやる)
リュウは拳を握りしめた。
知識と工夫、そして少しの狡猾さ。
それらを武器に、この過酷な異世界を攻略してやる。
新たなる成長への渇望を胸に、リュウは来るべき明日を見据えていた。




