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プロローグ

「失礼いたします」

 栗色の巻き毛をきっちりと結い上げ、丈の長い紺色のお仕着せを纏った侍女サンドラは、瀟洒な部屋の窓辺に立つ少女に向かって完璧な作法で深くお辞儀をした。

 呼び出されたのは城の一室。サンドラがこれから仕えることになる、巫女姫ルシンダの私室だ。

「顔を上げて」

 銀の鈴を振るような、清らかで可憐な声がした。

 サンドラはゆっくりと顔を上げる。窓を背にして立つルシンダは、声の通りに美しい少女だった。

 長いストロベリーブロンドの髪はふわりと頬にかかり、ミルク色の肌を引き立てている。長い睫毛に縁取られた瞳は宝石のような青で、それだけでも羨まれることは多いだろう。目鼻立ちにも瑕疵がなく、小柄な体格も相まって人形のような美少女だ。

「これからよろしくね、サンドラ」

「お任せください。ルシンダ様のお輿入れまで、誠心誠意、お仕えさせていただきます」

「ええ。頼りにしてるわ……」

 ルシンダはふわりと微笑み――切れなかった。

 白い頬が不自然に強張り、赤みがさすどころか、わずかに青ざめている。唇はかすかに震え、大きな瞳がうるんで今にも涙が零れそうだ。

 その表情は雄弁に物語っていた。

 ――輿入れなどしたくない、と。

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