表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/48

結末はお約束の大団円編09

「待ってください!」

 声を張ったのは護衛騎士ドミニクだった。

「巫女姫様は悪くありません! すべて私の責任です! 私が巫女姫様をお慕いしてしまったから……!」

「ドミニク様…………!」

(????????)

 頬をいっそう赤らめて目を潤ませるルシンダの横で、サンドラの頭の中は真っ白になっていた。

(??????……………どういうこと??)

 あの鈍すぎる護衛騎士がここへきて何を言い出すのか。彼が巫女姫を心の中で慕っていたとしても驚きはしないが、そうだとしても、主君の婚約者に恋情を表明するような人だとは思ってもみなかった。

(それとも何か深い理由があったりする? 恋い慕ってみせたのはフリだとか? ……いや、なさそう……)

 サンドラが混乱し、クロフトさえ絶句する中、ドミニクはさらに続けた。

「想う方を矢面に立たせて黙っておくわけにはいきません! 男として、騎士として、そんなわけにはいきません!」

(それは正論かもしれないけども……!)

 古き良き騎士道精神は立派だが、こんなところで発揮してほしくはなかった。ドミニクの爆弾発言により、辺りのざわめきが一層大きくなった。もはや火消しは不可能な段階だ。

(帝国と王国に喧嘩を売ってどうするつもり!? 両者の顔に泥を塗って……どう収拾をつけるつもりなの!?)

 いろいろとずれている二人が妙に噛みあってしまった。それぞれに一応は筋が通っていることが厄介さを増している。ルシンダはただ思い人を慕うだけ、ドミニクは思い人を庇うだけ、それなのに……

(……二人とも、お願いだから立場と状況を考えて…………! 収拾をつける側のことも考えて…………!)

 サンドラの心の中の悲鳴は声にならない。ここへきてまさかのドミニクの大暴投だ。ルシンダ一人だけでも厄介なのに、二人が混ざって特大の危険物になってしまった。洗剤か何かだろうか。

 結婚式まで日がないというのに、ここにきて最大のピンチだ。絶体絶命だ。サンドラの立場はもとより、王国の威信をかけた帝国との縁談が。二国の面子が。……巫女姫と護衛騎士と皇子のその後が。

(おかしい……絶対におかしい! こういうのって普通、陰謀とか対抗勢力とかと戦うものじゃないの!? 何が悲しくて味方のせいでピンチにならないといけないの!? しかもピンチなのは私よりも本人たちなのに……!)

 あまりにも不本意だ。これではサンドラが何のために奮闘しているのか分からない。その奮闘も大部分は当人たちのせいだ。

 自身が側室になるという陰謀を企てる抵抗勢力であるところのエイミーは、こちらのピンチに喜ぶどころかふるふると拳を震わせている。ルシンダとドミニクの俳優ばりのやりとりの添え物になってしまっている。……どうしてこうなった。

 サンドラは助けを求めて視線をさまよわせた。フェリクスは二人をどう見ているのだろう。

 しかしサンドラが見つけたのは、かすかに笑みを浮かべて二人の様子を眺めるフェリクスだった。自分の婚約者が自分の臣下と仲を深め、面目を潰された皇子がする顔では断じてない。むしろ事態を楽しむ野次馬のそれだ。

(…………!? 殿下、楽しんでおられませんか…………!?)

 あまりにも余裕すぎる。ルシンダの想いは知っていたフェリクスだが、ドミニクの想いもこの分だと知っていたのだろう。それにしても、彼はこの状況に困っていないのだろうか。自身の結婚話が潰れかけて、王になる未来も閉ざされかけているというのに。

 どう動いていいか分からないでいるサンドラを振り向いて、ルシンダは心底申し訳なさそうに言った。

「サンドラ、ごめんなさい。やはりわたくし、自分の心に嘘はつけないわ。フェリクス様よりもドミニク様を優先して、第一に扱ってさしあげたいの……」

(ここで律儀に謝らなくていい…………!)

 何の謝罪にもなっていない謝罪を受けて、サンドラは心の中で叫んだ。そういえば以前、上辺だけでもフェリクスを第一に扱うようにと言ったが、事ここに至ってはもはやその次元の話ではない。律儀に覚えていて謝ってくれたようだが、その素直さをもっと他に生かしようはなかったのだろうか。

「――――どうやら、巫女姫殿は具合が悪いようだ」

 怒気を含んだ重々しい声に、騒いでいた人々が静まった。聖王がつかつかとこちらへ歩み寄り、ルシンダの視界からドミニクを消すように立ち塞がった。

「巫女姫殿、こちらへ」

 有無を言わさず、聖王はルシンダを連れ出そうとした。もはや遅きに失した感はあるが、これ以上の勝手は許さないということだ。ルシンダも聖王には抗いがたいのか、大人しく彼に従おうとした。

「猊下、お待ちください!」

「そなたもだ。来なさい」

 ルシンダを連れて行こうとした聖王を引き留める声はドミニクのものだ。その彼にも聖王は冷たい表情を向けた。「来なさい」はこの場合、「表に出ろ」というような意味である。

 ドミニクにそのニュアンスが伝わったかどうかはともかく、彼がルシンダだけを行かせるはずもない。ドミニクは聖王とルシンダの後を追いかけた。

 その様子を見たクロフトも、放ってはおけないと判断したのだろう。ドミニクをさらに追う形でパーティ会場を後にする。サンドラとフェリクスもそれに続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ