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薄明の空を君と見ながら。  作者: 佐野いさ
三章、三番大隊編
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月穂劇場

 香山たちが出動したそんな時、佐々木は村人たちと岩の状態を見上げていた。


「こりゃ無理じゃな。すっぽりはまっておるわ」

「だよな。やっぱ無理か」


 村のじいさんの言葉に佐々木も同意する。


 山に囲まれた盆地。さらにその山々はかなり高く険しい。その唯一の通路である岩に塞がれた一本道は、人工的に切り開かれたものであり、細く狭い。

 そこに比較的長身の佐々木の優に二倍はある岩を、村人たちはどうすることもできなかった。


「結局助けが来るのを待つしかないか。幸いにも今日は俺も花奈も仕事だったし有明もいる。気づかれないということはないだろう。問題はこっちの蓄えだな。おーい、各自家の蓄えを調べろ。足りない家があったら分け与える」


 並外れた統率力を持つ佐々木は、地縁のある村人たちをも一つの組織としてまとめ上げる。


「俺は家にいるから、わかったら報告しろ。以上だ」


 指示を終え佐々木は皆に背を向ける。

 しかしその思考には背後の岩のことがよぎっていた。


 昨晩花奈が佐々木を呼び起こしたとき、花奈は何かを懸念していた。

 それは岩を見た佐々木も同じである。


 あの大岩、風で飛ぶとは思えない。転がって来たとしても、その轍にあるはずの倒れされた木々が異様に少ない。

 つまり何者かが故意に、岩で通路を塞いだことになる。


 だが、それを佐々木は村人の前では口にしない。

 下手に混乱を招けばいざという時の対応が遅れる。


「はあ…」


 難儀だなと感じながら佐々木はため息を吐く。

 そして芳しくない様子で戸を開き、家の中へと入った。


 そこでは。


「と!このように父は火の魔族を退け母に求婚を…!」

「おい何してんだ昨日言うなって言ったよな?」

「今日です」

「わかってんならやめろよ!」


 帰って来た佐々木は月穂の寸劇を止めるべく襖を開く。

 そこでは雪希を母に見立てたのか、月穂が臨場感たっぷりに姉を抱きしめていた。


「そして父はこう言ったのです。『お前は』」

「もうやめろホントにやめろ謝るから」


 告白の言葉まで言いそうになった月穂を佐々木は雪希から引きはがす。


「ああ!ここからがいいとこだったのに!」

「はい終わり!お前も残念がってんじゃねえ!」


 苦笑いを浮かべている花奈と晶子に挟まれていた泉は、月穂劇場に輝かせていた目をしょんぼりと落とす。


「いいとこだったのに…」

「おい旦那なんで止めなかった!?」

「いやあ、私も勉強になりましたよ。まさかお二人にあんな馴れ初めがあったなんて」

「お前もいじって来てんじゃねえよ」


 膨れる泉の隣で滲は気を許したのか月穂に便乗する。


 佐々木は娘及び有明夫婦に弄ばれ、頭を抱えるのであった。

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