これが一番大隊
ご注意!
この話は本編とは関係…あったりなかったりする気ままなお話です。
読まずとも本編に支障はありません。息抜き程度にご覧ください。
ある昼下がりの駐屯地。
書類に判子を押しまくっていた宇野はふと右隣に座っていた大路に勢いよく肩を叩かれた。
「ん?何?」
宇野が顔を上げると大路はとある一点を指さし絶句している。
その指の先を視線で辿ると、宇野もぎょっとして絶句する。そして左隣にいた榎本の肩を
勢いよく叩いた。
「痛ッ!?なんだよ!」
洒落にならないほど力の強い宇野は肩を叩いただけでも一撃が重い。書類に落書き中だった榎本は苦情を言おうと宇野に向き直る。しかし、同じ方向を向いて絶句している二人に言葉を止めた。
「んだよ?何がある…って…」
榎本は二人の視線の先を見て絶句する。
三人の視線の先には書類の束を片付け終え、本を読んでいる井上副隊長がいた。
しかしその表紙に書かれた題名に三人は言葉を失った。
『赤子の上手な育て方』
本の内容を脳裏に焼き付けるようと注視して読む副隊長の姿に三人は驚愕する。そして勇気ある大路は滲に話しかけた。
「や、やあ副隊長、おめでとう!」
「は?何がです?」
あの大路でさえ声が裏返っている事態に、滲は訳が分からないというのと、邪魔しないでという表情を同時に出す。
「何がってお前、いつの間に…」
「な、何かあったら手伝うよ?」
滲を凝視する榎本とは対照的に、大家族長男の宇野は視線を逸らして助力を申し立てる。
妙によそよそしい三人に滲はいぶかしげな目を向けると、ふと視線を落とした。
「ああ、これですか?」
滲は自分の手の中の本を見つめる。そしてその本を机に置き、スッと立ち上がった。
悠然とした足取りで一番奥で書類に顔をうずめ、今にも眠りこけそうな泉の前に立つと、そのままにっこりと笑った。
「おや大隊長、今日はとても上手にできてるじゃないですか」
「え?そうか?」
わずかに出来上がった書類を見つめる滲に泉ははっと顔を上げる。
「はい!このあたりとか今日ははみ出ずに書けているじゃありませんか!」
「え?ふへへ、そうかな~?」
照れたようにはにかむ泉に滲は畳みかける。
「このまま寝てしまうなんてもったいないです。今、すぐ、続けましょう!」
「ふっふーん!わかった!」
得意げになった泉は眠気も忘れて嬉しそうに判子と名前を書く作業に戻る。
この上なく単純な泉に、滲はしたり顔で微笑んだ。
その三人の中隊長たちの前に置かれた本には、『子どもは褒めて伸ばせ』と書いてあった。
宇野たちは大隊長の扱われ方を見て、秘かに唖然とするのだった。




