結末はお約束の大団円編14
結婚式の前日、なんとかすべてが予定通りに運びそうで主役たちが一息ついていた夜。
ルシンダとサンドラは翌日に備えて夕食を早々に切り上げ、お茶を飲んで心を落ち着けていた。そこでルシンダが話を始めた。サンドラはもはや侍女ではないが、侍女らしい振る舞いは体に染みついている。ルシンダの話を遮らず、頷いて先を促した。
「で、わたくし驚いてしまって。ドミニク様も皇子様だったのね……」
結婚する相手に隠し事はできないと、ドミニクはルシンダに自身の出自を明かしたらしい。それを知ったルシンダの反応がこれだった。
「ねえサンドラ、ドラマチックだと思わない……!?」
「……ドラマチックではあると思いますが……」
(それでいいんかい…………!)
フェリクスの皇子という立場を嫌がっていたルシンダはどこへ行った。だからこそサンドラは色々と頑張る羽目になったというのに、フェリクスでなくドミニクなら皇子様でも何でもいいらしい。……本当に解せない。
「ドミニク様の少し鈍くていらっしゃるところも好きだわ。わたくしの想いにもなかなか気付いてくださらなくて……でも、フェリクス殿下が彼に教えてくださったのね。殿下にお礼を申し上げなくては」
「……お礼は要らないと思いますよ」
ほぼ間違いなく、フェリクスは自分の都合で教えただけだ。ルシンダとドミニクの関係を周知させるために。もしかしたら、パーティでの暴走を引き起こすために。結果的に小部屋で聖王の悪事を暴く展開にはなったが、小部屋を使わなくてもフェリクスは何とでもしてみせただろう。……サンドラを得るために。
(~~~~!)
考えると寝付けなくなりそうなのでサンドラは考えるのをやめた。
「いよいよ明日ね」
そう言うルシンダは上機嫌だ。結局、すべてルシンダの望んだ通りになった。彼女の政略結婚はなくなり、巫女姫は護衛騎士と結ばれる。これは彼女が神様に愛されているのか、それとも物語の主人公気質だからだろうか。サンドラの奮闘が全部無駄になった気がしなくもないが、頑張りは確かにサンドラの未来をも変えた。それでよしということにしておこう。
「それにしてもルシンダ様、本当に結婚式を強行して大丈夫なのですか? ここ数日は雨が降り続いていて、まだ止む気配がないのですが……」
「大丈夫よ。雨は止むの」
ルシンダは確信ありげに微笑んだ。
「誰かと結ばれたらこの能力は失われるから、これがわたくしの最後の未来視だわ。明日はきっと晴れる。そして虹がかかるの。大きい二重の虹がね」
そして翌日。
降り続いた雨はきれいに晴れて、サンドラとフェリクス、ルシンダとドミニクの二組の結婚式が行われた。
同時にフェリクスとサンドラは新たな王と女王として即位し、「最後の王国法」を廃止した。王政復古により、議会法と名前を変えていた法律体系も王国法へと戻った。「最初の王国法」が何になるかは人々の注目の的だ。
雨上がりの空の下で、人々は二組の結婚を祝福した。ロートレット侯爵とエイミー父娘の姿もあり、認めたくないが認めざるを得ないというような複雑な表情で人々の輪に加わっていた。身分至上主義の彼らは、サンドラの血筋に文句のつけようがなかったというところだろう。娘を側室に、という話もぱたりと止んでいた。
サンドラはクロフトを付き添いの父親役として――役ではなく、本当の父親と同じように思っている――、ルシンダは新たな聖王を付き添いとして、フェリクスとドミニクの待つ祭壇へと向かう。
新たな聖王はそのまま祭壇につき、二組の結婚を厳かに祝した。
外では、大きな二重の虹の下で、人々の大歓声がいつまでもこだましていた。




