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消えたヘーゼル

「おい起きろ!!」


俺はいきなり誰かに背中を蹴られた。


目を開けると同時に侵入者に拘束魔法をかける。


「うわ、俺に魔法をかけるとか。筆頭魔術師の名は伊達じゃないんだな」


ゆっくり起き上がって、床に転がる男を見ると、ヘーゼルの兄のエバンだった。


「お前は俺の部屋で何をしてるんだ?」


「ヘーゼルがここに連れ込まれてないか、探しにきたんだ」


「そんな事出来るわけないだろう。お前、あの唐揚げになにをかけた?毒物探知魔法で反応がなかったのに、腹痛が凄かった」


「新しく手に入れた通常の5倍の辛さの唐辛子だ。腹も痛くなる。それよりヘーゼルが家に帰っていない。ここにもいないとなるとどこに行ったんだ。早く拘束魔法を外せ、探しに行かないと」


俺はガバッと起き上がり、

「ヘーゼルが帰ってないのか!!!」


「ああ、先に帰ったイリスが慌てて戻ってきて、教えてくれたんだ。お前が部屋に連れ込んだと思ったが、あの腹痛じゃ無理だったか」


やっぱり、送って行くべきだった。


「ヘーゼルが帰ってきている事は誰も知らないはずだったが、さっきお前達と食堂で話している時にバレたのか?客は全員把握していたんだがな」


こいつ店にいた全員の素性を把握していたのか。流石にエルドラド直属の諜報部員だっただけはある。


「外には数人アストリア伯爵の手先がいたが、お前と一緒だったしバレないと思ったんだが」


「あ。。。外に出た時に、ヘーゼルの布巾が取れて、髪の毛の色が見えてしまった」


エバンはそれを聞くと、俺を目で殺しそうな顔で見つめた。


「そうか。。お前のせいなのか?」


俺は拘束魔法をちょっとだけ強めにかけた。

「はーーい、そこまで。エバンは拘束魔法が外れても、ミカエルに何もするなよ」


エルドラドも騒ぎを聞いてやってきた。


「殿下。。でもこいつは妹を危険な目に」


「ヘーゼルちゃんを探すには彼が必要だから。こいつはどうせヘーゼルちゃんに探知魔法もつけてるよ」


「なんだと!この変態ストーカー男!」


何でエルドラドはそれを知っているんだ。それより俺は絶対エバンに殺される。


「ミカエルもそれ以上、拘束魔法を重ねがけしないで解術してくれ。早く助けに行かないと」


そうだ。ヘーゼルの安全が最優先だ。


俺はエバンの拘束を解き、白い羽を出す。探知魔法を白い羽にこめると、羽はふよふよと浮かんでここから南西の方向を差した。


「屋敷の方か。。やっぱりアストリア伯爵か」とエバンが憎しげに言う。


「証拠は揃っているんだろう?一気に叩くチャンスだよ」とエルドラドがニヤッと笑う。


「転移魔法で一気に飛ぶぞ。エバン、敷地内で一目につかない、転移先に良い場所はあるか?」


「屋敷の中じゃない方が良いな。庭師の小屋にしよう。彼は俺の部下だ」


「じゃあその小屋を頭に描いてくれ、俺が魔法陣を描いている間もずっとだ、エルドラド。。お前はここにいるんだよな」


「え?やだよ。こんな面白い事見逃せるか」


「お前の護衛が泣くぞまた」


俺はエバンを見てから、魔法陣を描き始める。そして全員が魔法陣の中に入った瞬間に、魔力を込めた。


庭師の男は俺たちは突然現れても、眉ひとつ動かさなかった。


「エバン様、お早いですね。今、伝書を出したとこだったのですが」


「ああ、このストーカーのおかげですぐわかった、それでヘーゼルは何処に?」


「ストーカー?ヘーゼル様が連れてこられてからすぐに2階の奥の部屋の明かりがつきました。あの部屋は。。」


「ヘーゼルの部屋だな。今はあのトゲトゲ女が使っているんだろう」


トゲトゲ。。ハリネズミ令嬢の事か?


「あいつ、小さい時から異様にヘーゼルに敵対心を持ってたしな。今回の事は伯爵じゃなくて、あの女が勝手にやったのかもな」


「そうですね、ミランダ嬢はそちらの銀髪の男性に随分ご執心でしたから、お店の外でヘーゼル様の髪をそちらの方が触っているのを見て激昂されたんでしょうね」と庭師の男が言う。


諜報部員怖いな、全部見られてる。


「お前。。後で。。。」とエバンが呟いたのが聞こえたが、聞かなかった事にした。


「さて作戦を立てようか。俺としてはアストリア伯爵が前伯爵だけでなく、前伯爵令嬢を誘拐して危害を加えようとしたって事にしたいんだ」とエルドラドがのんびりと言う。


やはり、ヘーゼルの父親は殺されたのか。ヘーゼルが知ったら、悲しむだろうな。


「では、ここはミランダがご執心の色男に一役かってもらうか」とエバンがニターーーとこちらを見ている。


エバンだってハムスターなのに、ヘーゼルと違って全然可愛くないな。


「お前、ミランダに求婚してこい」


「え?ヤダ」脊髄反射的に言ってしまった。


「偽装に決まってるだろう。即答するな。愛想良くしろ。おい、ビル。そこらの花で花束を作ってやれ」


庭師はささっと花束を作った。すごい悪趣味な感じのが。


「俺の美意識が疑われそうな花束だな」


「偽装に美意識も何もないだろう。それとも、お前はミランダに本当に求婚したいのか?それでも良いぞ」


「違う、ヘーゼルに勘違いされたくないだけだ」と言ったが、花束を渡されて外に出された。


「とりあえず、伯爵に求婚について話があると言ってこい。それでミランダに会いたいと部屋まで行くんだ」


俺はそんな事はしたくないが、ヘーゼルを助ける為だ。


「俺も行くよ。ミカエルが求婚するとこ見たいし」と異様に嬉しそうなエルドラドが付いてくる。


玄関まで行くと、執事がエルドラドの顔を見てびっくりしながらも中に入れてくれた。応接室に案内されて、そして伯爵を呼ぶために足早に去っていった。


「お、、。お待たせしました」


「突然来たのはこちらだからな、このミカエルが明日まで待ちきれないと急かすもので」


「。。。。アストリア伯爵、私はお嬢様に求婚する為にこちらへやってきました」


むっちゃ棒読みだったが、しょうがない。


「このように緊張でちゃんと話せないようです」とエルドラドがフォローを入れる。


「確かに急な話ですが、娘もミカエル様の事を気に入っていたようですし、今呼んできましょう」


いや、部屋に行かないといけない!


「伯爵!私は待ちきれないので、お部屋の方へ行っても。勿論、令嬢の部屋に1人で行くわけにいかないので、一緒に来ていただいても宜しいでしょうか!」


「。。。はあ、構いませんが」伯爵は俺の勢いに負けて、やや引き気味だ。


エルドラドは素知らぬ顔をしてるが、やや肩が動いている。


俺達は2階の奥に部屋に行く。


部屋の中からは何か暴れる様な音が聞こえる。


「ミランダ、何をやっているんだ?今度は何が気に食わないんだ?ミカエル様がきてくれたんだぞ」と伯爵が言うと。


「え?ミカエル様!!」


ドアが少し開いて、ミランダの顔だけが出てきた。


ミランダは俺の顔を見るとニタっと笑った。俺は背筋に寒気が走った。


「まあ、花束。それは私へのプレゼントですか?」と花束に手を伸ばす。しかし、手にはひと束の髪の毛が握られていた。


それは俺の大好きなあの髪の毛だった。


「お前、ヘーゼルに何をした!!!」つい魔力が爆発して、ドアごとミランダを吹き飛ばしてしまった。


そして俺が部屋に入ると、髪の毛の一部を切られて、手足を縛られたヘーゼルが床に倒れていた。


シスコン兄vs妹が好きな人の戦いはいつも面白い。エルドラドの気持ちがわかるわ。

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