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結末はお約束の大団円編10

「――お前は自分が何をしたのか分かっているのか!」

 サンドラたちが追い付いたとき、そこはすでに修羅場だった。聖王が怒声を放ち、首をすくめて固く目を閉じるルシンダを庇う形でドミニクが割って入っていた。

 聖王の気持ちは分からなくもない。というかすごくよく分かる。その苛立ちはサンドラも共有するものだ。

 だが、そもそもは聖王の権勢欲によって進められていた話でもある。それに帝国や王国の他の者の意思も絡んでいるが、発端は聖王だ。ルシンダは悲劇のヒロインになりきっているが、それは一応事実でもあるのだ。

 クロフトも同じように思ったらしく、聖王を止めようとした。

「少し頭を冷やされるべきだ。そうやって当たってはいけない」

「あなたも私と立場を同じくしていると思ったのだが、私の勘違いだったか?」

「私は王国のために動いている」

 明言を避け、クロフトはルシンダとドミニクを庇った。聖王は射殺しそうな目で三人を睨んでいたが、クロフトを押しのけてまでルシンダたちに怒声を浴びせる気はないようだった。三人をもう一度睨み、大きく舌打ちをして、素早くサンドラに視線を寄越して踵を返した。ついてこい、という視線だ。

(嫌な予感しかしない…………)

 聖王がサンドラに何を言いたいかは分かる。皇子はまるで巫女姫に夢中になっている様子がないし、巫女姫が無事に輿入れする未来もなくなった。今の時点でとうてい「無事に」とは言えないし、輿入れが成立するかどうかも怪しい。

 間違いなく、怒りを受けることになる。正体をばらすという脅しを再度かけられるだろう。

(でも……行くしかないか。殺されることはないだろうし、ここで逃げても何も変わらないし、猊下の出方を見ないことにはどうにもならないし……)

 サンドラは体術も修めている。聖王が怪しげな術でも使ったりしない限り、怪我をすることもないだろう。怒鳴られたりしても耐えられる自信はある。両親のことを持ち出されたらどうなるか分からないが、懸念はそのくらいだ。脅しを躱したり交渉したりするためにも、立ち向かうしかない。

 巫女姫たちのことで手一杯なクロフトを後目に、サンドラは聖王の後を追った。


「――いい度胸だな」

 やはりサンドラを待ち受けていた聖王は唸るように言った。聖職者とは思えない、それどころか堅気とは思えないような声音だ。

「申し訳ございません」

 サンドラは下手に出た。頭を下げたところで失うものなどない。

「私の言ったことを覚えているか? また繰り返さねばならぬか!? そもそもお前が――」

「――そこまで」

「殿下!?」

 聖王を制止する声に、サンドラは驚いて振り返った。フェリクスはクロフトたちのところに残ったのだろうとなんとなく思っていたが、もしかして心配して来てくれたのだろうか。

 フェリクスはサンドラを庇うように立ち、近くのドアを指し示した。

「サンドラをいじめるなと言いに来たんだけど、僕に言いたいことがあるなら聞くよ? とりあえず、廊下で突っ立って言い合いをするのはやめようか。誰が通るか分からないし」

「……っ」

 聖王は舌打ちをし、苛立ちをぶつけるようにドアを開けた。確かに廊下で言い合いをするのはうまくないと認めたらしい。

 こんなところに部屋などあっただろうかとサンドラは思ったが、そういえば城は帝国の技術者によってあちこち工事中なのだった。

「殿下、どうしてここへ……」

「君を助けに来たんだよ。君は助けを求めないから、僕が勝手にね」

「えっ……!? いえ、勝手になんて、そんなこと……」

 密かに想う相手が助けに来てくれたことに、思わず動揺してしまう。

(嬉しいけど……大丈夫なの、この状況……!?)

 サンドラの出生のことをフェリクスにばらされたら、彼がどう出るか分からなさすぎる。聖王は黙っていてくれるだろうか。いや、サンドラにとって都合のいい状況にはしないに違いない。かといってフェリクスを追い返すこともできそうにない。

 部屋は小さかったが、都合のいいことに人はいなかった。フェリクスがドアを閉めるや否や、聖王はフェリクスに食って掛かった。

「殿下は一体どういうおつもりなのか!? この国の王座を欲しておられるのではないのか!? 部下の躾くらいきちんとしておいていただきたい! 婚約者を横取りされた状況を理解しておられるのか!?」

「うん、理解しているよ。教会の息のかかった婚約者が僕ではなく僕の騎士とくっつくことになったみたいだね。目論見が外れてご愁傷様?」

(殿下…………!?)

 薄く笑って、フェリクスはそんなことをのたまう。思い切り聖王を煽っている。いったいどういうつもりなのか、そしてなぜそんなに余裕なのか、サンドラには訳が分からない。

「…………っ!? この婚約は殿下の利になるものでもあったはずではないか! 王国の代表たる巫女姫と結婚なされば、王座が約束されるのだぞ!? それを擲つと仰る!?」

「いいや? 僕は欲しいものを全部手に入れるつもりだよ。王座も……そして、彼女も」

 フェリクスは真っ直ぐにサンドラを見た。

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