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六年制ニート、時々、世直し。〜愛犬の介護をしたいので、バカな男はまとめて沈めます〜クソガキ殲滅!  作者: ダメだ里香ちゃん


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なんとかする人

~佐藤家の紹介~


【ジョセフ】

佐藤家のアイドル。ゴールデンレトリバー。老犬。いつだって里香の味方。


【里香】

大学一年生。ジョセフに寂しい思いをさせないため、ニートになる。


【玲弥】

中学二年生。姉思いの優しい弟。自信過剰。


【パパ】

食品卸売会社勤務。娘のニート費用を稼ぐため、全身全霊でギャンブルに挑む。


【ママ】

お菓子メーカー勤務。玲弥にとことん甘い。


挿絵(By みてみん)


「てんかん発作です」

医師はジョセフの病名をそう告げた。なんらかの原因で脳の神経に過度な刺激が加わり、体に震えや硬直、意識障害が現れるのだという。

前足に脳圧を下げる点滴を打たれたジョセフは、先ほどまでの瀕死の表情が嘘のようにケロッとして、いつもの穏やかで元気な顔を里香に向けた。

里香は安堵で膝から崩れ落ちそうになるのを堪え、医師に問いかける。何が原因なのか。思い当たるのは、あの「逆くしゃみ」しかない。

里香が最近始まった逆くしゃみについて必死に説明すると、医師は躊躇なく「多分、逆くしゃみは関係ないと思います」と切り返した。

しかし、里香の心には納得のいかないおりが残る。里香なりに調べた知識では、逆くしゃみはブルドッグなどの鼻の短い種や、子犬の頃に発症しやすいはずだ。なぜ、老犬であるジョセフが今になってそれを発症したのか。

「原因をはっきりさせるのであれば、CTを撮ることをお勧めします」

医師の提案に里香は頷いた。原因を知りたい。けれど、人間のCTと違って、じっとしていられない犬の検査には全身麻酔が必要だ。脳に負担がかかったばかりの今日、無理をさせるわけにはいかない。検査は後日、改めてということになった。

診察室の扉が静かに開き、パパが入ってきた。営業と嘘をついて会社を抜け出してきてくれたのだろう。パパは何も言わず、里香の手をそっと握った。里香もまた、その力強い手の温もりに応えるように握り返した。

病院を出ると、駐車場には同僚の小林の姿があった。

「里香ちゃん、大きくなったねぇ」

「小林さん、お久しぶりです。もう女子大生ですのでっ」

里香は幼い頃、小林の前でよくやっていたプリキュアの決めポーズでおどけてみせた。

小林もそれに「グハァッ……やられた~……」と当時の悪役のモノマネで即座に返す。

「ジョセフ、俺のこと覚えてるか?」

パパに抱っこされたジョセフは、くんくんと小林の匂いを嗅ぐと、「久しぶり」と言うかのように、ペロッと小林の頬を舐めた。

その光景に、三人の間に驚きと喜びの笑みがこぼれた。

小林の運転する車で家へと向かう途中、後部座席から里香が静かにお礼を伝えた。

「小林さん、パパ。来てくれてありがとう」

パパが応えるより早く、小林が間髪入れずに明るい声を出す。

「な〜に、お安い御用よっ! 俺も久しぶりに里香ちゃんとジョセフに会えて嬉しかったでぇ~」

「ありがと。またうちに遊びに来てくださいね」

「おうよっ!」

里香は隣に座るパパに向き直った。

「パパ、わがまま聞いてもらってばかりでごめん。CTの費用は、バイトして返すから」

「えっ、ジョセフCT撮んの?」

「はい。犬は保険が効かないから、十五万円もかかるんです」

「うわっ、高……」

言いかけた小林は、パパに肘で鋭く小突かれ、「……間違えた、安っ!」と慌てて言い直した。

パパは里香の目をまっすぐに見つめた。

「里香、お金の心配はするな。パパがなんとかする」

「そうだよ〜。なんで家族の医療費を里香ちゃんが出すのよ。おかしいでしょ」

小林もハンドルを握りながら同調する。

「なんのためにニートになったんだ。ジョセフのそばにいてやりなさい」

「そうそう」

申し訳なさそうに視線を落とす里香に、パパは語りかけた。

「あのな、里香。困った時に、『なんとかなる』って言葉があるだろ? あれはな、困った時になんとかしてくれる人が周りにいるから成立する言葉なんだ。その『なんとかする人』になるために、パパたちは働いてるんだよ」

里香は少し目を見開き、それから小さく笑った。

「……カッコいいね」

「里香ちゃん、気づくの遅いでぇ〜」

「すみません。十八年もかかっちゃいました」

夕暮れの街を走る車内、里香はジョセフの温もりを感じながら、改めて家族の、そして「なんとかする人」の心強さを噛み締めていた。


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