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六年制ニート、時々、世直し。〜愛犬の介護をしたいので、バカな男はまとめて沈めます〜クソガキ殲滅!  作者: ダメだ里香ちゃん


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焼き芋

~佐藤家の紹介~


【ジョセフ】

佐藤家のアイドル。ゴールデンレトリバー。老犬。いつだって里香の味方。


【里香】

大学一年生。ジョセフに寂しい思いをさせないため、ニートになる。


【玲弥】

中学二年生。姉思いの優しい弟。自信過剰。


【パパ】

食品卸売会社勤務。娘のニート費用を稼ぐため、全身全霊でギャンブルに挑む。


【ママ】

お菓子メーカー勤務。玲弥にとことん甘い。


挿絵(By みてみん)


大学の夏休みは長い。

今日もジョセフとソファーの上でダラダラと過ごしながら、里香は空になった財布と睨めっこをしていた。

(……春先に稼いだバイト代が、とうとう底を突いた。しかし、バイトをするのが死ぬほど面倒だ……)

「ジョセフ……オラに元気を分けてくれ。バイトしないといけないのに、やる気が出にゅい……」

ちらとジョセフの方を見やると、そこにはいつもの、世界一可愛い顔があった。

「ダメだよジョセフッ! そんなつぶらな瞳で見つめないでッ! ますます『このままでもいいや』って思ってしまうだろッ!」

里香は思い立ったようにガバッと上体を起こし、人差し指を天に掲げ、意を決して日払いバイトのサイトを開いた。

「う〜……う〜……おりゃっ」

適当に応募したバイト先。そこは、顔なじみの近所の魚屋だった。

――一時間後。

鉢巻をビシッと巻いた里香が、店先で気合の入った呼び込みを響かせていた。

「ラっしゃいッ! ラっしゃいッ! 安いよ安いよぉ〜! 今朝は大漁ッ! 『祭ダッ、祭ダッ、大漁ぉぉ祭ぅぅりぃぃ〜♪』ってかァア~~ッ! 奥さん、嬢ちゃん、坊っちゃん、若旦那ぁぁアッ! 見てって、見てってぇぇ〜! どれもこれも活きがいいんだッ!」

里香の咆哮は止まらない。

「『きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで……』って、あだち充もビックリ仰天ッ! 新鮮な魚が、せーゾロイッ! ピッチピチの女子大生デスッ! ちなみに私も今年の春から女子大生デスッ! 仲間デスッ! 今日は売り子も魚もみ〜んなッ、ピッチ、ピチぃぃ~~! 『魚があればなんでもできる……』魚があればッ! お刺身もッ! 焼き魚もッ! 煮魚もッ! なんでもできるッ! 行くゾッ! イチ、ニッ、サンッ、ギョーーーッ!」

歌って踊り始める。

「魚、魚、魚ぁ〜♪ 魚を食べるとぉ〜♪ 頭、頭、頭〜♪ 頭が良くなるぅ〜♪」

里香のあまりの気迫に、通りすがりの若い男性が二度見した。里香はそのチャンスを逃さない。

「お兄さんッ! イイトコに来た! ラッキーボーイだっ! こっち! ほら、こっち来て!」

里香の努力のかいあってか、魚は午前中でほぼ売り切れ状態となり、思いの外早くバイトは終わった。魚屋の主人も大喜びだ。

「いや〜里香ちゃん助かったよぉ。昨日全然売れなくてさぁ、今日売れなかったら全部破棄しようと思ってたから。売り切れて良かったぁ〜」

「あ、そーなんすね。別に鮮度良くなかったんだぁ……」

「うん。全然良くない。あんなのもう腐る寸前だよ」

「まっ、結果オーライッスね」

「また次も頼むよ! 里香ちゃん、色付けといたから」

「えっ、マジっすか? アザースッ!」

封筒の中身を指の腹で擦って確かめると、確かに、いつもより厚い。

里香はルンルン気分で自転車を漕ぎ、自宅に到着した。カゴの中には、頑張った自分とジョセフへのご褒美、ホカホカの焼き芋が入っている。

「ジョセフ〜ただいま〜! 焼き芋買ってきたどおぉぉ〜!」

おかしい。いつもならドアの音だけで飛んでくるはずのジョセフが、玄関まで迎えに来ない。

「あれ〜……おトイレ中かな?」

嫌な予感を振り払いながらリビングに足を踏み入れると、そこにはソファーに寝そべるジョセフの姿があった。しかし、体勢がおかしい。上半身を不自然に硬直させ、激しく痙攣している。

里香が慌てて駆け寄ると、ジョセフは舌をだらしなく横に垂らし、口から泡を吹き、白目を剥いていた。

里香の頭は、極限状態でフル回転を始める。

(パパとママはまだ帰ってこない。自転車にジョセフを乗せて病院に行くのは、無理ッ!)

スマホをひったくり、タクシー会社を検索した。

(一秒も無駄にできない。一番近い会社は……外に出て探しながら電話するか? ダメだ。ここにジョセフを一人置いていけるわけがない!)

「至急タクシーをお願いします。住所は……お願いします! 大至急で! 〇✕動物病院まで! お願いします! 犬が、犬が病気なんです! お願いします! お願いします!」

あとは待つしかない。電話を切ると、堰き止めていた涙が溢れてきそうになるが、奥歯を噛み締めて気を張った。

泣いている場合ではない。自分がジョセフを助けるんだ。今、ここには自分しかいないんだから!

このままジョセフは死んでしまうのか。口から漏れ出る泡を、震える手で拭う。拭っても拭っても意味がない。でも、それしか出来ることがない。

里香は、その温かい体を抱き締めた。壊さないように、けれど離さないように、強く抱き締めた。

「ジョセフ! 愛してる! ジョセフ! 愛してる! 愛してる……! 死なないで! ジョセフッ!!」


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