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結末はお約束の大団円編12

 それからは大騒ぎだった。聖王の企みと前国王の遺児の存在が、これ以上はあり得ないほど劇的に明かされたのだ。騒ぎにならないはずがなかった。

 サンドラの出自はもちろん改めて調査されたが、その前からすでに人々の間では確定事項として扱われていた。なにせ聖王と宰相のお墨付きだ。これまでは注目されるのを避けるために、サンドラが宰相クロフトを後見人としていることはあまり公に言ってはこなかった。だが、ここにきて万人が知るところとなった。革命の熱がとっくに冷めて王政を再評価する流れが出来ていた背景もあり、サンドラはフェリクスとともに王政復古の象徴とされて持て囃された。

 聖王はもちろん失脚した。企みがすべて露見したばかりでなく、聖王の座についた過程においてもライバルを後ろ暗い方法で排除していたことが明るみに出たのだ。これは宰相クロフトの力が大きかった。彼はサンドラを助けるために聖王を失脚させるべく動いており、彼の悪事の証拠を着実に集めていたのだ。

 彼はまた辣腕を振るって、教会から資金を供出させて救護施設を増やさせた。新たな国王には前国王の轍を踏ませまいという意図が明らかだ。教会のせいであったとはいえ、貧困層への目配りが行き届かなかったことに前国王の失脚の遠因があった。

 そうしたクロフトの力添えもあり、フェリクスを王として、そしてサンドラを女王として共同統治者に戴く道筋が整っていった。サンドラの後見人としてのクロフトは、教会と上院という厄介な勢力を抑えられるほどに力を増したのだ。下院や庶民層をも味方につけ、国中に王政復古を歓迎する声が広がっていった。

 それにしても、クロフトの対応と順応が早い。彼が有能なのは知っていたが、皇子と巫女姫との結婚が秒読みだったというのにそれをフェリクスとサンドラの結婚に変え、準備をも間に合わせてみせたのは驚くべきことだ。

 結婚準備の忙しさの合間を縫って、サンドラはクロフトに尋ねた。

「閣下のお力を疑うわけではないのですが……それにしても手際が良すぎはしませんか? まるで、こうなることを予測していたかのような……」

「ある程度の予測はしておった。お前、殿下の前で涙を見せただろう?」

「!?」

 不意打ちに、サンドラの顔が一瞬で赤くなった。心当たりは一つだけだ。聖王から脅された後、フェリクスに慰められたときのことだ。

 サンドラの顔色の変化を面白がりつつ、クロフトは言った。

「お前がそれを望むなら、そして殿下が状況を覆すことができるなら、王国と帝国を結ぶ花嫁はお前の方が良いのだ。ここまでとは予想していなかったが、お前の将来の身の振り方については前々から考えていた」

「と仰るのは……?」

「親馬鹿と言ってくれて構わんが、お前は美しく賢く育った。目立たないようにしていても、王国内にいては、誰がどこからお前の秘密を嗅ぎつけないとも限らん。帝国との繋がりができるこの機会に、お前は帝国に行かせようかと考えておったのだ。皇子が信頼できる人物であれば、その伝手を辿って。だから皇子の動向には注意を払っておったし、調査もさせていた。お前が巫女姫の傍にあれば、有能さは自ずと伝わる。目をかけて掬い上げていただける。それを期待して、お前ならできると、きっと未来を切り開けると信じて、お前を巫女姫の侍女につけたのだ」

「……閣下…………!」

 まさか、サンドラのためだったとは。侍女としてルシンダをフォローすることだけが目的ではなくて、サンドラの未来を帝国に向けて開かせようとしてくれていたとは。明かされた彼の意図に、涙腺が緩みそうだ。

「だが、間に合わなかったかと一度は思ってひやひやさせられた。お前を帝国に行かせるよりも早く、聖王に秘密を握られてしまうとは。かくなる上は聖王失脚を狙うしかないと動いたのだが、私が動くまでもなかったな」

「いえ……そんな。事後処理にお手を煩わせてしまいましたが、さすがの一言でした」

 フェリクスは派手に聖王の企みを暴いたが、その後のごたごたが素早く片付いたのは間違いなくクロフトの力だ。混乱が最小限に済んだおかげで後顧の憂いもない。

「お前に黙ってお前のことを皇子殿下に教えたのは悪かったが、私なりに殿下を見定めての判断だった。そもそも皇子のことは最初から調べていたのだ。国を変える起爆剤になることを期待したし、彼の存在を利用して国の上の方を揺さぶろうとも思っていた。……許してくれるか?」

 サンドラは首を横に振った。

「許すなんて……最初から怒っていません。お調べになるのも当然です。私のことも……ありがとうございます……」

 そして、少しだけ迷ってから付け加えた。

「…………お義父様」

 クロフトは目を見開いた。その目が潤む。それを誤魔化すように――あるいはそれを言い訳にするように――彼はサンドラを抱きしめた。サンドラも逆らわず、こちらからも腕に力を込める。

 涙腺は、やっぱり保たなかった。

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