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女との進展

ベイリーフ家に来てから、7年が過ぎようとしていた。

俺はただひたすら、与えられた課題をこなしていた。

ダフネの事が気になり、ときおりダフネを目で追ったが、それ以上のことは何もできなかった。


ある日、旦那様が王都に一週間の出張にでかけられた。

一言、

「留守を頼む」

とだけいい。

この期間のみ、剣を預けられた。

貴族の子弟たちも、稽古は休みとなった。


俺はもちろん、ひたすらに仕事と稽古に明け暮れた。


旦那様が出張にでかけて3日が経った夜、

屋敷は盗賊団に襲われた。

旦那様の留守を狙ってのことだった。


俺はたまたま、森にでかけており、留守だった。

屋敷の様子がおかしいことは、農具の状況をみて悟った。

いつもは整理整頓されている農具が、置きっぱなしになっており、そして誰もいなかった。


俺は剣を片手にもち、屋敷にちかづく。

外に見張りが五名いるのがわかった、

何人盗賊がいるのかわからない。

人を呼ぶにしても、屋敷のみんなが危険に巻き込まれる可能性もある。

俺はそう思い、一人づつ片付けることにした。

そして屋敷から離れたところの盗賊から、一人づつ、背後から襲い気絶させた。

一時間ほどかけ、五名の盗賊を捕縛した。


そしてその中で一番気の弱そうな男を連れ出し、盗賊団の人数とその構成といる場所を聞きだした。


あとは十名。それぞれ屋敷の中で、酒を飲んでいると言っていた。人質は中で捕縛されている事もわかった。人質だから殺しはしないだろうが、あとで奴隷商人に売るとも言っていた。


盗賊たちは固まって大広間にいるのが確認できた。

ダフネや奥様、使用人たちも、皆大広間にいるのが確認できた。

さてどうしようか。

観察していると、盗賊の一人が大広間から出た。

用をたしにいくようだ。

俺はあとをつける。

トイレに入り、用をたし終わったあとで、気絶させ、捕縛した。

男は別の部屋に閉じ込めた。


あとは九名。

俺はまた観察をはじめる。

ずいぶん酒を飲んでいるようだ。

一人、また外にでた。

あとをつける。

トイレじゃない。

外の確認をしにいくようだ。

まずい。気が付かれる。

俺は急ぎ、男に近づき、背後から殴り気絶させ、捕縛した。

その男も別の部屋に閉じ込めた。


もし先ほどの男が、外の様子の確認で出たのなら、警戒されているかもしれない。

俺は慎重に確認を続ける。

また一人男が大広間を出た。

俺はあとをつける。

今度は食堂に向かっている。

干し肉に興味を持ち、ニオイを嗅いでいる。

どうやらお腹を空かせているようだ。

俺は静かに背後から近づき、気絶させ、捕縛した。

あとは8人。


その時、女の悲鳴が聞こえた。

あれはダフネの声だ。

俺は冷静さを失い、大広間に飛び込んでいった。

「ダフネちゃん。だいじょうぶか」

と俺は叫んだ。


そこには、ダフネの顔の前にカエルをぶら下げる盗賊の姿があった。

ダフネはカエルが苦手だった。


しまった。

俺がそう思った時には、盗賊たちに囲まれてしまっていた。


「いま俺が助ける」

と俺は言った。


「ははは。笑わせやがる。お前みたいな小僧一人で手練れの盗賊団八人どうやって戦うというんだ」

と一人の盗賊が言った。


手も足もがくがく震える。

怖い。

あぁもうここで終わるのかもしれない。


「ほら。こいつ。震えてるぜ」

と別の盗賊が言った。


他の盗賊たちは大笑いをした。


「違うわ。ローリエは武者震いを起こしているのよ。彼は強いんだから」

とダフネは言った。


「そうよ。ローリエは強いわよ。主人が言ってたもの」

と奥様が言った。


「ははは。このガキが強いって、お前のところのご主人様もずいぶんヤキが回ったみていだな。こんなガキ。俺が一瞬で……」

と別の盗賊が襲ってきた。


怖い。

そう思う間もなく、その盗賊の剣は飛ばされ、茫然自失としている盗賊の姿があった。

えっ……、これは俺がやったのか?


「なめやがって」

別の盗賊が襲ってきた。


次こそやられるそう思った瞬間。

盗賊は床に倒れていた。


「なんだ、こいつ。こいつがやったのか?」

盗賊たちは、驚いている。


「ほら、みなさい。ローリエはお父様が認めた弟子よ」

とダフネは言った。


俺が弟子?


そう思った瞬間、背後に鈍い光が見えた。

(どす)

鈍い音がして、盗賊が倒れる。


えっ、これは誰がやった。

周りを見渡しても、盗賊団と俺、そして捕まった使用人と、ダフネ、奥様しかいない。

これをやっているのは、もしかして俺なのか。


「なんだこいつ。ほら人質を使え」

と盗賊団の一人が言った。


盗賊団の一人がダフネに近づく。

(どーん)

辞書を勧めてくれた使用人の男が盗賊団に体当たりをする。


盗賊団の男は、こちらによろめいてきた。

(ばし)

盗賊団の男は、俺の足元に倒れていた。


どうも、

無意識のうちに剣を使って攻撃しているようだ。


「全員でかかれ」

と残りの盗賊四人が一斉にかかってきた。

(バシ、どす、ガタ、どん)


気が付くと、四人がそこに倒れていた。


「ローリエ。あんたやるじゃない」

とダフネは喜んでいる。


俺がやったのか。

俺は実感のないまま、全員の拘束を解いた。


盗賊団は全員捕縛し、襲撃事件は幕を閉じた。


その日から、ダフネは俺にちょこちょこ、食事やお菓子を差し入れてくれるようになった。


旦那さまから感謝をされ、借りていた剣を

「お前にやる」

と言ってもらった。


あとで奥様から、

「その剣は、主人が武道会で優勝した時に、使っていた剣なのよ」

と聞かされ、

「そんな、大事なもの。受け取れません。返してきます」

と言ったら、

「そんな事を言ったら、殴られるわよ」

と笑われた。


旦那様がその剣を俺に授けてくれた真意はわからないが、

認められたみたいで、たまらなくうれしかった。


ただ、手柄だと言われても、実感はまったくわかなかった。


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