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武道会での勝利

俺の試合の後に、準決勝戦が始まった。

この戦いの勝者が、俺と戦うことになる。

アインとスワロー家の長男コジとの勝負だった。

スワロー家も新興貴族で、ベイリーフ家のライバルだった。

スワロー家とベイリーフは犬猿の仲と言われており、

アインはこの勝負だけは負けられないと意気込んでいた。


準決勝が始まった。

審判の声がする。

「はじめ」


(しゅーん)

気が付くと、アインが目から血を流し、倒れていた。


「試合終了。勝者コジ」

審判は言った。


救護班が駆けつける。

アインは病院に搬送された。


決勝戦は1週間後と決まった。


その夜、旦那様が俺の元を訪れた。

「今日から決勝戦まで稽古をつけてやる」


「俺は平民だからダメだったのでは?」

と俺は尋ねた。


「アインとアインの両親からの依頼だ。仇をうってくれと」

そう旦那様は言った。


俺は複雑な心境だった。自分の仇もまだうっていないのに他人の復讐に加担するのか……。


「ただ。それは俺がアイン側から受けた依頼だ。お前はお前のためにやれ。俺はローリエお前を強くする」

そう旦那様は言った。


それから一週間みっちりと修行を受けた。

厳しい修行だったが、父親に修行を受けているような気がして、とてもうれしかった。


一週間が経ち、とうとう決勝戦の日になった。


試合前、控室にアインがやってきた。

「スワローの奴を倒したら、お前を認めてやる」

と言った。


目はどうやらギリギリのところで失明はまぬがれたようだった。


試合前、旦那様が言った。

「お前は強い。お前は俺の弟子だ」


俺は目がうるうるして、旦那様の顔を見る事ができなかった。


決勝戦が始まる。

スワローの長男の圧がすごかった。

気を抜くと、圧だけでどうにかなってしまうかと思った。


「はじめ」

審判の声がする。

上段からの攻撃。

と思ったら、軌道が変わった。

横だ。

俺はとっさに、さやで受け止める。


俺は後ろに飛び、間合いをあける。

上段からの攻撃。

速い。

俺は剣で受け止める。


「まぁ。なかなか使用人にしては、筋が良さそうだ」

とスワローの長男は言った。


「それはご丁寧にありがとうございます。スワロー様もずいぶんお強いようで」

と俺は返した。


「そりゃそうさ。僕は英才教育を受けているからねぇ。君みたいな平民とは違うのだよ」

とスワローの長男は言った。


「じゃあ。万が一にもこんな俺のような平民に負ける事はないということですよね」

と俺は返した。


「もちろんさ。負ける事なんてありえないよ」

とスワローの長男は言った。


「じゃあ。そんな事はないでしょうが、もし俺が勝ったとしたら、なにかご褒美でも頂けますか?もちろん世界最強であるスワローの長男に勝てるような事はないとは思いますが……」

と俺は言った。


「そうだね。そんな事がもしあったら、そうだね。僕の持っているワイナリーをあげよう。ここは良いよ。とても上質のワインが作れる」

とスワローの長男は言った。


「それはありがとうございます。では……」

と俺はそういい、体を沈みこませる。

そして短剣の柄をスワローの長男の腹にあてた。


(ぐふ)

スワローの長男はその場に倒れ込んだ。


「ヒット。勝者ローレル」

と審判の声が闘技場に響く。


(わー)

歓声が会場に溢れた。


一瞬だった。一瞬で状況が一変した。


俺は武道会で優勝した。

ただまったく実感はわかなかった。


旦那様からは一言

「よくやった」

と言われた。


武道会の優勝の祝賀会や、表彰式などで慌ただしかった。

スワロー家の長男は、優勝の翌日、執事をよこした。

ワイナリーの贈与の処理についての事だった。

俺はよくわからなかったので、旦那様に相談して、処理を行った。

ワイナリーの規模はかなり大きいものらしく。

一瞬にして、中堅の商会規模の資産を持つこととなった。


奥様はこう言った。

「ダフネと結婚するなら、資産的には問題なくなったし、地位も武道会優勝者となると大丈夫。あとは勉強か……」


俺は言った。

「あの。俺はダフネちゃんの事をお慕いしているので、問題はないですが、ダフネちゃんは大丈夫なのですか?俺のような男で」


すると奥様は

「ダフネはずっとあなたの事が好きなのよ。ナイフの時だって、学校に行くから、あなたと離れる時間が増えるし、だからあなたを感じさせるようなものが欲しかったのよ」

と言った。


俺はうれしかった。もし許されるなら、ダフネと一緒になりたい。そう思った。

それから、奥様と旦那様とダフネと話し合い、1年間で集中的に勉強をすることにした。


目標は4年間で覚える事を1年に圧縮して覚えること。

そして1年後。編入試験を受けて、ダフネと同じ学校に入るレベルを目標とした。


やり方は、ダフネも通う学校の過去のテスト問題を手に入れて、そのテスト問題を教科書や辞書を読みながら自ら解いていくというやり方だった。


これを毎日10時間。

90分ごとに10~15分の休憩を入れることにした。

そして毎日1時間は門弟達との模擬戦。

門弟達も、その親の貴族達も、スワロー家を倒したという事で、弟子として扱う事を歓迎してくれた。

それ以外の修行はなし。

休憩時間は極力ダフネと一緒にいた。


ワイナリーはスワロー家の使用人を一人派遣して管理することにした。


読み書きは習っていたので、本は読めたし、国語辞典も読み込んでいたので、言葉はすんなり入ってきた。


そして過去のテスト問題を学ぶことで、その教科で強化すべきところが、ハッキリと見えた。

教科書を読みこむほうが、理解度は深まるが、重要な点を掴むというのでは、ゴールであるテスト問題から始めるのは、いい考えだと思った。


ダフネと結婚するとなって、ますます距離が近づいた。

以前にもまして、いろいろ差し入れてくれるようになった。

どうやら、差し入れはダフネの愛情表現らしいと、この時ようやく気が付いた。

俺はダフネのことがどうやら、そうとう好きなんだと気が付き始めた。


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