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結末はお約束の大団円編11

(…………!?)

 こんな状況だというのに、鼓動が高く跳ねた。フェリクスの青い瞳は、射貫くように、乞うように、サンドラに向けられている。

 フェリクスはサンドラの前に跪き、ひたむきに見上げた。

「サンドラ……王女アレクサンドラ。王国の正統なる後継者。僕は君が欲しい。伴侶として、そして王国の共同統治者として」

「…………!?!?!?!?」

 フェリクスの瞳の奥には、熾火のような熱がほの見えていた。心の底からのものと分かる、確かな熱が。

「僕は、君がいい。他の誰でもなく。強気でしっかりしているのに脆いところもあって、周りの人をよく見ていて、理不尽な状況に置かれても人を憎んだりしない、どうしようもなくお人好しな君のことが好きなんだ」

「~~~~!?!?!?!?」

(どういうこと!? 本気だったの!? 私の出自を知っていたの!? いつから!? どうやって!? ええええ…………!?!?)

 サンドラの心の中は大荒れだ。想う相手から想いを返してもらえたようなのだが、それは嬉しいのだが、嬉しい以外の感情が多すぎて素直に喜べない。浸っている場合でもない。なにがどうしてこうなった。

「貴様ら…………」

 サンドラの心と同様に完全に置いてきぼりにされた聖王が、怒りでふるふると身を震わせ、大音声の怒号を落とした。

「茶番は余所でやれ!!!!」

 まったくだ、とサンドラも思った。

 フェリクスはわざとらしく小首を傾げた。

「こういう誓いって聖職者の前でするものじゃないの?」

「~~~~!!!!」

 そろそろ聖王の額の血管が切れそうだ。心配になってきたが、他に心配すべきことが山ほどあったような気もする。

「サンドラ、返事をくれない?」

「何にどう返事をしろと!?」

 思わず声に出して、しかも間髪入れずに突っ込んでしまった。告白に対する返事としては絶対に間違っているが、そもそも状況からして間違っている。

「殿下、私の出自をご存知だったのですね?」

「知ってるよ。君がそこの聖王に脅されていたことも。僕を巫女姫に夢中にさせて手綱を取れるようにしろとか、僕たちを円満に結婚させろとか。そうしないと出自を世間にばらして近しい人に累を及ばせて、ご両親のお墓も暴かせるぞと」

 フェリクスは立ち上がりつつ、つらつらと説明してみせた。本当に全部知っているようだ。サンドラはもちろん彼に何も言っていないから……

「……あいつか! 宰相の奴!」

 サンドラが思い至ったことに聖王も思い至ったらしい。

(宰相閣下……どういうご判断で皇子に説明なさったのだろう……)

 分からないが、それは後で聞けばいいことだ。それよりも目前の大問題を何とかしなければならない。具体的には、噴火しそうになっている聖王への対処だ。

 しかしフェリクスは、さらに噴火を促すようなことを言う。

「こんな奴が教会のトップだなんて世も末だよね。前国王の遺児がいるなんて重大な情報を握っておきながら、公表もせず脅しに使うなんて。でも、僕が彼女と結婚して王になったら、アレックス陛下の有罪を定めた『最後の王国法』とやらを廃するよ。彼女が正統な王女であると知らしめて、配偶者たる僕の即位を成立させて、悪法を廃してアレックス王の名誉を回復する。その全てを同時に行う。完璧じゃない?」

「~~~~!!!!」

 完璧に蚊帳の外にされた聖王の噴火は秒読みだ。フェリクスは彼の堪忍袋を更につついた。

「あなたの脅迫にはもはや何の意味もないんだ。サンドラの出自を明かしたところで、僕の計画が早まるだけだから。そもそも王女が存在するなら巫女姫よりも正当性は上だしね。ほらほら、みんなの前で言ってみたらどう? あの侍女は実は前国王の遺児なんです、って?」

「くっ…………!!!!」

 聖王は拳を握り、寸でのところで耐えた。拳がわなわなと震えている。

「……そうか、それが貴様の計画か……! それなら私はそれを妨害しよう! 明かそうなどとせず闇に葬ろう! 帝国の皇子は貴様だけではないし、侍女ひとりくらいどうとでもなるな……?」

(別方向に危ない状況になった……!?)

 山の頂上からの噴火はしなかったが、山肌から溶岩が噴き出してこちらへ流れてきた。他の帝国皇子と手を結びフェリクスとサンドラを消す、そう仄めかした聖王にサンドラは身構えた。雰囲気で分かる。聖王は間違いなく、過去にその類のことに手を染めている。

 だが、緊張するサンドラとは対照的に、フェリクスはどこまでも楽しそうだった。

「もう遅いよ? ところでこの部屋、何のための部屋だと思う?」

「は!? いきなり何を――」

「やけに小さくて声の響く部屋だと思わなかった? もちろん密談用の部屋じゃないよ? その逆でね、部屋の中の音を増幅させてホールに届ける仕掛けがされているんだ。本来はアナウンスとか音楽のために使うものなんだけど――」

「――――!」

 フェリクスの丁寧な解説をみなまで聞かず、聖王は身を翻して逃げ出した。体当たりする勢いでドアを開け、外にまろび出る。とっさに追おうとしたサンドラをフェリクスが止めた。

「大丈夫。もう彼は詰んでる」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、聖王が廊下の半ばで頽れるようにして倒れた。何かがすごい勢いで飛んできて彼の足に当たったのが見えた。直後にからんと音を立てて落ちたのは、投げ矢だろうか。

「殿下、王女殿下、ご無事ですか!? すべて聞こえていましたよ!」

 投げ矢を放ったのはドミニクだったらしい。彼は聖王に走り寄ると、まだ立てないでいる聖王を手際よく捕縛した。

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