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結末はお約束の大団円編05

 そんな風に話しつつ痕跡を辿り、行き着いた先は……のどかな花畑だった。……なんだか既視感がある気がする。

(……ルシンダ様の脳内風景……?)

 色とりどりの花が咲き乱れて蝶が飛び回り、恋人たちが追いかけっこをしている。ルシンダとドミニクだ。

(……本当にいた……)

 色々な意味で呑気すぎないだろうか。この風景も、駆け落ちだというのに追いかけっこをしている恋人たちも。

 同じ感想をフェリクスも持ったらしい。沈黙している。

 ドミニクがこちらに気付いた。

「殿下!?」

 その声は驚いていたが、さして後ろめたそうでもない。対してルシンダの方はサンドラを認めてばつの悪そうな顔をした。

「……説明していただけますね?」

 サンドラが進み出ると、ドミニクがとっさにルシンダを庇った。

 そして、勢いよく頭を下げた。

「巫女姫様は悪くありません! 私が勝手に気を回したのです! 日々が息苦しいと訴えておられて、可哀そうで……」

「ドミニク様……!」

 ルシンダが目を潤ませた。フェリクスは溜息をついた。

「そこまで馬鹿なことをする奴だとは思っていなかったのだけど。駆け落ちなんて本当に上手く行くと思ったの? 恋は盲目ってこと?」

 フェリクスに責められ、ドミニクは瞬いた。

「駆け落ち?」

「え?」

「え?」

 二人の間に何だか間の抜けた空気が漂う。もしかして、とサンドラは確かめてみた。

「ドミニク様……こちらに何をしにいらしたのか言っていただいても……?」

「は、巫女姫様に花畑を見せてさしあげたいと思いまして。この前お話ししたところ、いたく興味を持たれたご様子で、でも許可なく城を出ることは許されないから内緒でと……」

「……。……なるほど?」

 フェリクスは瞬いた。一応は納得できるといった様子だ。

 サンドラも納得はしていた。ドミニクが二人乗りで堂々と街道を通ってきたのは、追跡されるまでに時間的猶予があるだろうからではなく、そこまで後ろめたい行為だと思っていなかったからなのだ。ちょっとした脱走と駆け落ちの間には大きすぎる落差がある。別に追手を過剰に意識する必要もなく、巫女姫の負担を減らすために通りやすい場所を選び、痕跡を消すこともせず、こうしていたのだ。

(それは分かった。分かったけれど……)

 一番分からないのが、ルシンダの思考回路だ。彼女ははっきりと書いていた。これは駆け落ちだと。

「……ルシンダ様?」

 サンドラが静かに呼びかけると、ルシンダは俯いた。

 とっさにドミニクがルシンダを自分の体で隠すようにして庇う。本当に駆け落ちをしたのではないのかと思ってしまうほどだ。フェリクスがそれを視線で諫め、サンドラはフェリクスに感謝しつつルシンダに問うた。

「ドミニク様と駆け落ちするという書き置きを残されて……どういうおつもりですか?」

 もっと言葉の選びようはあったかもしれない。だが、事ここに至ってはぼかして尋ねる必要もないだろう。フェリクスはサンドラとともに振り回された立場だし、ドミニクも知らないうちに駆け落ちさせられたことになっている。

「…………」

 ルシンダは黙ったが、サンドラは引かない。ルシンダの手がドミニクの方に伸び、戸惑いつつもドミニクは彼女の手が自身の服を掴むままにさせていた。

 それで少し落ち着いたのか、ルシンダは言った。

「だって……このまま政略結婚させられるわけにはいかなかったのだもの。そんなの……間違っているわ」

「間違っていると言われてもね……」

 サンドラの代わりのようにフェリクスが言った。

「じゃあ、誰が間違っているのかな? 僕? それともこの結婚を決めた国の指導者層? 政略結婚という仕組みを使ってきたご先祖様たちかな?」

 特定の誰かに責任を着せられるような話ではない。フェリクスの言葉は真っ当だったが、ルシンダは首を横に振った。

「そうではないの。……未来に対して、間違っているのよ」

「…………え?」

 フェリクスが珍しく、わけがわからないといった顔をする。サンドラも同感だ。ドミニクも少し眉を寄せている。

 ルシンダは少し躊躇い、言った。

「……本当は内緒にしておかなければいけないのだけど……。わたくしは……教会の巫女姫は、未来を視るの。自分で場面を選べるわけではないのだけれど……」

「ええ…………?」

 フェリクスがさらに戸惑った声を上げた。帝国人という部外者である彼は、教会のことを詳しく知る機会がなかっただろう。王国人であるサンドラさえよく知らないのだから。

 もちろんドミニクも知らない。目を瞠ってルシンダの話を聞いている。

「初耳でしょう? 教会はこのことをずっと隠しているの。巫女姫が未来を視ることと……聖王が過去を視ることを……」

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