表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六年制ニート、時々、世直し。〜愛犬の介護をしたいので、バカな男はまとめて沈めます〜クソガキ殲滅!  作者: ダメだ里香ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/20

戦場

~佐藤家の紹介~


【ジョセフ】

佐藤家のアイドル。ゴールデンレトリバー。老犬。いつだって里香の味方。


【里香】

大学一年生。ジョセフに寂しい思いをさせないため、ニートになる。


【玲弥】

中学二年生。姉思いの優しい弟。自信過剰。


【パパ】

食品卸売会社勤務。娘のニート費用を稼ぐため、全身全霊でギャンブルに挑む。


【ママ】

お菓子メーカー勤務。玲弥にとことん甘い。


挿絵(By みてみん)


「いい、今日は俺が運転する」

佐藤理久パパは、部下の小林とともに社用車のコンパクトカーに乗り込んだ。

「部長が自ら運転してくれるってことは……」

小林がハンドルを握る理久の横顔を伺うようにして尋ねる。

「そうだ。戦場だ」

小林は部下といっても理久と同年代の、少しくたびれたおっさんだ。腹にたっぷり贅肉を蓄えた見た目は理久よりも老けて見える。外回りで社用車という密室に入れば、二人の会話は自然とタメ口に変わる。

「今日の目標金額はいくらなん?」

「百七万だ」

「端数の七ってのは何よ。中途半端だな」

「大学二年分の学費だよ」

小林が、助手席で一瞬絶句した。

「……えっ? 里香ちゃん、どうかしたん。ご病気とか……?」

「いや、大学に在籍しながら、これから二年間ニートをする」

「なんじゃそりゃ」

小林が呆れたように声を上げる。

「愛犬の最期を、家で看取るためだ」

「そんな甘え許したらあかんよ。二年留年した後の就職なんて、今の時代、相当キツイで――」

小林の口から、至極真っ当な「社会人としての正論」が漏れ出す。理久はそれを黙って聞き流し、説教がひと段落ついたところで静かに口を開いた。

「……初めてなんだよ。里香が、わがままを言ったのは」

「そーなん? だからってさぁ……」

「里香がまだ小さい頃、俺ら夫婦はいつも喧嘩ばっかりしてた。あいつも、女房も、しょっちゅう実家に逃げ帰ってな。向こうの両親がうちに乗り込んできたことも何度もあった。その度に俺が暴れてさ。『こんな奴と今すぐ離婚しろーッ!』って、カンカンだったよ」

家庭内で妻に頭が上がらない小林は、「暴れる」というパワーワードに、羨望と尊敬の入り混じった眼差しを理久に向けた。

「だから佐藤家では、わがままを言っていいのはママだけ。幼い里香がわがままを差し込めるような隙なんて、どこにもなかったんだ。……昔、日曜日にホットケーキを焼いてやっただけで、飛び上がって喜んでな。そんなことで大喜びさせてしまうくらい、俺は里香に楽しい思い出を作ってやれなかったんだよ」

小林は深く頷き、言葉を飲み込んだ。

「娘の、人生最初のわがまま……。それを聞いてやりたいってか。父親の矜恃だな」

「それにな、キスも来た。十年ぶりにだ」

「……すっ、凄えェ! うちじゃ逆立ちしても有り得ないッ!」

「……キスは……ジョセフがうちに来た時以来だな。犬が欲しいって、あいつが駄々をこねた時以来だ」

小林が即座にツッコミを入れた。

「おい。じゃあ人生初のわがままじゃねーじゃん。少なくとも二回目だろ」

「……あっ、ホントだ」

そんな、しまらない身の上話をしているうちに、社用車は目的地の駐車場へと滑り込んだ。

目の前にそびえ立つのは、鉄火場の熱気を孕んだ巨大な施設。

二人の「戦場」――競輪場に、到着した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i1078585
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ