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六年制ニート、時々、世直し。〜愛犬の介護をしたいので、バカな男はまとめて沈めます〜クソガキ殲滅!  作者: ダメだ里香ちゃん


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極上のリゾット

~佐藤家の紹介~


【ジョセフ】

佐藤家のアイドル。ゴールデンレトリバー。老犬。いつだって里香の味方。


【里香】

大学一年生。ジョセフに寂しい思いをさせないため、ニートになる。


【玲弥】

中学二年生。姉思いの優しい弟。自信過剰。


【パパ】

食品卸売会社勤務。娘のニート費用を稼ぐため、全身全霊でギャンブルに挑む。


【ママ】

お菓子メーカー勤務。玲弥にとことん甘い。


挿絵(By みてみん)


里香はちぎったどら焼きの餡に、茶色い粒々の入った固形薬を丁寧に詰め込んだ。

「あ~ん……」

ジョセフははむはむとそれを口の中で味わってから、ポトッと器用にお薬だけを吐き出してみせた。

「ダメだよジョセフ。お薬飲まなきゃ。また発作が起きたらどうするの?」

ジョセフは「だってそれ美味しくないんだもん……」とでも言いたげに、くぅ~んと鼻を鳴らす。

里香はもう一度、餡にお薬を詰め込んでジョセフの口に入れた。

「はむはむしないで、ゴックンするんだよ」

言われた通り、今度は二、三回噛んだだけで飲み込んでみせた。

「良くできました」

里香に頭を撫でられ、ジョセフも誇らしげだ。

「甘いもの食べた後は歯磨きだよ~……あ~ん」

人差し指に歯磨きシートを巻き付け、里香は丁寧に磨いていく。幼い頃から欠かさないこの習慣のおかげで、老犬になってもジョセフの歯はピカピカのままだ。

「姉ちゃん、行くよ」

玲弥の声に促され、里香とジョセフは立ち上がった。今日は、CT検査の日だ。

病院の駐車場。家族五人揃ってのお出掛けは楽しいはずなのに、車内は重苦しい静寂に包まれていた。拭い去れない不安を敏感に察したのか、ジョセフも生身のソファーと化した里香と玲弥の顔色を交互に伺うだけ、じっと静かにしている。

玲弥がその空気を変えようと、努めて明るい声を絞り出した。

「CT終わったら、どこ行く?」

「そうだね、せっかくだもん。みんなでどこか行こう」

ママがそれに乗る。「中央公園行くか」パパも続いた。

「フリスビーやろうよ。姉ちゃん、フリスビー持ってきた?」

里香はリュックのなかを確認しようとしてハッとした。CTのことで頭がいっぱいで、その後のことなど完全に抜け落ちていた。

「リュック、家に置いてきちゃった……」

空気が沈みそうになった瞬間、ママが鮮やかに切り返す。

「じゃあさ、この後みんなでスーパーに行って、お昼はパパにパスタ作ってもらおうよ。それから中央公園に行こう」

「ヨシ! 久しぶりにパスタ職人の腕を振るうかッ!」

里香は、みんなが自分を、そしてジョセフを勇気づけようとしてくれているのだと悟った。無理に笑顔を作り、大きな声で応えた。

「うん! 私もパパのパスタ食べたいっ!」

ママのスマホが震えた。ジョセフの順番だ。

ガス麻酔を吸引し、意識を失ったジョセフがCTスキャナーの奥へと滑り込んでいく。

――診察室の中。

医師の言葉に家族四人は言葉を失った。

「下垂体に腫瘍があります」

医師の説明によれば、脳の最下部にある下垂体は鼻の奥と非常に近い。そこにできた腫瘍が、最近の逆くしゃみ、そしててんかん発作の直接的な原因だという。良性か悪性かは摘出してみなければ分からず、現時点では経過を見守るしかないという非情な宣告。

(悪性かもしれない……癌だ)

不吉な想像が里香の思考を支配する。診察室を出る際、里香の硬直した表情を見た理久パパは、直感した。これ以上の心労を娘に背負わせてはならない。

「支払いを済ませてくるから、四人で先に戻ってなさい」

家族の背中を見送ってから、理久は受付へ向かい、静かに告げた。

「手術について相談したい。先生と話をさせてください」

診察室に戻ると、先程の医師の他に、院長が控えていた。院長がCTスキャンの画像について詳しく説明し始めた。

腫瘍は骨と癒着している。手術をするなら、骨も削らねばならない。犬の鼻腔の骨は複雑だ。削った部分に嵌め込むチタンプレートは特注になり、その作製には最低一週間の準備が必要。手術は頭蓋骨を切開する、極めて難易度の高いものになる。

「手術が成功する確率は、どれくらいですか?」

理久の問いに、院長は真っ直ぐ目を見つめ返した。

「五〇パーセントです」

犬の脳外科手術は症例が少ないため正確な統計は出ない。だが理久が「その数字は、院長が自分の腕に自信があるという意味ですか」と問うと、院長は迷いなく「そういうことです」と断言した。

手術費は入院費込みで百五十万円。

理久は「プレートを先に作製してください」と頼み、手付金の十万円を追加で支払った。

車に戻ると、ママが運転席に座っていた。

理久は先程までの院長との会話はスッカリ記憶の奥にしまい込んで、明るく切り出した。

「よぉ~~しっ! パスタじゃなくてリゾットを作ることにした! ジョセフも食べられる素材だけで作るぞっ!」

里香の顔がパッと輝く。

「やったねジョセフ! パパのリゾット食べられるよっ」

「ジョセフが消化しやすいよう、米はぐちゅぐちゅに。牛肉をバターで焼いて、数滴の醤油で香り付けだ。これはジョセフにしか分からない魔法の隠し味だぞ。トマト缶に生パセリ、マッシュルーム……たっぷりのナチュラルチーズを絡めて、チェダーも入れちゃおう。フカフカのパンも用意するぞ!」

「美味しそうっ!」

ママと里香と玲弥が声を揃えた。パパが作る極上のリゾットの味を知っているジョセフも、尻尾を千切れんばかりに振って、「ワンッ!」と期待の声を上げた。


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