似顔絵
報告書を書くため、泉たち一番大隊は駐屯地へ戻った。その際、泉は榎本中隊長にとある似顔絵を描いてもらった。
「こんなのか?」
出来上がった似顔絵は、泉が見たあの黒い鬼にそっくりだった。
「そう!こんなのだよ、こんなの!」
泉はあまりの完成度に感嘆の声を漏らす。するとその声を聞きつけた大路中隊長と宇野中隊長が絵をのぞき込んだ。
「なんだいこれ?鬼?」
大路中隊長は首を傾げる。
「そうなんだ。どうやら副隊長はこいつを追いかけて飛び出したみたいでな」
「なんで?」
「さあ?」
宇野中隊長の質問に泉は答えられない。お互い四人で首を傾けた。
「まあ考えてもわかんないし、一応この絵は上に提出するとして、いったん仕事に戻ろーう!」
「おおー!」
元気に返事をした大路中隊長とは裏腹に、宇野、榎本中隊長はげっそりしている。二人とも、大層机での仕事が嫌いらしい。宇野中隊長は体力を消耗してもう立ったまま寝そうな勢いだった。
しかし他の隊員たちを見ていた副隊長に睨まれ、二人はそそくさと自分の席へと着いていった。
「あなたたちねぇ、名前書くだけなんだからちゃんとやってください」
滲は目を通した書類に大量にまるを描き、ぼやいている。
完全にいつもの滲だ。
泉は大路中隊長が席に戻ったことをきっかけに、自身も席に座り直す。
そして滲に置かれた大量の書類に名と判を押すのだった。




