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道しるべ
その日の午後。
一番大隊は急遽入った魔族討伐を終え、日没も近いので、今日は現地解散となった。
「皆ばいば~い!また明日~!」
泉も隊員たちににっこり手を振り家に帰ろうとする。
しかし。
「?」
一緒に帰ろうとした滲が突然空を見上げて足を止めた。
「近いか?」
目を細めそうつぶやくと、滲は無我夢中に木の枝で地面の砂に大量の計算式を書き始める。
「え?お?なんだ?それ?」
ちらほらと星の見え始めた橙色の空の下、もう背を向けて遠くなっている隊員たちは気づかないが、滲の隣にいる泉はその理解できない数式に首を傾げていた。
やがて計算が終わったのか滲ははたと木の枝を置いた。
「ついてきていただけますか?泉さん」
その様子は酷く憔悴したように、そして渇望するように滲の目は危うげに輝いていた。
「う、うん。いいぞ?」
よくわからなかったが、行きたい場所があるのならと泉は納得する。
そして滲に腕を引かれながら山間の奥地へと踏み込んだ。




