女との出会い
「ねぇねぇ。今日はマリーおばさんのところに、お使いにいけばいいのよね」
と私はお母様に尋ねた。
「そうよ。マリーおばさんのところで、はちみつを貰ってきて」
とお母様は言った。
「はちみつをどうするの?」
と私は尋ねた、
「そうね。ハニーアップルパイでも作りましょうか?」
とお母様は言った。
「わかった。行ってくる」
と私はパンをくわえて走り出した。
「そんなパンなんかくわえて走ったら、危ないわよ」
とお母様は大きな声を出した。
私の名はダフネ。この地を治めるベイリーフ家の娘で歳は8歳。
5歳の頃から、王国一番の剣の使い手であるお父様に剣を習い。
大人でも初級剣士程度であれば、苦労せずに勝てるようになった。
うちは領主といっても、大きい領地を持っている訳ではない。
お父様はこの領地を武道会で優勝し、その後も目覚ましい業績をあげたことで、王様から褒美として与えられた。一代で築き上げた、いわゆる新興貴族だ。
うちは新興貴族ゆえ、使用人も少ない。そして数か月前、使用人の一人が、去っていった。
どうも、その使用人は農家の次男だったのだけど、長男が事故で亡くなり、跡を継ぐことになったから、実家に戻ったそうだ。
だから今は人手不足。本当であれば、こんなお使いも使用人がするのだけど、うちでは娘の私もお使いをする。
新興貴族なので、信用も低く、なかなか、使用人も来てくれないそうだ。
マリーおばさんは、親戚のおばさんで、街外れの森を抜けた少しへんぴな場所で、果樹園と養蜂を行っている。
毎年この時期になると、ハチミツをくれるので、取りに行く。
1時間ほど歩き、ようやくマリーおばさんのうちについた。
マリーおばさんは、果樹園で草刈りをしていた。
「マリーおばさん」
と私は叫ぶ。ダメだ。気付いてくれない。
私は少し近づいて、
「マリーおばさん」
と私は叫ぶ。ダメだ。まだ気付いてくれない。
私はもっと近づいて
「マリーおばさん」
と私は叫ぶ。
「わっ驚いた」
とマリーおばさんは言った。
「そんな近くで大声だされたらビックリするじゃない」
とマリーおばさんは言った。
理不尽だ……、
でも、ここでなにか言うと、可愛くない。
レディたるもの、可愛さを大事にしないと。
「マリーおばさん。ごきげんよう。お母様のお使いでハチミツを頂きにまいりました」
と私は言った。
「そうだったわね。ちょっと待って、ハチミツを取りに行きましょう」
とマリーおばさんは言った。
マリーおばさんと二人で、マリーおばさんの家に入り、ハチミツを貰う。
「今お茶にするから、お茶を飲んでから帰ったら」
とマリーおばさんに言われた。
マリーおばさんは、紅茶を出してくれた。
「これアップルパイ。良かったら食べて。
このハチミツをたっぷりつけると美味しいわよ」
と言われた。
私は一口食べる。
「美味しい」
と私は言った。
「そうよかった」
とマリーおばさんは言った。
それからたわいもない話を20分ほどして、私はマリーおばさんのうちを出た。
10分ほど歩いたところで、少年がチンピラ風の男たちに絡まれているのを見つけた。
少年の顔は見たことがない。チンピラは何度か見たことのある男たちだ。
どうしようかな。一応護身用に剣は持っているし、あの程度のチンピラなら倒すこともできるけど、私はレディだしな。
チンピラも、こんなか弱そうなレディにやられたとなると、恥ずかしいだろうし、あの男の子も、レディに助けられたとなると、プライドが傷つくだろうから。
ちょっとやめておこう。
そう思い、こそっとその場を見る事にする。
あれ。少年はナイフをもってる。
あっこれヤバイやつだな。
さすがに身を守るためとはいえ、この場でナイフを取り出したら、状況はまずいかも。
チンピラとかは、とにかくメンツを大事にするから、少年相手に逃げ出したとは言えない。
どうしよう。
仕方がない。
これだ。
(ぴーーーーー。ぴーーーーー。ぴーーーーー)
と私は盗賊除けの笛を吹いた。
これはこの地域で、盗賊やクマに襲われた時に吹く笛だ。笛が吹かれると、近くの自警団や猟師や腕に覚えのあるものが駆けつけるという約束になっている。
案の定、チンピラたちは焦りだし、走って逃げて行った。
少年はその姿に驚いた顔をしている。
私は、出て行って説明することにする。
「だいじょうぶ」
と私は尋ねた。
「ありがとう。さっきの笛は君が?」
と少年は言った。
「そうよ。あなたがナイフに手をかけたから。みていられなくなって」
と私は言った。
「戦っても一人くらいなら倒せたかもしれない」
と少年は言った。その目はとても悔しそうだった。
「命を大事にしない奴は強くはなれない。お父様がそう言った」
と私は言った。
「そいつは強いのか?」
と少年は言った。
「強いわ。王国で一番の剣士だと言われている」
と私は言った。
「そうか。じゃあ。命を大事にするよ。強くなりたいし」
と少年は下を向いた。
「あなた。こんなところで何をしているの?」
と私は尋ねた。
「強くなりたくて里を出た。住み込みで働けるところを見つけて、強い人の元で修行したいと思っている」
と少年は言った。
「ご両親は許可されたの?」
と私は尋ねた。
「両親は亡くなった。今は天涯孤独な身だ」
と少年は言った、
「そう。今ちょうどうちで使用人を探していたところなの。お父様とお母様がどういうかは知らないけど、聞いてあげようか」
と私は尋ねた。
「ありがとう。俺はローレル」
とローレルは言った。
「私はダフネよ」
と私は言った。
どうなるかはわからないけど、使用人も必要なことだし。聞いてみてあげるだけでもいいでしょう。
そう私は思ったのだ。




