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六年制ニート、時々、世直し。〜愛犬の介護をしたいので、バカな男はまとめて沈めます〜クソガキ殲滅!  作者: ダメだ里香ちゃん


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ニート宣言

~佐藤家の紹介~


【ジョセフ】

佐藤家のアイドル。ゴールデンレトリバー。老犬。いつだって里香の味方。


【里香】

大学一年生。ジョセフに寂しい思いをさせないため、ニートになる。


【玲弥】

中学二年生。姉思いの優しい弟。自信過剰。


【パパ】

食品卸売会社勤務。娘のニート費用を稼ぐため、全身全霊でギャンブルに挑む。


【ママ】

お菓子メーカー勤務。玲弥にとことん甘い。


挿絵(By みてみん)


佐藤家のリビングには、里香の卒業を祝う出前のオードブルが所狭しと並んでいた。揚げ物の匂いと、どこか気の抜けたお祝いムード。

「姉ちゃん、卒業おめでと〜……」

二階から、寝癖のついた頭をボリボリと掻きながら弟の玲弥が降りてきた。

「ありがと。卒プレ買ってくれたん?」

「ごめん、買ってない」

かつては天使のように可愛かった玲弥も、来年は中学二年生。いつの間にか里香の身長を追い越し、声も低くなった。ふとした瞬間に漂う「男」の気配に、里香は月日の流れを感じずにはいられない。

「さっ、玲ちゃん、『いただきます』しましょ」

母の手招きで玲弥が席につく。二人が手を合わせたところで、父が遅れて居住まいを正して音頭を取った。

「里香、卒業おめでとう! 里香の門出を祝して……かんぱーい!」

「ふんほーいっ!」

母と玲弥はすでに口に料理を詰め込みながら、適当な返事で乾杯に応える。

なんてちぐはぐな家族だろう。だが、この締まりのなさが佐藤家の日常だ。

一人静かに「いただきます」をした里香だったが、その箸はどこか重い。考え事をしながらエビフライの衣を突く娘の様子を、父は見逃さなかった。

「どうした里香。箸が進んでないぞ……食欲ないのか?」

「うん……ちょっと、考え事してて」

その言葉に、母がパッと顔を輝かせた。

「あら! 里香ちゃん、もしかして恋の悩み?」

「姉ちゃん、そういうのは俺に相談するのが一番いいぜ」

「相変わらず自信過剰ね、我が弟……。でも恋の悩みじゃない」

里香は箸を置くと、椅子からずり落ちるようにして床に座り込んだ。そして、足元で寝そべっていたゴールデンレトリバーのジョセフに、後ろから覆いかぶさるように抱きついた。ジョセフは「ふんっ」と鼻を鳴らし、ちぎれんばかりに尻尾を振ってそれに応える。

「ねえ、ママ……大学の入学金って、もう払った?」

「え? 来週振り込む予定だけど……?」

里香はジョセフの毛並みに顔を埋めたまま、意を決して口を開いた。

「パパ、ママ、ごめん! せっかくここまで育ててくれたのに……っ!」

突然の謝罪に、両親は面食らって動きを止めた。

「……急に何を謝るんだ里香。里香はパパの自慢の娘だぞ」

「そうよ、ママにとっても自慢の娘よ。何があったの?」

里香は顔を上げ、二人を真っ直ぐに見据えて言い放った。

「私……私、わたしっ、ニートになりたいっ!」

リビングに、凍りついたような沈黙が流れた。

「……いや、なんでだよ。国立大受かったじゃん」

玲弥の至極真っ当なツッコミが静寂を切り裂く。

「それはそうなんだけど! でも、ジョセフはもう老犬じゃん。いつ体が悪くなって、介護が必要になるかわからない。だから、ジョセフが幸せな気持ちで天国に行くまでは、私が一日中そばにいて面倒見たいの!」

玲弥がムシャムシャと唐揚げを咀嚼する音だけが響く。母は困ったように眉を下げた。

「もう、里香ちゃんったら……。ジョセフのことはママがちゃんと面倒見るから大丈夫よ」

「いや、それではダメだ。ジョセフは里香のことが一番好きなんだ」

父が、残酷なまでに真実を突いた。

「どうするの、あなた……」

母が不安げに父を覗き込む。父は腕を組み、目を閉じて深く考え込んでいた。

数分の沈黙の後、父が目を開いた。

「……仕方がない」

(通った! 意外にも通った!)

里香の心に歓喜のファンファーレが鳴り響く。

「里香のニート志願を許そう。だが! パパは里香の将来が心配だ。ニートのままでは不幸一直線だ。だから、大学には通ってもらう」

「じゃあニートじゃねーじゃん」

玲弥のツッコミを、父は人差し指をチッチッチと振って制した。

「甘いな玲弥。……六年だ。普通は四年で卒業するところを、六年かけて卒業しなさい。 だから一年目も、単位は取れるだけ取っておくんだ。こんなこと本当は言いたくないが、大型犬の寿命は長くて十五年。あと六年は持たないだろう。……これなら里香の願いも、ジョセフの願いも、親の願いも叶えられる!」

父のメチャクチャな、しかし娘への愛に満ちた(?)提案に、母も呆れながら頷いた。

「学費はパパがギャンブルで何とかしよう。……任せろッ!」

「ありがとうパパ!」

里香は父の首にしがみつき、髭の剃り残しがジョリジョリする頬に、十年ぶりくらいのキスを贈った。佐藤家の食卓は、再びちぐはぐで、それでいて温かな熱気に包まれた。


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